わせだかいわい

大隈講堂のあの鐘を鳴らしていたのは…
株式会社 寺澤電機製作所 代表取締役社長 寺澤 栄治さん


寺澤 栄治さん
大隈講堂
1日6回おなじみの音を鳴らす4つの鐘
1日6回おなじみの音を鳴らす4つの鐘
これが文字盤の裏側
これが文字盤の裏側
寺澤 栄治さん

 1927(昭和2)年に落成して以来、早稲田のシンボルとなっている大隈講堂。高さ125尺(約38メートル)の時計塔には、早稲田の街に時を告げてきた直径2mを超える時計と4つの鐘がある。これらを長年にわたりメンテナンスしてきたのが株式会社寺澤電機製作所の社長、寺澤栄治さんだ。先代の頃を含めると早稲田とは戦前からの付き合いである。

  メンテナンスは毎月1回の点検作業、加えて年に1回、主に夏休み期間を利用してのオーバーホールを行う。「点検と、清掃と、注油、あと『正時』っていうんですけどね、時計が正しい時間になっているかを確認します」。窓が少なく薄暗い時計塔の中は、夏場はまるで蒸し風呂のようになる。「扇風機借りたんですけど、全然でね」。反面、冬の冷え込みは激しい。そんな気温差が大きい中にあっても、時計の歯車はほとんど伸び縮みしない。「すごくがっちりとしているんですよね。厚さもあるし。何百年って持つんじゃないかな」

  建物外側の文字盤の部分に異常があった場合はどうするのだろうか?「正面からやらないと直らないですね。でも針がずれるっていうことはまずないんですよ。ギアですから。オーバーホールの時に1度時計の針をはずしたことがありましたけど、出口がないので正面の文字盤のところを割って、足場をかけて、そこから外に出るんですよ。割ったところは中から貼って補修していくんです」。危険が伴う一大作業だが、「高いところはへっちゃらなんですよ」と笑顔で語ってくれた。

  もちろん作業には精密さも要求される。「鐘の音が良くない、響きが悪いって指摘されたことがあったんです。鐘を鳴らすのにはバネを使うんですけど、これがもうどこにもなくてね。いろいろ探してつけたんですけど、5mmぐらい短かったのかな? バネの伸ばし方によって鐘の叩き方が変わったり音が崩れたりするんですよ。気が付いて指摘されたのは音楽関係の方らしいですけど」

  「時計の針は作られた当時のまま。でも、腐食しちゃって、後側が少し壊れているんです。それも古い味の良さかもしれないですけどね。短冊文字もすてきだし、針もすごくいい。どの時計塔を見てもやっぱり、ここが一番だと思いますね」

  2005年3月、寺澤さんは大隈講堂時計塔のメンテナンスの仕事から退いた。「時計はもうほとんど扱っていないんです。だから時計専門のところに任せようかなって。先々までずっと保っていかなければならないものだから、10年やそこら自分が頑張ってもね。早めにバトンタッチしようかなって思ったんです。息子もこういう仕事は苦手なので」。

 時代がかわり、人がかわっても、時計の針はこれからもかわらず早稲田の街に歴史を刻んでいく。

(2005年7月21日掲載)

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First drafted 2005 July 21.