研究室探訪

ドアを開ければ「世界」につながる
 所沢キャンパス100号館7階
 スポーツ科学学術院教授 寒川恒夫研究室



これが「竜の頭」。実際に船の先につけられたものはカラフルに塗られている。
バリの先住民バリアガ族に伝わる格闘技「ムカレカレ」。流れた血はシバ神への供物になる。
バリの先住民バリアガ族に伝わる格闘技「ムカレカレ」。流れた血はシバ神への供物になる。
膀胱ボール。ラグビーボールとほぼ同じ大きさ。
膀胱ボール。ラグビーボールとほぼ同じ大きさ。
盤上遊戯。ひとつずつ木の実を穴に入れていき、最後の木の実を入れたところが奇数になれば自分のものになる。
盤上遊戯。ひとつずつ木の実を穴に入れていき、最後の木の実を入れたところが奇数になれば自分のものになる。
イランに今なお残る「ズールハーネ(力の家という意味)」とは、コーランを唱えながらトレーニングにいそしむ場所のこと。そこで使われるトレーニングセット。
イランに今なお残る「ズールハーネ(力の家という意味)」とは、コーランを唱えながらトレーニングにいそしむ場所のこと。そこで使われるトレーニングセット。

 とにかく目立つのが、先生が在室ならドアの外に、外出中なら室内に置かれるという、大きな木彫りの竜の頭。中国で作られたレース用の船の先に付ける装飾品で、これは未完成のもの。「何回か倒しちゃったから髭がとれちゃって。牙もちょっと欠けてるかな」。スーツのズボンにサスペンダーがトレードマークの寒川先生は竜の頭をなでなで。先生はスポーツ人類学がご専門で、特に民族固有の「エスニックスポーツ」に造詣が深い。研究室内は先生が世界中から集めたコレクションで賑わう。ユニークなのが“膀胱ボール”。欧米では古くから極めてポピュラーな遊び道具。牛の膀胱に息を吹き込み膨らませるとかなり弾み、強度を増すには皮のカバーをつければいい。これが発展し、現在のラグビーボールができた。

  「スポーツというと野球やサッカーを思い浮かべますが、もともとは『気晴らしする』とか『遊ぶ』という意味なんです。だから盤上遊戯もスポーツの一種なんですよ」と、見せてくれたのが、アフリカでは「マンカラ」と呼ばれるゲーム。ふたりで対戦、相手の木の実をなくせば勝ちだ。盤がなくても、地面に穴を掘ればどこでもできる。

  カナダの先住民イヌイットが作ったアザラシのボールは獣の匂いが微かに残る。スペインの「ペロタ」は籐製の丸くカーブした装具を腕につけボールを打ち合う。見た目はまるでカマキリの様。「以前は素手で硬球を打ったんです。痛さに耐えることが男らしさだと誇りを持っていたようです」。メキシコの「トラチトリ」はボールを腰で打つスポーツ。重みのあるゴム製のボールを打つ。うまくできれば芸術的…と、研究室にあるものだけでも枚挙にいとまがない。

  「学生の皆さんにはカルチャーショックを体験してほしい。異文化理解は自文化理解です。衣食住でも別の仕方をする人たちがいると知れば、自分の文化をあらためて知ることができます」。寒川先生の穏やかな語り声が研究室に心地良く響く。魅力的な未知の世界がここに広がっている。

(2005年6月16日掲載)