とっておきの話 音響の研究をしにスウェーデンに・・・

理工学術院准教授 及川 靖広

2001年9月から1年間、スウェーデン王立工科大学に客員研究員として留学していた。スウェーデンという国は、豊かな福祉国家、SAAB、VOLVO、ERICSSON、IKEAなどの企業、ノーベル賞の提案者ノーベル氏の母国およびノーベル賞選考などで知られている北欧の一国である。

 夏は非常に日が長く、冬は非常に日が短い。スウェーデン人は余暇を非常に楽しむ人たちである。夏休みはたいていの人は1カ月以上とり、学校は閑散とする。実際、私を受け入れてくれた教授は自宅を直す(日本のように業者に頼むのではなく、自分で直すのである。)といって1カ月以上学校に来なかった。冬は冬でクリスマス休暇を取る。そういう人たちが周りにいると、スウェーデン人ではないがこちらもやはり遊びたくなる。「ニルスの不思議な旅」という本はご存知であろうか? ニルスがガチョウに乗り、がんの群れと一緒にスウェーデン中を旅する話である。ニルスのように空の上からではないが、北はキルナまで、南は隣国のコペンハーゲンまで車で出かけて旅を楽しんだ。

 留学していた間に、野依良治氏がノーベル賞を受賞した。前年は、白川英樹氏が受賞し、翌年は小柴昌俊氏、田中耕一氏が受賞することとなる。2001年はノーベル賞100周年の年でもあり、偶然ストックホルムで客員研究員をしていた筆者は受賞祝賀会に呼ばれるという珍しい経験もさせていただいた。受賞者による記念講演会を聴きに行ったときの話。受賞者は皆話し好きで、持ち時間で終わる人はほとんどいない。こういった場合、日本であれば「時間が過ぎてますよ」とさりげなくメモを渡し、知らせる姿を多く目にするが、その講演会では司会の女性が横からマイクで割り込んできて、「もう時間が過ぎてます」と言うのである。ノーベル賞受賞者とあれども特別扱いしないのか?

 スウェーデンでは、地下鉄などの階段には必ずスロープがあり、エスカレーター、エレベーターも完備されている。ベビーカーを押す人は無料でバスに乗れたりもする。福祉国家というだけあり、バリアフリー、ユニバーサルデザインが進んでいる印象を受ける。現在、日本音響学会にて音バリアフリー研究調査委員会に加わり、活動している。日本のバリアフリー、ユニバーサルデザインはまだまだやることがたくさんある。本学においても然りである。


キルナで見たオーロラ
▲キルナで見たオーロラ

 
1159号 2008年6月12日号掲載