進路選択物語

日本と朝鮮半島をつなぐ
定点観測家として


文学研究科修士1年 高木 理

研究中の筆者
▲研究中の筆者

 現在から過去を定点観測。私がいま大学院で行っている歴史研究とは、そんな地味な作業だ。刻一刻と変化を続ける世の中の最先端で、新たな流行や価値をつくり出すという仕事はもちろん素晴らしい。しかし、一生をかけて一つの対象に向き合い、それと格闘しながらよりよいものをつくりあげることのできる仕事。そんな仕事が自分には向いていると考えていた。大学院進学という選択は、自分らしい生き方を実現させるための第一歩であった。

 しかし、大学院生活はそんなに甘いものではない。同期の友人たちはもう社会人として働いており、「友がみな我より偉く見える日」もある。将来のことに不安や焦りがないわけではない。しかし、もともと人生とはそう簡単に答えがでるものではないし、出すべきものでもないだろう。私は好きなこと、探求したいことがあればとことんやってみたい。

 高校時代から日本史や世界史が好きだったが、一生を通じて歴史を学び続けてみたいと考えるようになったきっかけは、現在の指導教授との巡り合いであった。講義の中でその先生が述べた「過去は過去として存在しているのではなく、現在とのかかわりの中でイメージされ記憶されていくのだ」という言葉が、私を歴史研究の道に進ませた。

 私が研究対象としているのは、朝鮮半島を中心とした東アジアの歴史である。この地域の歴史を学べば学ぶほど、日本にとっては朝鮮半島が、朝鮮半島にとっては日本が最も身近でかかわりの深い他者であり続けてきたことを意識せずにはいられない。しかし、近代の不幸な歴史の記憶は、双方の和解を困難なものにしている。朝鮮半島と日本の人々が共有できる歴史認識はどうしたら可能になるのか。将来は研究者としてこの問題に正面から取り組んでいきたいと考えている。

 歴史を学ぶこととは、自分とは異なる他者に対する想像力を鍛える営為なのではないかと考えている。日本にとって最も身近な他者である朝鮮半島の歴史を学び、そこに生きる人々の思いに寄り添うことができるように、今日も明日も地味に定点観測を続けていきたい。

(2007年11月8日掲載)

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First drafted 2007 November 8.