進路選択物語 |
弁慶さんとベンケイさん政治経済学部5年 山田 雅樹
留学先で作った1本のドキュメンタリー。それが私の原点になった。大学3年の頃、漠然と将来、映画に携わりたいと考え、世界的に有名な南カリフォルニア大学映画学科に1年間留学した。自分はビジネスとして映画に関われるのか、そして、作品を作る才能があるのかを知ろうとしたのだ。ハリウッドの映画会社でインターンをしながら、大学で米国人たちと映像作品を初めて作る等、映像を軸に幅広い活動をした。 後期に入り、自分の力を試すため、帰国直前の上映会に向けて、1人でドキュメンタリー制作に挑戦した。約半年間、多数の人々を取材する中で、人生に決定的な影響を与えた人物に出会った。彼はジム・ベンケイと言い、映画「スタンド バイ ミー」の助監督などをしてきた人物だ。 インタビューの終盤、彼はカメラを通して私に「俺たちハリウッドの人間にとって、お前の過去は意味のないものだ。大切なのは『今この瞬間に』何ができるかだ。お前は『今』何ができる? 今、この列車を止められるか? 『今』、魂を揺さぶる取材ができるか? それがハリウッドの映画人だ!」と鬼のような形相で叫んだ。そして、「日本の弁慶は俺の魂の祖先だ。弁慶は刀が自分だといった。俺の刀は映画だ。お前も刀を探せ」。その言葉で取材は終わった。 この作品は登場した人々の魅力によって、観客のスタンディングオベーションと賞をいただくことになった。私の方を振り返る観客たちを見つめながら「自分にはゼロから生み出す才能はないが、すでにいる魅力的な人々を探し、彼らの物語を伝えることならできるかも」と思った。そして、涙ぐみながら「私の刀はこれだ」と、映像の世界に進むことを決意した。 現在、私は日本での就職活動を終え、ロサンゼルスでドキュメンタリーを作っている。第一志望の企業には落ちたが、地元名古屋のテレビ局から内定をいただいた。正直、さまざまな迷いもあるが、「今」何ができるのかを自分に問い続け、留学中の自分に負けない作品を作っていきたい。 (2005年10月6日掲載) Copyright (C) 2005 Student Affairs Division, WASEDA University. All rights reserved.First drafted 2005 October 6. |