特集

「働く」って何ですか?
 ―「就活」のもっと前から働くことを考えてみる―
 第2部 座談会 現役大学生「働く」を語る



 5万人を超える学生が集う早稲田には、その数だけの進路ができていく。今の早大生は、「働く」ことをどう考えているのだろう。多種多様な期待、不安、迷い、決断の中で、自分なりの「生きる道」を見つけていく過程を現役学生に聞いてみた。


―1、2年生のころって  「働く」ことを  どう考えてました?


小林拓弘さん(政経4年)
学生キャリアアドバイザー(内定先:日本テレビ放送網株式会社)。昨夏のテレビ局のインターンシップを経て、広告代理店志望がテレビ局に変わった。

太田晶湖さん(政経3年)
公務員を志望していたが、今夏、ベンチャー企業へのインターンシップを経験し、企業志望に方向転換。現在、就職活動中。

三浦匡道さん(社学5年)
学生キャリアアドバイザー(内定先:日本製紙株式会社)。公認会計士の資格勉強を経て、4年生の秋から就職活動を開始。30人近くOB・OG訪問をした。

森 吉庸さん(教育4年)
学生キャリアアドバイザー(内定先:株式会社リンクアンドモチベーション)。就職活動関連のセミナー・説明会に参加した数は200近くにのぼる。

 家で会社の愚痴をこぼす親父を見ていたら、正直、「労働は苦役なり」という印象で。やらなきゃいけないことだけど、社会に出たら縛られるんだろうなあって思ってました(笑)

小林 少し感覚的ですが、「10年後、20年後にどんな顔になってたいか」を考えていました。歳を経た大人の表情っていろいろ奥深いじゃないですか。こういう顔になりたいな、なりたくないなって思いながら、じゃあ自分はどう働いていけば、一人の大人としてあるべき顔に近づけるのかなと。

太田 私の場合、「働く意味は?」の答えに、大金を稼ぐ、有名になるためなどを挙げるのが、とても悪いものだと思っていたんです。社会のために何かしたいという思いから、公務員を志望したんですけど、心の中に「それでいいの?」って声も正直あって。迷う理由が何なのか分からなくて、「公務員を目指して進めば、迷いはなくなるはず」と自分に言い聞かせていました。

三浦 僕は入学当初から「資格ありき」で勉強してきたんです。でも、資格取得後に何をしたいのか、働くって何かを全く考えてなかった。大学受験のように試験に受かればいいと。今思うと、浅はかでしたよね。3・4年生で残念ながら試験に落ちて、大学院に進むか、就職するかを真剣に悩んだ時、やっとそのことに気付き、4年の秋にキャリアセンターに駆け込んだんです。食いっぱぐれたくない。そんなゼロからのスタートでした。

―「働く」ことへの考えが 変わっていったきっかけは?

三浦 キャリアセンターの方にOB・OG訪問を勧められたんです。働くことが分からなかった僕は、とにかく先輩方に会いに行きました。

 僕も森君と同じく「イヤイヤ働いているんだろう」という先入観があったんですよ。でも、実際には皆そんな風に見えなかった。むしろ多くの方が愛社精神を持っていることが印象的でしたね。先輩方の話を伺って、「資格しかない」と凝り固まった考えが解きほぐされていったんですよ。

 3年の夏にボコボコとインターンシップの選考に落とされまして(笑)。何でかっていうと、エントリーシートの志望動機や自己PR欄に何を書けばいいのか分からなかったんですよ。これはヤバイと思い、「動くしかない」と自己分析セミナーや就職説明会に片っ端から参加したんです。それが次の2つの点で大きかった。

 まず、そこで話したりプレゼンしたりする中で、「森君って○○だよね」といった反応をもらいますよね。そんな周りの声が、「意外な俺」を知る大きな手がかりになったんですね。

 次に、自分の夢を熱く語る先輩の姿に感化されたんですよ。楽しく働くなんてムリだろうと内心では思っていたところに、真剣に情熱を注いでそれをかなえようとする先輩たちがたくさんいた。かっこいいんですよね。俺も熱くやっていきたいと思ったわけです。

 そうやって「今までの自分」と「将来なりたい自分」の線が、明確につながっていったんです。

マズローの五段階欲求
心理学者マズローが提唱した人間の欲求の理論。高次元の欲求になるほど上階層となる

太田 インターンシップ先の副社長に「マズローの五段階欲求」(右図)という話を聞いたんです。その時、私が公務員の道に迷いを持っていたのは、五段階目の「自己実現」の部分と自分の思いがかみ合っていなかったからだと気付きました。

 また、これまでは営利目的で動く企業にえげつなさを感じていたんですが(笑)、実際に企業で働くと、真剣にお客さまのことを考える企業の姿がすぐに見えるじゃないですか。「社会のため」に働くって企業でも十分できる。だったら、2つを両立させる道は何かなって志望が変わっていきました。

小林 確かに企業活動って金もうけだけじゃ語れないですよね。僕はテレビ業界で環境を扱ったコンテンツを作る第一人者になりたいと思ってるんです。環境ってすごく大事なテーマなのに、それを扱ったシンポジウムや専門書はもちろん、新聞の特集ですらわが家のような一般家庭ではなかなか読まれない。それをテレビなら広く社会に発信できると思うんです。

 そんな思いを持つようになったきっかけは、昨年、自閉症の子どもたちの施設やNPOをいくつか訪れたことです。すると一部のNPOが短期的な貢献に終始してしまっている実情が見えてきて、残念だったんです。彼らには芸術的な才能など突出した能力を持つ人もいる。そんな才能をもっと世間に紹介していけば、自閉症への理解も広がり、社会にも、彼らにも必ず役に立つはずだと、仲間と自閉症芸術展示会を企画したんですよ。そんな活動の中で、単にお金を稼ぐだけでなく、社会にも相手にも自分のためにもなる仕事ってとても面白いと分かったんです。

 実際に働く先輩の話を聞いていても、皆ものすごく真剣に相手のことを考えて働いていますよね。

―皆さん動きながら答えを見つけていったんですね。後輩へのアドバイスとして挙げられることは何ですか?

太田 私はまだ就職活動中ですが、自分だけで考えるより、行動した方が得るものが多かったですよ。一人で考えて頭でっかちにならないでほしいですね。私の周囲にも、人気企業ばかりを志望して、それぞれの会社の志望理由に何の脈絡もない人がいます。これも「頭でっかち」に入るんじゃないかな。

三浦 きっと世間体を意識し過ぎてるんですよね。でも、自分の進む道なんだから、自分の気持ちを出さないと。世間体を全く無視することはできないでしょうけど、優先順位を下げることを意識した方が良いと思います。

 僕は、OB訪問で知り合った鉄道会社の社員の方にものすごく感銘を受けて、その人と働きたいという思いで必死に頑張ったんです。結果的にその会社には縁がなかったんですが、そこで頑張ったことは、その後の活動で無駄にならなかった。あそこで必死にならなかったら、内定を取れなかったと思っています。資格試験の経験も含めて、後輩に言えることは一つに決めつけなくてもいいんだってことですね。

 本気って重要ですね。就活でなくても、何でもいいから学生時代から本気で頑張ること。その過程には「働く」ことにつながる多くの気付きが得られましたね。

小林 これまでの話に出た本気でやれるものとか、世間体を気にしないものに出合ったときって、絶対に不安になると思うんです。でも、不安のないところに期待はない。両者は表裏一体なんだから、不安に思うときこそ、楽しくできるチャンスでもあるんじゃないでしょうか。

 また、働くことにネガティブな感情を持っている人やアツイのが嫌だなって思っている人には、損得で考えたらと思うんです。学生時代よりも、社会に出た後の人生の方がずっと長いですよね。だったら、それを今から考えないのって損なんじゃないって。

―最後に今の皆さんにとって 「働く」ってどういうことですか? また、将来のあなたは どのようになっていたいですか?

小林 働くって端的にいうと人をニコニコさせることだと思っています。「このグッズがかわいい」とか、人が喜ぶちょっとしたことのために、全力を注ぐ人たちがいると思うんですね。僕もそんなことがしたいんです。そのためにも、将来はしっかりバカができる人になりたいですね。思いっきりバカなことをして周囲を楽しませている先輩たちと話していると、不思議に大人だなと思うんですよ。僕らよりもずっと発想も柔軟ですしね。

 働くことと遊ぶことや学ぶことには、境界線がないと思っています。だから、働く=遊びと言えるんですが、固くいうならば夢をかなえることですね。将来は、自分がいることで周囲を楽しくさせるようなモチベーションのクリエイターになりたいですね。

三浦 アルバイト先でも適当に働くぬるい$lに出会うことがあるじゃないですか。「何でこの人たち働いてるんだろう?」と考えたとき、僕にとって働くことは、誰かに必要とされるというエネルギーを得る行為なんだなって。「三浦さんじゃないと駄目」と言われるような突出した個性を育てられるように、働きながらも勉強は続けようと思っています。

太田 繰り返しになりますが、働くことで自己実現と周囲への貢献を両立させたいと思います。将来的な話では、私も三浦さんのように必要とされる存在になっていたいですね。その気持ちは働くことだけでなく、子どもを持ち母になりたいという気持ちにも通じているんです。

 ―皆さん、どうも  ありがとうございました。

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 >> 第1部 キャリアセンター版学生生活のすすめ


(2006年10月19日掲載)

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First drafted 2006 October 19.