先輩に乾杯!

渋谷を拠点に若者の可能性を支援する
 NPO「KOMPOSITION」を設立した 寺井 元一 さん


寺井 元一さん
てらい・もとかず
1977年兵庫県生まれ。私立灘高校卒。2001年政治経済学部卒(田中愛治ゼミ)。04年政治学研究科修士課程中退。01年、母体となる学生団体kompositionを設立し、翌年NPO法人化。現在に至る。リーガルウォールの他、区のバスケットコートの管理・清掃など受託し、ストリートバスケットボール大会の運営、陸上競技場をランナーに開放するイベント、フリーペーパーの作成などを行う。
【URL】http://komposition.org/

 「若者は自由でいい」。誰もが一度は耳にした言葉だろう。確かに、社会人に比べて時間はあるし、将来が不確定な分、可能性だってある。だが、そんな環境にいても、そうは感じられないときが多くの人にあるはずだ。その時、あなたなら、どうするか。今回は、渋谷を拠点に若者の可能性を支援するNPOを立ち上げた28歳の先輩を紹介しよう。

やりたいことをやりたいなら、まずは自分を認めさせるべし

 街に溢れる落書き対策として、区公認で若手グラフィティライターが街の壁に作品を描いた「リーガルウォール」が、渋谷の数カ所にある。「落書き」を活かしながら、その氾濫を抑制できると、寺井さんたちはこの企画を区に提案した。半年間、落書きをひたすら消し回って交渉を重ねることでようやく区の許可を得た。「経験がない俺ら若者はまず自分を認めてもらう必要がある。徹底的に消してやろうと思ってた」。今では、区の公園とそこに設置されたバスケットコートの管理・清掃や、ストリートバスケ大会の運営なども手がける。アートやスポーツに興味のある若者が、責任を負いながら夢を追求できる仕組みだ。「人に喜ばれることをやって、自分のやりたいこともできる。そんな装置をもっと作れば、街に若者を応援する機能が加わる。渋谷の街自体を美術館や体育館として機能させ、今後も多彩な分野で若者が活躍するプラットホームを作っていきたい」

等身大の自分を認めることで感じた自由の感覚

 進学校の中で埋もれた存在だった高校時代。やみくもに勉強することに反感を持ちながら、かといって目立つこともできない鬱屈したぬるい日々。折しもアトピーを発症。徐々に悪化する症状に「人生終わった」と自暴自棄に。「でも、そこで積もり積もったもんがバーンと弾けた。もう、いい。コレがホントの俺だって。それで初めて自由を感じ、前向きになった」。同時期に阪神淡路大震災で被災。多くの遺体を目にし、人生観が変わった。最後は結局死ぬのなら何でもやればいい、エゴでもいいから自分の視点から世の中を変えたいと思い始めた。「今の若者は自由な環境にいながら、どこか諦めてたりする。本当はもっとやれる。けど、僕もそう思えなかった時に、周囲のアドバイスは響かなかった。自分で動いて気付くしかないよね」。そのきっかけを提供したいという意識はこのころ芽生えた。

自分の頭で考えて理屈を磨き、道を作っていく

 「嫌いだからこそ、何かできそうな」政治の世界を志し、大学に入学。授業には出ず、サークルも面白い人間を捜す程度。友人のツテで代議士事務所のボランティアとなり、「他の奴と違い、ずっと事務所に残ってつまらない仕事でもやる」姿勢が認められ、重要な案件を任されるようになる。だが、若者層が全く相手にされない選挙の現状を見て、政治に見切りをつけた。ならば自分たちでと、大学院生時に仲間とKOMPOSITIONの前身となる学生団体を創設。翌年、法人化して事業体とした。就職活動は一切考えなかった。「その他大勢の一人になる行動ほど無駄はない。もし働くにしても、会社に飛び込んで、無給でがむしゃらに働いて認めさせていたと思うよ」

  独自の道を開拓しているが、決して自分に自信はないという。「だからこそ、自分の頭で考えて理屈を磨いている」。そうやって、目標を一つずつ実現させてきた。「就職は確かに大きな国道だけど、それ以外にも道は360度広がっている。僕は確立されていないあぜ道をいろいろ作っていきながら、未踏の場所に行きたいと思ってるんだよね」

(2006年4月27日掲載)

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First drafted 2006 April 27.