薦! |
『やっぱり、和食かな。』 行正 り香 著
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<評者>
横野 恵 (よこの・めぐむ) 社会科学総合学術院 専任講師 2006年4月嘱任 専門分野:医事法・英米法 |
おびただしい数のコンビニエンスストアやファーストフード店がある今の日本で、手間も時間もかけずに食事を済ませるのは簡単なことだ。忙しい日常の中で私たちは、ややもすれば自分で料理を作ることを煩わしいと感じがちである。
そんなときにキッチンに立ってみようという気持ちにさせてくれるのが、この本だ。紹介されているレシピはどれも簡単で失敗がない。手間をぎりぎりまで省いていながら和食としてちゃんと成立するのである。しかし、本書の魅力はそれだけではない。
著者は言う。料理を作ることは「香り、味や見た目を含め、自分だけでなく、人のために大切な記憶を作ってあげる行為」にほかならない。顔の見える誰かが作ってくれた料理は、ただ食べ物として消費されるのではなく、記憶として心の中に残り続ける力をもっているのだと。広告代理店で忙しく働く著者(専業の料理研究家ではない)が料理を作り続ける理由はそこにある。
大学生になってから、家族と離れて生活している人や、家族と同居していても一緒に食事をする機会がほとんどないという人も少なくないだろう。1人で簡単に済ませる食事でも食欲や栄養を満たすことはできるだろうし、食事に手間や時間をかけるのはもったいないという考え方もあるかもしれない。それでも、時には、家族や友人のために料理を作って、一緒に食卓を囲んでみてほしい。楽しい時間を過ごすことができれば、その記憶は自分にとっても一緒に食事をした人にとっても大切なものになるはずだ。
自分や自分の身近な人のために、少しだけ時間を使って料理を作る心の余裕を持つことの大切さをこの本は教えてくれる。
(2006年10月26日掲載)
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