先輩に乾杯!

紛争地におけるスポーツの意義を研究する
 岡田 千あき さん


 ODAは資金や物資の供与だけではない。心の面でも支援することができる。今回は紛争地におけるスポーツ教育に情熱を傾けている先輩に、その意義についてお話を伺った。

岡田 千あき さん
おかだ・ちあき
 1973年三重県生まれ。川越高校から本学人間科学部スポーツ科学科に入学。96年卒業後、98年まで青年海外協力隊の体育教員としてジンバブエに赴任。帰国後、広島大学の国際協力研究科で国際協力におけるスポーツ教育の意義について修士課程を修了。同時にカンボジアやアフリカ支援のNGOでの活動を開始。現在は、大阪外国語大学で助教授を務めている。2007年3月に(株)国際協力出版会より『ライフストーリーでつづる国際ボランティアの歩き方』(共著)を発刊。

 今でも忘れられない光景がある。空爆停止直後の1999年7月にNGOのメンバーとして旧ユーゴスラビア連邦のコソボに入った時の出来事だ。街は破壊されつくし、電気も水道も通じていない。地雷マップを手に入れるために訪れた夜の体育館で見たのは、意外にも小さな懐中電灯の明かりを頼りにバスケットボールに興じる人々の姿だった。

  「こんなひどい状況下で、人はなぜスポーツをするのだろう。そんな小さな疑問から、紛争地におけるスポーツを研究しようと思いました」

  調査に訪れたボスニアでは、戦闘から身を守るために何カ月も家に閉じこもらざるをえない子どもたちのストレスを解消する目的で、軍隊にグランドの周囲を守ってもらってのサッカー試合が行われていることを知る。戦争のまっただ中でスポーツが行われているとは思いもしなかった。

たまたま参加したJICAの説明会が転機に

岡田さんは、本学ではスポーツ科学を学んだ。教員免状はとったが、教師になるつもりはなく、就職活動中にたまたま開かれていた青年海外協力隊の説明会に軽い気持ちで参加した。しかしこの偶然の出合いが、岡田さんのその後の人生を大きく左右することになる。

  「すぐその気になってしまったんです(笑)」。3カ月の研修の後、体育教員としてアフリカのジンバブエに赴任。岡田さんは、中高一貫の女子校で、ロープを使っての綱引きや、縄跳びなど、体を動かすことの楽しさを生徒たちに教えた。ジンバブエでの支援活動は2年と3カ月続いた。

国際協力におけるスポーツの役割

帰国後、広島大学大学院の国際協力研究科に進学。国際協力におけるスポーツの役割について研究を進めた。「発展途上国におけるスポーツ教育は、具体的な貢献度が見えにくいもの。『なぜ、発展途上国にスポーツが必要なのか?』と聞かれることもよくあります。でもコミュニティの中で自発的に人が集まるしかけづくりという面では有益なんです」

  実際、国連には事務総長付きで「スポーツ特任大使」というキーポストがあり、紛争復興地域や貧困問題が深刻な地域、難民キャンプなどで、スポーツ活動を推し進めている。またノルウェー、カナダ、オーストラリアなどの国々が、積極的に技術支援や施設、用具などの提供を行っている。

  一方、日本のODA全体に占めるスポーツ援助の割合は微々たるもの。「他の先進諸国と比較してもかなり低く、国際協力としてのスポーツの意義や日本の持つアドバンテージなどを積極的に検証していく必要があります」

学生の参加を募ってのカンボジア支援

現在は大阪外国語大学の助教授として、開発・環境講座を受け持っている。そのかたわら、カンボジア教育省の学校スポーツ振興プログラムと連携して、年間70人程度の大学生を派遣してのボランティア活動を6年前から続けている。「スポーツ教育を通して、スポーツそのものを楽しむだけでなく、運動場のゴミ拾いやスポーツ用具を大切に扱うなどということも自然と学びます」。現地では、さまざまなスポーツを教えているが、それがやがて地域をあげてのスポーツフェスティバルにまで広がりを見せているとか。

  「紛争地や途上国におけるスポーツは、民族融和や地域社会の結び付きを促進するという働きもあるんですよ」。スポーツを通しての国際貢献は、今後ますます重要になってくると岡田さんは指摘する。「早稲田の学生さんも、ぜひスポーツ・ボランティアに参加してください」。岡田さんの目線は子どもの目線と同じように、常に未来に向けられている。

(2007年5月10日掲載)

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First drafted 2007 May 10.