先輩に乾杯!

心地よい衝撃とともに「いけばな」と巡り会った
華道家 平間 磨理夫さん


平間 磨理夫さん
ひらま・まりお
 1977年、福島県二本松市生まれ。2001年3月社会科学部卒。小原流研究院講師の伊藤庭花に師事。「マイ・イケバナ」、「いけばな公募展」、「小原流展」に2006年まで毎年出品。また、「現代いけばな作家と陶芸作家のコラボレーション―華・器」(銀座画廊るたん)、「未来を見つめるIKEBANAの姿」(秋葉原 AKIBA-SQUARE)などで作品を発表。パーティーやレセプション、舞台の装花のほか、インスタレーション・アートなども手がける。現在、目黒学園カルチャースクール講師、いけばな公募展実行委員、花陶実験室主宰。公式ウェブサイトは、
【URL】
http://www.hirama-mario.com/

 出会いとは不思議なものである。それまで全く興味のなかった華道の世界との偶然の巡り合わせが、一人の男性の人生を変えることになった。今回ご登場いただく先輩は、新進気鋭の華道家として可憐な挿し花から大規模なインスタレーションや装花まで手がけている平間磨理夫さんである。

これといった「目標」も持たずに過ごした大学時代

 華道の世界と出会うまでの平間さんの生き方は、ひと言で言えば「曖昧」だったという。福島県の高校を卒業したものの、その先の計画はまったく未定。2年間はぶらぶらと何をするでもなしに過ごしていた。「もちろん友人は、進学したり就職したりと、着実に社会との関わりを持っていました。でも私の場合はこれといった目標もなく、何となく毎日が過ぎて行くのを眺めていました」。早稲田の社会科学部に進学したのも「受験したら受かってしまって…」(笑)。

  大学での人との付き合いは、どちらかというと苦手だった。相手から投げられたボール(言葉)をどのように返したらいいのか、初めのうちは分からなかったという。「そのうちに、自分からもボールを投げるようになって」。その感覚は、まるでどうしても合わなかったパズルがピタっとはまるような感じだったという。「在学中は、今はもう退職された照屋佳男先生(社会科学総合学術院教授)のゼミに所属していましたが、先生のおかげで卒業できたようなものです」

ほんのアルバイトのつもりが、一生の仕事に

 ある日、叔母から「暇だったら、ちょっと手伝ってほしいのだけれど」と声をかけられた。「背の高い男性向けのアルバイトがある、というんです」。叔母の紹介でもあり、あまり深く考えずに指定された場所に行ったら、それが『現代いけばな』の展覧会場だった。2001年2月に東京青山・エスパスOHARAで開催された小原流研究院講師の伊藤庭花と岩田佳川の『T空間Y』という展覧会の撤去の手伝いだった。それまで平間さんにとっていけばなといえば、女性がやるこぢんまりした「お花」というイメージが強かったというが、広い会場に展開されていたのは、植物による巨大な空間構成だった。「こんな表現も華道の世界にあるんだと驚きました。それは、心地よい衝撃でした」と当時を振り返る。それを機に伊藤庭花に師事。小原流いけばなを内弟子として学びながら、華道家の道を着実に歩んでいった。筋がよかったのか、代稽古は4年目からまかされるようになったという。

  「その頃は、いけばなを純粋に楽しめました」。最初は花の名前さえも分からなかった自分が、余計なことを何も考えずに心から楽しめた。自分の道はこれだ、と思ったという。

身体を壊してから、独自の道を歩み始める

 仕事は日増しに忙しくなっていった。やがて、自分はこのままでいいのだろうか、という疑問を抱くようになる。楽しいだけで華道にのめり込んでしまっていいのだろうか。次第に疲労と心労が重なり、肉体的にも精神的にも立ちゆかなくなってしまった。師事していた先生からも離れることになった。だが「おかげで自分が求めているいけばなが何なのかを考える時間をもつことができました」。 

  体調が回復すると、やりたいことが山のようにあることに気づいたという。「型」にいけることへの反発。「花をいける」という行為は何なのかという純粋な問いかけ。やがて「場」「空間」「人」が3つそろったいけばなを追求するようになる。今や個人にいけばなを教えるだけでなく、インスタレーションとしての花、舞台空間を演出する花、レセプションなどの装花も手がけるようになった。「よく考えてみれば、原点は故郷の豊かな自然にあったように思えます」。11月半ばには、モンテヴェルディの歌劇『オルフェーオ』の舞台装花、そして空き家を利用した展覧会を手がけるという。独自の道を進む華道家、平間さんの今後の活躍に大いに期待したい。

(2007年11月8日掲載)

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First drafted 2007 November 8.