先輩に乾杯!

20年近くドキュメンタリーを作り続けるNHKディレクター
 堅達 京子さん


堅達 京子さん
げんだつ・きょうこ
 1965年生まれ。福井県藤島高校卒業後、83年第一文学部入学。在学中は「山田太一ドラマサークル」に所属。卒業後、日本放送協会(NHK)に入局。金沢放送局を経て、東京本部へ。さまざまな分野でドキュメンタリーを作り続ける。主な著書に『家族の肖像「遺志 ラビン暗殺からの出発」』、『失われた思春期 祖国を追われた子どもたち・サラエボからのメッセージ』など。本学文学部の「総合講座 現代日本のマスコミ・出版の諸問題」の講師の経験も持つ。

 今も昔もマスコミ業界を志望する早大生は非常に多い。今回登場する堅達さんもそんな王道を歩んできた一人だ。常にカメラとともに現場に立ち、人々と向かい合ってきた堅達さんは、明るくて話し好きの雰囲気の中に熱い思いがしっかりと伝わってくる話し方や目線などがとても印象的だった。そんな堅達さんの生き方を紹介しよう。

留学時の体験からマスコミに興味を

 もともとゼロからモノを作ることが大好きな性格。高校時代に演劇に熱中、大学入学後も続けようと思っていたが、芝居のためには留年覚悟という奔放な演劇サークルで活動してしまっては、せっかく指定校推薦で送り出してくれた母校に申し訳ないと思い、目標を「留学」に変更。大学3年時にフランスへ留学。異文化に一人飛び込み生活する中で、どんな状況でもface to faceで対話することの大切さを感じていた頃、チェルノブイリ原発事故が発生。不正確な情報による大衆の混乱を目の当たりにし、マスコミの重要性を痛感させられた。帰国後、幸運にも新聞社とNHKから内定を得て、「一人ではなくチームで作り上げる」テレビ業界を選択した。当初はドラマ制作志望だったが、新人時代にドキュメンタリー制作の面白さを先輩に叩きこまれ、開眼。以来、現場一筋。

人間の生き様を映すドキュメンタリーを作るということ

 人間の生き様を映し出せるのがドキュメンタリー。「フィクションでは出せない彼らの生き方のものすごさ」を数十分の作品で伝えるには、長期間の撮影を要するが、多くのディレクターがそれ以上の時間を取材対象者と話し合い、信頼関係を作ることに費やす。伝えるべきことが、彼らが触れてほしくない部分と重なることも多い。どんなに正義感・使命感に燃えても彼らの世界に土足で入り込むわけにはいかない。「相手の懐に飛び込むと言っても、その方法は千差万別でマニュアルなんてありませんよ」。文字通り全身でぶつかっていくからこそ、扱った題材や対象者の思いは、今も自分の心にしっかりと残っている。長岡のホスピス、いじめを苦に子どもが自殺した学校現場、戦地サラエボで出会った映画監督、シルクロードの風景…ふとしたきっかけで出合った「ネタ」は、今では一つひとつに語り尽くせぬほどの思いが詰まっている。

トライ&エラーを繰り返せばいいじゃないか

 さまざまな作品を作り続ける中で、世界はいかに広いか、そして、小さくても深い場所がいかにあるかを体感してきた。「ディレクターは常に次の題材を考えているものですが、40歳を迎えた今、ディレクターとして自分は本当に何をやりたいのだろうと、あらためて考えているんです。皆さんは卒業後にもいろいろな生き方や世界に必ず出合っていく。だから学生時代に無理に結論を出さなくていい。トライ&エラーを繰り返せばいいじゃないですか。臆病になって何もしないことが一番もったいないですよ」。その姿勢は堅達さんの生き方に他ならない。


「新シルクロード 西安 永遠の都」放送!

 12月11日(日)21:15〜、総合テレビで堅達さんがディレクターを務めたNHKスペシャル「新シルクロード 西安 永遠の都」が放送される。同じく校友で俳優の堺雅人さんが遣唐日本人留学生の井真成役を演じ、シルクロードの起点であり終着地であった、長安(西安)の繁栄と落日、そして現代に迫る。「グローバリズムを展開した唐の時代の長安は、多彩な文化の融合が起きました。9.11テロ後の世界を生きる私たちが、そこから学ぶことも非常に多いと思います」(堅達さん)。
【URL】http://www.nhk.or.jp/silkroad/

(2005年12月8日掲載)

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First drafted 2005 December 8.