私のイッピン 早稲田大学剣道同好会のヒジカタの巻

今回登場してくださるのは人間科学部3年の小泉圭介さん。「ぼろぼろで恥ずかしいんですが…」ポーターバッグから取り出されたイッピンは文庫本。小学校から続けている剣道にもつながるというこのイッピンについて話してもらった。

 「本はあんまり読まない方なんですけど、タイトルにひかれて思わず手にとりました」と小泉さん。「たまたま父の本棚の前を通ったら」この『燃えよ、剣』の文字が目に飛び込んできた。「時代小説って現実味がなかったり、妙に説明っぽいところがあるからなぁ」とあまり期待せずに「剣」という言葉を頼りに読み始めた。ところがつまらないどころか「すごくおもしろい。スピード感があって、剣道をやっているからこそ、実感できるシーンがいくつも出てきました」一気に読破。あまりのおもしろさに友達にも薦めては貸し出し、ぼろぼろの文庫本はさらにぼろぼろになっていった。

  「剣道は一点に向かって集中するときと、集中した力を瞬時に解放するときがあるんです。その緩急の差が文章の中にも生かされているのが、たまらなくおもしろかった」。小泉さんは現在、早稲田大学の剣道同好会にも所属している。185cmの長身から面打ちを繰り出されたら、相手はひとたまりもないだろう。「剣道の試合はチームで戦法を考えていくのがおもしろい。一丸となっていく感じが好きなのかも」

  『燃えよ、剣』の主人公は新撰組、鬼の副長土方歳三。幕末、激動の時代を一気に駆け抜けた剣士にあこがれるところはある?「今ちょうど『龍馬が行く』を読んでいるんですが、龍馬と土方歳三って同時代に生きているのに視点の向かう先が全く違うんですよね。龍馬は世界のあり方、土方は自分自身の在り方。男としてどっちの生き方も在りだと思いますが…」しばし考えこんで、こう結論を出した。「僕自身、目の前にあることをじっくり見ながら飄々と生きていきたいですね」
  たまたま父の本棚から手にとった『燃えよ、剣』。何度でも読み返したい、そして一生手もとに置いておきたい本にめぐりあった。日焼けした表紙を破かないようにそっと手に取りながら「人生のバイブルだと思っています」と小泉さんは言葉を結んだ。


父や兄も読んだ文庫本
▲父や兄も読んだ文庫本


イッピンの文庫本を手にして。所沢キャンパスグラウンドにて
▲イッピンの文庫本を手にして。所沢キャンパスグラウンドにて

 
1157号 2008年5月29日掲載