研究室のドアを開けた途端、恐竜の頭部と思われる茶褐色の化石らしいものが目に入る。壁一面の書棚のあちこちに、恐竜やは虫類のフィギュアや模型も置かれている。まるで小さな博物館だ。
棚の奥から先生がおごそかに取り出されてきたものは、ごくごく普通のタッパーケース。しかし先生は「この中には、世界でひとつしかないものが眠っているのです」と語る。なんと10年前、ブラジルで発見された「世界最古の海ガメの骨格標本」がタッパーケース内にあるのだという。
細心の注意をはらって標本が取り出された。「最初は石の塊だったのを酸で少しずつ溶かしていって、骨格のみを残して取り出しました。3カ月くらいかかりっきりだったなぁ…」
当初、これほどしっかりしたものが現れるとは思っていなかった。地質調査から1億1千万年前のものとは判明していたが、骨格全体が現れた時、先生は「震えちゃいましたよ」。小さいながら前足にひれの形をしたものがあった。「これはもしかして海ガメじゃないかと」。当時、海ガメの生息が確認されていたのは1億年前。それよりも1千万年も前のものが目の前に現れたのだ。「これはまさに“掘り出しもの”だと思いました(笑)」。そして英国の科学雑誌『Nature』で発表し、「世界最古の海ガメの化石」として認定された。
大学では経済学専攻だった平山先生がカメの研究を始めたきっかけは、京都大学大学院での亀井節夫先生との出会いだった。「カメの化石ならあります。君、これをやりなさい」と言われ取り組んだのが、古脊椎動物学への入り口だった。「始めたらこれが面白い。何しろリアルな素材がたくさんあるから、進化の過程がよく分かる。よく分かるから、面白い。面白いから、もっと知りたくなる。興味が尽きないんです」
海外にいる研究者仲間と夜が明けるまでメールをやり取りしながら、カメの話で盛り上がることもしょっちゅうだ。研究材料には事欠かないカメの世界。「カメの来た道は、僕の一生に続いていく道かな」。世界最古のカメを前に先生は、ふふっと会心の笑みをもらした。 |


▲世界でひとつのカメとともに。平山先生の研究室にて。

▲世界最古の海ガメの骨格標本、腹側より
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