わせだかいわい

書道研究途上社代表、本学嘱託職員 渡部 大語さん
 【URL】http://www.ne.jp/asahi/taigo/w/


大隈庭園にて
▲ 大隈庭園にて
賞状を作成するのも渡部さんの仕事の一つ。右にあるのは大きな朱肉。印鑑を押す位置にも気を配る。
▲ 賞状を作成するのも渡部さんの仕事の一つ。右にあるのは大きな朱肉。印鑑を押す位置にも気を配る。
文字の位置を把握するために初めに置いた碁石をはずしながら、迫力ある大きな文字で立て看板を作成する。
▲ 文字の位置を把握するために初めに置いた碁石をはずしながら、迫力ある大きな文字で立て看板を作成する。
さらさらと筆を取りながら、書体の説明をする渡部さん。
▲ さらさらと筆を取りながら、書体の説明をする渡部さん。

 渡部さんは、本紙連載小説「モンタージュの奇跡」の題字でおなじみの方。入学して真っ先に目にする入学式の立て看板から、卒業時に授与する卒業証書まで、大学主催の催しの看板や賞状などのほとんどは、渡部さんによって書かれたもの。早大生なら誰しも一度は目にする文字の「生みの親」にお話しを伺った。

  入学式の「早稲田大学入学式」という看板の文字は中国の木簡に見られる隷書体。看板前で記念撮影をした人も少なくないだろう。実は渡部さんの新入生への思いが、あの文字には込められている。「高校までの学校教育であまり見たり、学んだりしたことのない文字を使うことによって、いままで習ってこなかったことを大学ではやるんだよ、というメッセージを隷書で表現しているのです。両側に引く赤い線は、祝福の気持ちを表わして数年前から書くようになったんです。この線2本だけでもぐっと印象が変わるんですよ」。早稲田に勤めて24年、渡部さんの思いを込めた文字がこうして毎年新しい学生を迎え、送り出してきた。

  自分が頭の中で100点のものを思い描いたとして、それに近いものが出来て当たり前。まれに、そのイメージが200点にも300点にもなって作品として出来上がることがあるという。「この至福の瞬間を『生まれる』と僕は言ってるのだけど、それはその瞬間の気持ちというのが、子供が生まれた時に母親が抱く気持ちと通じる感覚ではないかと思うからなんです」

  書道のみならず、陶芸センスも抜群で料理や歌の腕前にも定評がある渡部さん。「僕はひいおばあさんから、『おまえは、文殊菩薩(「三人寄れば文殊の知恵」などのことわざで知られる、知恵をつかさどる菩薩)の右肩から生まれたから、手をつかう仕事をしなさい』とずっと言われて育ったんです。だからかな?」と照れ笑い。その言葉通り、生まれながらの芸術家だ。しかし天性の才能はもちろんのこと、努力による伎倆も培わなければ良い作品は生まれない。「基本がなっていなかったり、美しく書けても訴える力のない作品が多いんだよね。『基本が大切』とか『書は人なり』とよく口にする人に限ってそうでなかったりする。書道で言えば、文字がどのように進化してきたかというようなことを勉強し、文字や言葉を大切にして何かを表現してもらいたいですね」。書道のみならず、すべての世界に通じる言葉ではないだろうか。最後に読者に「基本を会得して基本をぶっ壊せ」というメッセージを送ってくれた。キャンパス内で渡部さんの文字に出合ったら、その言葉を感じ取ってほしい。

(2006年1月19日掲載)

Copyright (C) 2006 Student Affairs Division, WASEDA University. All rights reserved.
First drafted 2006 January 19.