学び ふたたび

更上一層楼


法務研究科2年 矢上 浄子

矢上さん

 大学の夏休みに、バックパックで中国を訪れた。中国の人たちの力強さとひたむきさにただ圧倒され、自分もこの大陸に身を置きたいと強く願うようになった。自分でビジネスを起こす気概はなくても、対中投資のコンサルタントとして日中間の橋渡しができれば…。そう思い、中央大学法学部卒業後、1999年に北京市の中国政法大学大学院国際経済法修士課程に進学。さらに並行してアメリカのロースクールにて法学修士(LL.M)を取得。2002年にアメリカ・ニューヨーク州の弁護士資格を取り、同年、日本の大手渉外法律事務所に就職し、北京事務所に駐在となった。

  北京事務所では、中国に進出する日系企業に対するコンサルティングを主に扱った。当時の中国はWTO(世界貿易機関)加盟直後で、ビジネスモデルの多様化が急激に進み始めた頃。担当業務の内容もより高度かつ広範囲に及ぶようになった。これら高度なニーズに対応するには、一歩上の資格とスキルを身に付けることが急務と考え、日本のロースクール進学を決意した。

  学業と仕事の両立も考えたが、ロースクールでは3年間で100単位近くを取得するというハードなカリキュラムが組まれ、授業のための予習復習は必須。そしてエクスターンシップやリーガルクリニックなどの実践的な科目も多い。そこで、仕事を辞め、学業に専念することとした。

  ロースクールでの生活は、睡眠時間を削って毎日100ページ以上の判例や資料を読み込み、質疑応答中心のソクラテスメソッドの授業で教授や学生と議論をぶつけ合うという濃密なサイクルの繰り返しだ。概念の整理や判例の分析にとどまらず、一歩踏み込んで実務ではどうあるべきかを皆で議論し合う。ハードな毎日だが、その過程で得たものがいずれは将来のキャリアにつながるという強い手応えを感じている。また、多種多様なバックグラウンドを持つ同級生らと知り合えたのも大切な財産だ。日本の法曹の将来を担うという志を共有し、良きライバルとして切磋琢磨し合える仲間は何にも代え難い。

   卒業後は、ロースクールでの経験を活かし、中国を拠点に幅広く国際企業法務に携わる渉外弁護士を目指したい。また、渉外弁護士は何よりも体が資本。勉強の合間に学校のジムやプールに通い、趣味のトライアスロンのトレーニングも続けている。

  中国ではよく、有名な詩の一節「更上一層楼」(より高いところに上る)を「さらなるキャリアアップ」という意味で使う。中国式に言えば、社会人から学生への転身は、遠回りのように見えて実は一番確実な「更上一層楼」ではないだろうか。

(2005年10月6日掲載)

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First drafted 2005 October 6.