よく分かる! |
研究最前線
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教育・総合科学学術院
小笠原義秀教授 1949年生まれ。1974年早稲田大学教育学部地学専修卒業。1982年工学博士(早稲田大学)。早稲田大学専任講師。助教授を経て現職。 |
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マイクロダイヤモンド
カザフ共和国コクチェタフ超高圧変成帯産のドロマイトマーブルに含まれる変成作用起源のマイクロダイヤモンド。周囲の鉱物はガーネット。私たちの研究により、ダイヤモンドの形状が核とリム(周縁部)に分かれていることなどから、成長が二段階で起こったこと、また、リムのダイヤモンドはマントル深部(深さ200肢ネ上)に沈み込んだ 地球表層の岩石起源のH2O流体から結晶化したものであることがわかってきた。写真は15マイクロメータ。 |
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▲米国ユタ州のグーズネックス(Goosenecks)州立公園。コロラド川の支流サンフォアン (San Juan)川の穿入曲流(蛇行)地形。
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米国ユタ州南東部メキシカンハット(Mexican Hat)の東側に発達する地質構造のモノクライン(monocline)。古生代後期石炭紀の地層が山脈の斜面に沿って傾斜し、山脈の 頂上部と山脈の裾野では水平な地層になっている。山脈斜面に見えるジグザクの模様は地層が侵食により削られて作られた地形。モノクラインの地下には逆断層が伏在することが知られており、強い圧縮の力で山脈が形成されたことがわかる。
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米国ワイオミング州 南西部のウィンドリバーレンジ(Wind River Range)南端部のレッ ドキャニオン(Red Canyon)。太古代の変成岩類・花崗岩類の上にかさなる古生代から 中生代の地層が山脈の斜面に沿って北東に傾斜している。写真中央部の赤色層は三畳紀のチャグウォーター層(Chugwater Formation)、キャニオンは古生代ー中生代境界にそって発達している。写真右側(北東側)の地域は恐竜化石の産出でも有名である。この地点の少し南西側に約28億年前(太古代)の海底噴出塩基性火山岩からなるグリーン ストーンが産出する。
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米国ワイオミング州ビッグホーン山脈(Bighorn Mountains)南部に分布する約34億年前の太古代のミグマタイト。この岩石ができた頃は、地球には現在のように大陸は大量に分布(全地球表面積の約3割)していなかった。このような岩石の形成が間歇的に繰り返された結果、大陸の“総量”は現在の状態にまでに成長してきた。
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地球は生きている 地球と自分のつながりは、どのようなものか。地質学、鉱物学の視点から地球の素顔に迫ることができる。地球が誕生した46億年前から現在までの時間の流れ、未来の地球は? そんなことがみえてくる。われわれが存在する謎を解明する手がかりとなるだろう。
地球から誕生した人類は進化を重ね、高度な文明を築き、自然界をも支配するかのごとく、ますます発展し続けている。しかし、人類も地球システム(大気圏、生命圏、地殻、マントル、コア)の一部であるということは、忘れてはならない。
その地球が誕生したのは、今から約46億年前。生まれたての原始太陽の中で、原始星雲の塵が集まり、微惑星(planetesimal)がつくられた。それらが衝突を重ねて増大し、現在の地球に等しい質量の惑星地球が誕生した。 そのころの地球は、衝突による熱エネルギーと水蒸気などを含んだ大気の温室効果により地上の温度が高くなり、岩石が融解し、マグマの海(magma ocean)が地球を覆い始めていた。地球を形成する物質のうち、密度の大きい金属鉄は中心部へ沈んでいき、コア(核)、マントル、原始大気に分かれていった。
現在の地球も中心から、コア(内核、外核)、岩石からなるマントル、大気圏となっているが、コアについては、地震波の測定で液体の内核と固体の外核からなっていることが分かった。誕生初期から太古にかけてのコアは、すべて液体であったと考えられるが、マントルにより冷却され、温度も徐々に低下していき、内部で結晶化が起こり、それが中心部に集積し固体核を形成したものとみられる。
小笠原先生の研究テーマは、「超高圧変成作用起源ダイヤモンド」である。これは、地球の表層部にあるプレートの運動により、大陸プレートがマントル深部への沈み込み、上昇するプロセスの下で形成される。このダイヤモンドの形成メカニズムと形成環境の解明は、表層からマントル深部への沈み込みに伴う大陸物質の「進化」を解明するための重要な手がかりとなった。
カザフスタン共和国のコクチェタフは、古生代初期の大陸衝突帯である。小笠原先生の研究チームは、ここで特徴的に産出する炭酸塩岩を研究した結果、超高圧変成炭酸岩石「ドロマイトマーブル」(カルシウム・マグネシウムの炭酸塩〈石灰岩〉が変成作用を受けたもの)が、地表に上がってきたものだということを発見した。石灰岩やドロマイトなどの炭酸塩岩は、大気中にあった炭酸ガスを地層として固定する役割を担っているが、それまでの岩石学では、地表でしかできない石灰岩などの炭酸塩岩が、大量にマントルの深いところまで沈み込むイメージはなかったという。
もうひとつの重大な発見は、この岩石が沈み込む過程で、ダイヤモンドが大量に形成されているということである。ダイヤモンドが含まれているということは、つまり、非常に高い圧力条件を示しているということなのである。この発見により、表層からマントル深部までの炭素循環の過程での一産物として、「物質進化」の新たな情報を知る手がかりを得、世界中から注目を浴びることとなった。
この研究のきっかけは、十数年前に在外研究のためにスタンフォード大学を訪れたプロジェクトだったという。1984年にヨーロッパのアルプスで、初めて変成岩中にSiO2※の高圧相であるコース石(coesite 安定な最低圧力条件以上の圧力の変成作用で形成した岩石)が発見された。 これにより、プレートの動きによって起こる大陸衝突過程で、地球表層物質が地下深くのマントルに沈み込み、再び地上に上昇してくることが分かってきた。小笠原先生はこのことに魅入られ、今の研究へ取り組み始めたという。超高圧力変成岩とその形成プロセス研究は地球物質循環の視点から、その地球を科学的に研究する意義が近年ますます高まってきている。
地球の中心にできた核は、磁場を発し太陽風を防ぎ、プレートの運動は大陸を形成した。地球の活動により生命も誕生した。物質の循環がなければ、生命も誕生しなかったかも知れない。しかし、地球に誕生した生命の一種である人類の近化文明の大繁栄は、地球温暖化や深刻な環境破壊をもたらしている。われわれ人間も地球システムの一部であるということを、教養として認識していなければならない時代が来ており、それが、現代人に求められる科学的教養ではないだろうか。小笠原先生は、「人間が自然を科学的に理解すること」が大切であり、それにより現代に適応した新たな自然観や人間観が生まれる。それが、個人のPhilosophyにも関係するだろうという。その言葉のとおり、オープン教育センターの「ロッキー山脈で自然を科学するセミナー」では、他学部の学生にも広く知識の門を開いていてる。今年度のフィードトリップでは、40億年の年齢を持つ岩石が産出するBeartooth Mountain(アメリカ)で、太古代の基盤岩(グラニット)などを採取し、地球の壮大な歴史の謎解きにさまざまな分野の学生が挑戦した。先生は、このように自分の目で確かめ、自分の頭で考える授業を通して、われわれの唯一の住み処であるEarth is Only Home to All of US! ―地球―について、考える機会を与えてくれている。
※SiO2とは、二酸化ケイ素のことで、地殻を形成する物質のひとつ。圧力、温度の条件により、多様な結晶相が存在する。
小笠原研究室 オープンラボ
10月21日の創立125周年記念日に開催された、小笠原研究室のオープンラボの様子。
立ち寄った校友の中には、専門的な質問をされる方もおり、訪問者は高校生、受験生に限らず、小・中学生、保護者など多くの人々で終日にぎわっていた。 |
社会科学部3年 平本有佳
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▲採取した岩石の観察
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私は、2007年度オープン教育センター開講の「ロッキー山脈で地球を科学するセミナー」を受講した。まず、前期からの事前の学習を行い、夏休みに実際にロッキー山脈の大自然の中でのフィールドワークに取り組み、46億年の地球の歴史を探求してきた。
授業が開始された4月、いろいろな学部から集まった受講生は全員、「地球科学」の初心者だった。実際のフィールドを理解できるレベルに達するまで、半年間、分厚い英文の教科書を用いてのプレゼン、パソコンの地図ソフトやGPS(こちらもすべて英語表記)の技術習得などをこなした。未知の分野の学習は難しく感じることもあったが、「トリップを成功させよう」という目標に向かって、メンバー同士で協力・分担して乗り越えた。皆の積極性はトリップに出てからも変わらなかった。例えば、岩石採取の時は、誰かがハンマーを振れば、誰かが梱包の準備をして、GPSで記録をとる、というように自然とチームワークができていった。
私たちが思いきり勉強できたのは、もちろん小笠原先生のご指導があったからだ。先生は、地球科学の面白さについて、熱心に、時に厳しく教えてくれた。San FranciscoからJackson Holeまで、ずっと車を運転。昼食はビーフジャーキーとペプシだけ。私たち学生以上にハードな状況のもと、地球への好奇心を一瞬も失わない真剣な姿勢から「努力すること」、「成し遂げること」の大切さを学んだ。
また、このフィールドトリップに参加してから、「物事を広く深く見ること」を強く意識するようになった。地球科学の学習において、視点の中心には常に「自然」が置かれる。このことは、私の専攻である民法の学習とはまったく違った。「私人間」のルールである民法は「人」を中心とした学問なのだ。自分の専攻と異なる「見方」に触れることで、「何を見るか」だけではなく「どのように見るか」ということの大切さにも気付かされた。
壮大なロッキーを目の前にして地球の大きさを肌で感じ、仲間や先生と過ごした10日間は、私にとって一生ものの経験になった。この授業に出会えたことは、非常に幸運なことであったと思う。
現在私は、ロッキーの素晴らしさをもっと多くの人に知ってほしいと考え、トリップの成果をWebサイトにまとめる作業を続けている。
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▲Beatooth Mountain 山頂、37億年前のミグマタイトの上で。
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黒曜岩 火山岩の一種。古代人の石器などで有名 (2007年11月29日掲載) Copyright (C) 2007 Student Affairs Division, WASEDA University. All rights reserved.First drafted 2007 November 29. |