世界見聞録 |
第18回 貿易と韓国社会科学総合学術院准教授 福永 有夏 日本と韓国の「近しさ」と「難しさ」 ―貿易から見る日韓関係―
はじめに告白すると、私が韓国を訪問したのは2度だけである。それも、ソウルに数日滞在しただけだ。韓国のほかの街のことはよく知らないし、韓国語だって、「アンニョンハセヨ〜」くらいしか話せない。その意味では、「韓国見聞録」を執筆するには適任ではないかもしれない。 にもかかわらず、「韓国見聞録」を執筆させていただくことにしたのは、韓国や韓国人に対する「近しさ」を常々感じているからである。韓国人の勤勉さや情の厚さ、また、思考や行動様式は欧米化しているにも関わらず、依然としてアジア的メンタリティーを持ち合わせているあたりなどは、日本人と極めて近いのではないだろうか。韓国や韓国人にこうした「近しさ」を感じる日本人は、私だけではないであろう。 日本と韓国との「近しさ」は、近年ますます強まっている。その原動力の一つとなっているのが、両国の貿易関係である。貿易というと、自動車や電気製品の貿易を思い浮かべるかもしれない。確かに、最近日本でも韓国製の電気製品をよく見かけるようになったし、韓国では日本車が人気となっている。しかし、実際にはもっと幅広いモノやサービスが日韓で取引されている。 その中でもとりわけ影響力が大きいのが、「文化」の貿易である。日本でも、数年前に「韓流」がブームになったが、韓国には、もっと静かな、しかし根深い「日流」が押し寄せている。1998年以降、韓国は日本文化開放政策を段階的に進め、今や若者の間ではJ-POPや小説などの日本の大衆文化が人気となっている。漫画に至っては、韓国の漫画市場の6〜7割を日本の漫画が占めているほどだ。こうした文化の貿易は、両国間の「近しさ」をさらに強めると期待される。 しかし、光には影が付きまとう。日韓貿易の拡大も、残念ながら良いことずくめというわけではない。日本製品の流入は韓国の対日赤字の拡大を意味するし、日本文化の浸透は見方を変えれば韓国文化への脅威と映る。これに歴史問題や領土問題などが加われば、日韓関係はたちまち難しいものとなってしまう。2003年12月に始まった日韓自由貿易協定交渉も、両国の政治関係の悪化などが原因で、2004年11月以降足踏みしたままだ。 「近しさ」は、「難しさ」と表裏一体である。「難しさ」を認め、理解し、受け入れたその先に、一層の「近しさ」が見つかるのかもしれない。 ※写真はすべて漢陽大学校朴宰完教授にソウルで撮影していただきました(2007年5月)。この場を借りて感謝申し上げます。 (2007年7月12日掲載) Copyright (C) 2007 Student Affairs Division, WASEDA University. All rights reserved.First drafted 2007 July 12. |