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DVD『ニュー・シネマ・パラダイス』
監督:ジュゼッペ・トルナトーレやり残して得るもの、やり遂げて失うもの

渡邉 孝信
理工学術院准教授
2008年4月
担当科目:電子デバイス、計算科学

 定番中の定番になってしまうが、1つ挙げるとすれば、やはりこの映画。シチリア島の小さな村の映画技師アルフレードと、映画に魅了され映画館に出入りする少年トトの間に芽生えた友情の物語だ。青年になり、ローマへ旅立つトトにアルフレードがかける別れの言葉は、片田舎から単身上京したかつての私も味わった、不安と決意が交錯する特別な感情を呼び起こす。

 「帰ってくるな。私たちを忘れろ。手紙も書くな。郷愁に惑わされるな。すべてを忘れろ」

 「自分のすることを愛せ。子供の時、映写室を愛したように」

 そんなノスタルジックな魅力もさることながら、この作品にまつわる重要なエピソードもここでは紹介しておきたい。この映画には、味わいが全く異なる2つのバージョンがある。3時間もある完全オリジナル版と、2時間に短縮された劇場公開版だ。イタリアで最初に公開されたオリジナル版は興行成績が振るわず、一週間で上映中止に。トルナトーレ監督は思い切って、極めて重要な結末のパートを切り落とす決断をする。この短縮版が映画祭で大好評を博して世に広まり、数々の賞を総なめにした。

 このエピソードを暗示するような挿話が、奇しくも作品の中に出てくる。アルフレードがトトに話した、王女に恋した兵士のおとぎ話だ。兵士はある日、想いを王女に告白する。王女は彼の深い想いに驚き、「100日間、昼も夜も私のバルコニーの下で待っていてくれたら、あなたのものになります」と答える。兵士はすぐにバルコニーの下に飛んで行き、それから雨の日も風の日も、ひたすら動かず待ち続ける。しかし99日目の夜、兵士は静かに立ち去る。兵士は、100日目の結末を見ない選択をしたのだ。

 99日でやめることで何かが残り、100日を全うすると何かが失われる。人生には、そんなことが、わりとあるように思う。完全オリジナル版と劇場公開版、できれば両方鑑賞していただきたい。

「ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版
「ニュー・シネマ・パラダイス 
完全オリジナル版 SPECIAL EDITION」
(C)1989 CristaldiFilm
発売元:アスミック
販売元:角川エンタテインメント
2,500円(税込)発売中


※各キャンンパス生協に
「ウィークリー薦 コーナーが設置さています」
   
1165号 2008年9月25日掲載