News & Topics

第1回 早稲田大学坪内逍遙大賞
 村上春樹氏に決定!
 奨励賞は川上未映子氏に


 第1回早稲田大学坪内逍遙大賞が決定し、11月19日に授賞式が行われ、各受賞者に白井克彦総長より賞状とメダル・賞金が渡された。会場は招待者、各新聞・雑誌等のマスコミ、学内外関係者などでいっぱいとなり、大盛況のうちに式は終了した。

本賞の目的

 本学では、東京専門学校文学科を創設した坪内逍遙の精神を発展させることを願って、このたび創設した「早稲田大学坪内逍遙大賞」の記念すべき第1回受賞者として、大賞に村上春樹氏、奨励賞に川上未映子氏が決定。この賞は広範な文化・芸術活動のなかから、隔年で「大賞」1名(1団体)、「奨励賞」1名(1団体)を選んで顕彰することを目的としている。

[大 賞] 村上 春樹(むらかみ・はるき)氏

 1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部(演劇専修)卒業。『風の歌を聴け』(1979)で群像新人文学賞を受賞し、デビュー。『羊をめぐる冒険』(1982)で野間文芸新人賞、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985)で谷崎潤一郎賞を受賞。『ねじまき鳥クロニクル』(1994、1995)で読売文学賞受賞。 2006年、フランク・オコナー国際短編賞、フランツ・カフカ賞を受賞。ノンフィクションに『アンダーグラウンド』(1997)、『約束された場所で−underground2』(1998)があるほか、アーヴィング、カーヴァー、フィッツジェラルド等のアメリカ文学の翻訳多数。

授賞理由

   現代小説の可能性を多くの長・短篇で切り開き、『アンダーグラウンド』などノンフィクション作品でも圧倒的な存在感を示した。また、レイモンド・カーヴァー全集、ティム・オブライエン、J・D・サリンジャー、レイモンド・チャンドラー、 F・スコット・フィッツジェラルドなどをはじめとする優れた翻訳によって、新しい日本語を構築した。

村上春樹氏の受賞の言葉から

 早大出身者を対象とするものではないということだが、僕は、いろいろな事情で、結果的に7年間も早稲田大学に在籍してしまいました。  学生時代は坪内博士記念演劇博物館、演博と言っていましたが、演博は好きな場所でよく足を運びました。いつも静かであまり人もいなくって。映画・演劇を専攻していた僕は、とにかくシナリオを書きたかった。演博にある古いシナリオを、次々に読んでは、まるで白日夢を見るように頭の中で映画をこしらえていました。映画を見に行くお金が無くて、演博を使っていたのですが、こういう作業が小説家になってから大変役に立っています。貧乏もたまには役に立ちます。長く続くとつらいですけど。  僕は、30年近く小説を書いてきて、好きなことを好きなようにやってきました。何かに貢献したとかしなかったという思いはありません。熱心な読者の存在こそが一番の勲章です。

 しかし、今回このような賞をいただき、わずかでも文学の新しい展開に寄与できたとしたら、大変嬉しいことです。

[奨励賞] 川上 未映子(かわかみ・みえこ)氏

 1976年大阪府生まれ。2002年、ビクターエンタテインメントより未映子の名前で歌手デビュー。雑誌「ユリイカ」に詩を発表しながら、2006年、随筆集『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』を上梓、さらに小説『感じる専門家 採用試験』を発表。2007年、「早稲田文学」に発表した『わたくし率 イン 歯ー、または世界』が芥川賞候補となる。CDアルバムに『夢見る機械』(2004)、『頭の中と世界の結婚』(2005)がある。

授賞理由

  『わたくし率 イン 歯ー、または世界』で示された稀有な筆力と思考力は、読むものに強いインパクトとショックを与え、まったく新しい日本語表現を見事に切り開いている。また、エッセイ集『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』も小説と比肩する、疾走する潔癖さとでも言える豊富な内容を持っており、身体性と観念性をたくみに行き来するこの作家の魅力を裏打ちする。

川上未映子氏の受賞の言葉から

 物語はそのへんに浮かんでいて、物語の方から作者に向かって飛んでくる。ある時は村上春樹さんに、ある時は私に飛んできて、作者は忘れ去られても物語は残ります。物語が私を目指して飛んできた時に、きちんと受け止めて物語をつむぎ出せるように、しっかりと体力をつけておきたいと思っています。


■選考委員

高井 有一(委員長) 小説家
大川 繁樹(副委員長) 株式会社文藝春秋第一文藝部副部長
高山 宏 首都大学東京教授
沼野 充義 東京大学教授
松田 哲夫 株式会社筑摩書房専務取締役
石原 千秋(副委員長) 早稲田大学教授
小田島 恒志 早稲田大学教授

(2007年11月29日掲載)

Copyright (C) 2007 Student Affairs Division, WASEDA University. All rights reserved.
First drafted 2007 November 29.