とっておきの話 イギリスの週末

国際教養学術 森山 秀准教授

私は鉄道と山歩きが好きです。イギリスに住んでいたころ、週末はいつも列車に乗って田舎に出かけていました。金曜の午後にロンドンのセント・パンクロス駅を発ち、北に向かいます。行き先はシェフィールドやノッティンガムです。夜は泊めてくれる友人とパブで一杯。夕食はインドカレーです。このとき明日はどのあたりに出かけるか地図と時刻表を見ながら検討します。

 土曜日は早起きして、駅に直行。エンジンの爆音の割にはスピードの出ない旧型のディーゼルカー2両の列車にガタガタ揺られながらやってきたのはダービー州の小さな駅。駅の周囲には本当に何もなく、駅舎を出るとすぐ牧草地が始まります。草と家畜と暖炉の煙の交じり合ったあの独特の匂い、「ああ、またやって来たね」という感じです。

 ウインドブレーカーのポケットにはおやつを少々。チョコレートバー2本、それに青くて酸っぱいグラニースミスという小さい林檎を1個。コーヒーを水筒に入れて持ってくることもあります。昼食は山間のパブで取るので、真冬でな ければこれくらいの装備で十分です。それから、地図は奮発して本物を買って持っていきます。等高線や小さな川筋までわかるものです。高校時代は山岳部にいたので地図の読み方はよく知っています。

 秋から冬にかけて日照時間がとても短く、午後3時ごろから暗くなります。早朝出発、実動5時間ぐらいで計画します。夏はいつまでも明るくて、小高い丘の上はヘザーというピンク色の細かい花で一面覆われます。その上でいつまで寝そべっていてもぜんぜん時間が経たない感じです。


国際教養学術院 森山 秀准教授
▲ある夏の週末、ダービー州の丘の上で




 
2008年4月10日号掲載