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性同一性障害を抱えた自身の体験をつづった『ダブルハッピネス』を上梓
 杉山 文野さん



すぎやま・ふみの
 1981年東京都生まれ。日本女子大学附属高等学校卒業。教育学研究科修士課程2年、前田耕司研究室で「セクシュアル・マイノリティと教育」を研究。女子フェンシング元日本代表。ワセダクラブの同競技のコーチを務める。

 本を書くきっかけは、大久保の道端で見かけた乙武洋匡さんに声をかけたこと。「オトさんに尋ねたかったことがあったんだけど、自然と僕の話題の方で盛り上がっちゃった(笑)。そこから『お前面白いし、本を書いたら』って薦められて」。すぐに編集者も紹介され、出版が決定。「性同一性障害を抱えた僕は、苦しみ・悲しみとともに、楽しさ・うれしさも2倍だ」という思いをタイトルに込めた。

  「紆余曲折」では言い表せないドタバタの来し方を、時に可笑しく、そして正直につづったが、一貫して性同一性障害に関する問題への結論付けはしなかった。「僕の本で、この問題のすべての悩みが解決されるわけじゃないし、押しつけたくはなかった。でも、この話は皆さんの想像以上に身近にある。それを考える一つのきっかけになってくれれば」。相談、批判、エール…想像以上の反響が今も届くが、執筆で最も痛感したのは「僕は本当に仲間や親に恵まれた」ということ。

  文章に書くことで、自分の気持ちに整理もついた。周囲から「今後、人権活動を展開するの?」と尋ねられるが、その気は全くない。「性同一性障害は僕の要素の一つに過ぎないんです」。今は次のステップを模索中。将来の夢を職業に直結させる考え方に違和感を感じ、「人との出会いが人生を広げる」と、多彩な分野に飛び込む毎日。小学生にフェンシングを教える傍ら、NPO「green bird」の歌舞伎町チーム代表としてゴミ清掃活動をし、「シブヤ大学」では性同一性障害の“先生”役をしながら学生としても学ぶ。「おかげで修士論文に割く時間がなくて…(笑)」

  「現代は情報があり過ぎるために惑わされることも多い。だからこそ、自分の素直な気持ちを大事にして、心を研ぎ澄ませる必要があるんじゃないかな。そうすれば、きっと見えてくるものがある」。そう語る杉山さんが今後見つけるものは何なのか、期待せずにはいられない。

(2006年10月5日掲載)

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First drafted 2006 October 5.