わせだかいわい

高田牧舎


現在の店舗
戦前の店鋪。空襲により、失われてしまった。
▲戦前の店鋪。空襲により、失われてしまった。
カレーライス(660円)。甘みの中に深いコクがある欧風仕立て
▲カレーライス(660円)。甘みの中に深いコクがある欧風仕立て
店内の様子

 西早稲田キャンパス南門前に店を構える高田牧舎。カレーライスやハヤシライス、フライ、グラタンなど、昔ながらの洋食メニューが堪能できる老舗レストランである。店内は落ち着いた瀟洒な雰囲気。テーブルに飾られた一輪挿しを眺めていると、ここが学生街であることを忘れそうになる。

 1905年、当時流行のミルクホールとして創業した。屋号の「高田牧舎」は初代が高田町(現在の穴八幡神社周辺)の牧場主の息子であったことに由来する。ミルクホールとは、ミルクや軽食を提供する喫茶店のような店のことで、大隈邸に毎朝新鮮なミルクを届けていたというエピソードが伝えられている。

 ミルクホールはいつしか洋食店に。当初は有名ホテルなどから料理人を招き入れており、学生街にありながら本格的な西洋料理を供する店であった。客層はどちらかというと大人中心。一昔前までは価格の方もやや大人向けで、早大生にとっては「先生や先輩に連れられて」とか「仕送りが多かったから」といった特別な時に行くことができる憧れの店であったようだ。卒業後数十年してから、「当時は入りづらくて」、「昔は少し高くてあまり食べられなかったけど、今なら好きなだけ食べられるからね」と訪ねてくる人もいるとか。

 現在の店主は4代目の藤田智紀さん。20代半ばで老舗の看板を受け継ぎ、今年で4年目の若き経営者だ。変わらぬ味を受け継いでいかなければならないというプレッシャーはあるのだろうか? 「昔のままの味がいいとは全く思いません。『いいなぁ』と思うことがあったらどんどん取り入れていかないとつぶれてしまいますから」

 もちろん昔からの伝統に支えられている面は大きい。今でも学生時代を懐かしんで訪れる卒業生は多く、卒業生が集う会合の場として利用されることも多々ある。だが、それだけではいけないという思いが藤田さんにはある。例えば、看板メニューのカレーライス。「今はいろんな香辛料を使ったスパイシーなカレーがあるじゃないですか。昔の人からは『昔食べた味』として懐かしんでもらえますけど、今の若い人が大人になってから食べてもそんなに感動しないと思いますよ」

 懐かしの味、思い出の味が時代とともに変わりゆくなか、老舗は原点に立ち返る。「一から店を出したつもりでやっています。おいしければお客さんは来てくださる。伝統に頼る部分を脱して独り立ちしたいな、と」

 藤田さんは日々忙しく働くかたわら、そのための手段を模索中である。

■高田牧舎
 新宿区戸塚町1-101
【営業時間】11:00〜20:00(ラストオーダー)
【定休日】日曜・祝日
【TEL】03-3202-2376

(2007年11月29日掲載)

Copyright (C) 2007 Student Affairs Division, WASEDA University. All rights reserved.
First drafted 2007 November 29.