薦!

『スパニッシュ・アパートメント』監督・脚本 セドリック・クラピッシュ
DVD
  20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン(株)  価格1,780円(税込)


「異なるもの」から学ぶ

<評者>
花光 里香
(はなみつ・りか)
社会科学総合学術院助教授
1967年生まれ
2005年4月嘱任
担当科目: 異文化コミュニケーション論

 早大生の中には、計画通りの大学生活を謳歌している人もいれば、思い描いていたものとは違うと悩んでいる人もいるだろう。実は両方の皆さんに、この映画の主人公の台詞を贈りたい。「人は混乱の中から何かを得る」

  パリで暮らすグザヴィエは、エリートコースを突き進む大学生。卒業を目前に彼がスペインに留学したのは、自分の経歴に箔をつけるためだった。だがそこで彼を待っていたのは、国籍の異なる男女6人の学生との波乱に富んだ、しかし刺激に満ちた共同生活だった。混乱を極める日々の中、彼は時には当惑しながらも異文化と向き合い、やがて自分を発見していく。

  私が留学したのはグザヴィエとほぼ同じ時期である大学3年生の頃で、この映画の登場人物に当時の自分や友人の姿を重ね、懐かしさでいっぱいになる。異国でさまざまな文化的背景を持つ人々に出会い、価値観を揺さぶられる中で見えてきたのは、他ならぬ自分の文化、そして自分自身であった。また、異なるものへの深い理解は、対立や葛藤を通してこそ得られるのだということを学んだ。

  異文化というと外国の文化を思い浮かべることが多いが、私たちの周りは異文化で溢れている。ひとつの国にも、地域ごとに異なる価値観が存在する。男と女は永遠のテーマであり、世代間のギャップはいつの時代にも語られる。これらは実はすべて異文化なのだと気付かせてくれることもまた、この映画の大きな魅力である。

  最後に、この映画を観て「つまらない」と思ったら、何年か時が経ってからもう一度観てほしい。一度目に観た時にはない発見があったら、それはみなさんが異なるものに向き合い成長した証に違いない。

(2005年7月21日掲載)

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First drafted 2005 July 21.