わせだかいわい

銭湯 「松の湯」(西早稲田) 
山崎 久美子さん



▲「松の湯」山崎 久美子さん

 カラ〜ン。ポッチャン。ザブ〜ン。
銭湯といえば、そんな音が聞こえてきそうだ。家の風呂とは違い、たっぷりのお湯にゆったりと浸かると思わず「ほぉわ〜」と息がもれる。


大鶴が舞う銭湯

浴室壁面・モザイク画の大鶴
▲ 浴室壁面・モザイク画の大鶴

 今回ご紹介するのは、早稲田通り西早稲田バス停そばにある銭湯「松の湯」。夜になると外壁にイルミネーションが点灯するが、その奥には昔ながらの瓦屋根の銭湯がある。「松の湯」とは、東京都にある銭湯で一番多い名前である。全国の「松の湯」の名前の由来を調べてみると、「神が降りてくるのを待つ樹(松つ木)」、「庄屋の松の木に鶴が降り立った」、「鶴がこの湯で傷を癒した」など、縁起の良い由来がいくつもあった。この「松の湯」でも縁起物の鶴が、浴室の壁面いっぱいに羽ばたいている。先代が銭湯を始めたころは、ペンキ絵で風景画が描かれていたというが、「40年前に天草五橋のモザイク画に変え、11年前に太陽に向かって羽ばたく大鶴にしたんですよ」とおかみさん。夕日が差し込むころに湯船に浸かり、日に向かって飛び立つ夕鶴を見上げるのも良いかもしれない。

お釜のドライヤーと黄色いケロリン

 早稲田通りに面して、「松の湯」の入口がある。フロントで料金を払い、男湯、女湯の暖簾をくぐると、広い天井の脱衣所へ。そこには昔ながらのお釜のドライヤーがある。何十年か前まで、美容院などではヘルメットをかぶるようにして髪の毛を乾かす、このお釜のドライヤーを使っていた。浴室にはサウナや水風呂、ジャグジー風呂があり、洗面器はもちろん黄色のケロリンである。

交流の場としての銭湯

入口

 午後2時半、「あら大変!」とおかみさん。急いで入口を開ける。開店は3時だが外にはもうおじいちゃん、おばあちゃんたちが大勢待っている。「松の湯」は近隣の人たちの社交場になっているようだ。ロビーには、家族連れで来ていて、先にお風呂を出てしまって待っている子どものために「知恵の輪」などの遊具も用意してあるが、どうやら子どもたちよりもお父さんの方が夢中になってしまうらしい。学生のグループもわいわいと楽しそうにやって来る。「学部生の時から通ってくれている子が、院生や社会人になっても通ってきますよ」とおっしゃる。気さくなおかみさんやご主人とおしゃべりして1日を終えるのが日課らしい。もちろん、常連の人の名前が貼ってある小さい貸しロッカーも完備。「そうかと思えば、いままで何も話したことがなかった子が『卒業するんです』と最後の最後で話しかけてくれてね」と感慨深げに話してくださった。

冬のお風呂

 古くは江戸時代から、冬至の日にゆず湯に入る習慣があった。「松の湯」でも一晩で何箱ものゆずを使うそうだ。ゆずなどの柑橘類の皮の成分には、肌をすべすべにし湯ざめを防ぐ効果があるので、科学的にもゆず湯に入ることで、風邪の予防になると言われている。ゆず湯は、美容と健康を兼ねそろえ、冬の寒い時期に入るのが理にかなっているというわけなのである。

 昨年も冬至に当たる12月22日には、「松の湯」も毎年恒例のゆず湯となり、ほんのり香る湯煙に老若男女が包まれていた。

(2007年1月11日掲載)

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First drafted 2007 January 11.