とっておきの話 
地域振興には、デザイン頭が必要

国際情報通信研究科教授 長 幾朗

 私は、大学では美術史やデザインなどを学びましたが、30代半ばにそれまでの勤めを辞めて再び大学に戻りました。将来についても迷っていたそのころに米国政府機関からアーティストレジデンスの招待を受けました。短期でしたが、米国各地の大学や研究機関訪問や講演、そして展覧会開催などと過ごして、少し光も見えたように思われました。

 私は、大学では美術史やデザインなどを学びましたが、30代半ばにそれまでの勤めを辞めて再び大学に戻りました。将来についても迷っていたそのころに米国政府機関からアーティストレジデンスの招待を受けました。短期でしたが、米国各地の大学や研究機関訪問や講演、そして展覧会開催などと過ごして、少し光も見えたように思われました。当時の米国の寛大さにも感服しましたが、人々が日本やアジアの歴史や文化にも敬服の念や関心を抱いていることも知りました。昨今の米国は、少しその寛容さを失いつつあるようにも思われて残念です。一方、私自身が日本やアジアの歴史や文化について、いかに関心が薄かったかも思い知らされました。近年、台湾や韓国、そして中国などの学会や講演に赴き、これらの国の歴史や文化の深さを知ると共に、日本の文化もますます貴重なものと思われるようになりました。

 ここ数年は、研究室での課題研究の傍ら、東京都区内の文化振興プロジェクトを企画し、学生と共に取材・調査し、その地域に根差した歴史や文化の成り立ちをウェブページでも公開しています。昭和期半ばまでの井戸端での主婦の立ち話、道歩くもの売りの声、路地で遊ぶ子供たちの嬌声、このような懐かしい風景が急速に消え去り、地方では商店街はシャッター街と化しています。戦後の混乱から経済復興までの昭和期において、私たちは多くの旧き良き文化を旧弊なものとして敢えて忘れてきたようです。昨今、これらの活性化や顕在化が謳われる一方、地域にはインターネットを初めとした今日のメディアを応用するような潜在力も備わっていません。このような課題に大学や自治体は積極的に取り組むべきなのですが、それだけでは不足です。地域の老人力も必要ですが、いわゆるデザイン力やデザイン頭が必要なのかもしれません。「デザイン頭」に関心がある方は、研究室をお訪ね下さい。

台東区文化ガイドブック・文化探訪 
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▲来日時の米国のコンピュータグラフィックスのパイオニアのC.スーリ夫妻と上野で、30代後半ごろ
 
1161号 2008年6月26日号掲載