よく分かる!

研究最前線 よく分かる 2足歩行ロボット
世界初! 人を乗せた階段昇降歩行に成功!


 理工学術院高西淳夫研究室と株式会社テムザック(ロボット開発会社、福岡県北九州市)は、福岡市、ロボット産業振興会議(福岡県、北九州市、福岡市による共同運営)の支援を受けて汎用二足歩行ロボット「WL−16RII」(Waseda-Leg No.16 RefinedII)を開発した。早稲田大学ヒューマノイド研究所福岡分室を拠点に開発され、人間を乗せて階段昇降歩行に成功したのは世界初である。今回は開発にあたってのポイントと今後に向けての取り組みをお伝えしよう。

汎用二足歩行ロボット『WL-16RII』
▲ 汎用二足歩行ロボット『WL-16RII』
【パラレルリンク機構】
 御神輿を六人で担ぐように、六本のシリンダーが並列に並んだ形で片足を動かすメカニズム(上写真参照)。動く範囲は狭いが、大きな力を出せる特徴を持つ。
さまざまな利用が可能な二足歩行ロボット イメージ図
▲ さまざまな利用が可能な二足歩行ロボット イメージ図
WL-16RII研究発表会にて。左端が高西教授。
▲ WL-16RII研究発表会にて。左端が高西教授。
ヒューマノイド研究所福岡分室での研究の様子
▲ ヒューマノイド研究所福岡分室での研究の様子

汎用二足歩行ロボットの可能性

 ロボットの全体像は、上半身がなく脚と腰部のみで構成されている。開発コンセプトは、さまざまなシステムの搭載、人間の搭乗も可能な汎用移動二足歩行ロボット。つまり、ユーザーがロボットの上半身に何を乗せるかによって、さまざまな利用方法がある。人間型ロボットを搭載すれば二足ヒューマノイドロボットになり、運搬物を搭載すれば台車としての利用、ユーザーが乗れば乗り物としても利用が可能である。今回発表された「WL―16RII」は、これらの機能に加えて、人を乗せての階段昇降が可能になった。今後もさまざまな目的での利用が期待される。

「WL―16RII」開発のポイントは?

 従来の「WL―16RII」では、脚の機構に出力や剛性の高いパラレルリンク機構※注を採用し、最大約94kgの重量物を積載しての歩行が可能だった。しかし、パラレルリンク機構は可働範囲が狭く、階段昇降などの脚を広い範囲で動かす動作は不可能に近いと考えられていた。そこで今回は、足を振り出す方向に腰をねじることにより可働範囲を拡げ、実際に人を乗せての階段昇降二足歩行が可能になった。

  「パラレルリンクは高パワーで高精度といった利点がありますが、可働範囲が狭く、その制限の中で階段の昇降をするための脚の動かし方に苦労しました。具体的にはロボットの腰を水平面内でゆっくり回転させることで実現しました。今後は少々の未知の凹凸があっても安定して歩けることや、搭乗者が簡単にロボットを運転できることなどを目指していきます」とさらなる目標を掲げる高西教授。今回の成功は二足歩行ロボット実用化に向け、大きな一歩を踏み出したことになる。

早稲田大学における人間型ロボット研究の役割

 本学では、学術横断プロジェクトとしてWABOTプロジェクトを1970年に開始して以来、ほぼ10年ごとに最新の技術を統合したロボットを製作してきた。このような実績に基づいて、「高度情報化社会における人間」と「機械」の新しい関係を築くための研究開発を促進するために、2000年4月にプロジェクト研究所として「ヒューマノイド研究所」が設立された。中でも、高西淳夫研究室では、人間のメカニズムの工学的解明と、人間と共生するヒューマノイドロボットの開発を主眼とし、物理および心理を統合したメカニズムに関する研究を行っている。“ヒューマノイド”とは人間の生活環境で活動するための人間型ロボットである。工業生産ばかりでなく、家事、高齢者介護、エンターテインメントなど日常生活を快適にする役割を担う。しかし、そのためにはユーザーと思考や行動を共有しなければならず、さらに、特別な使用訓練なしに機能することが求められているため、まだまだ多くの研究課題が残されている。

地域社会との連携を図った取り組み

 今回の成功の要因の1つに、福岡市との連携がある。福岡市は2003年に「ロボット開発・実証実験地区」に認定され、複数の実験をサポートするなどロボット関連産業振興に積極的に取り組んできた。その後、昨年11月に本学ヒューマノイド研究所との協定締結により、市内のロボット体験スペースロボットスクエア内に「早稲田大学ヒューマノイド研究所福岡分室」が設置された。この福岡分室を拠点に、「ロボット特区」(規制緩和により、公道でロボットを動かす実験が可能な地域)を利用した実証実験が行われ、今回の「人を乗せた二足歩行ロボットによる階段昇降」が成功した。地域社会や企業の協力があったからこそ今回の成功につながった。今後も「テムザックさんのようなロボットベンチャー企業やロボットビジネスに意欲的に参入しようとしている企業と連携することで、高齢者・障害者をサポートする社会技術の一翼を担えればと思っています」と高西教授は語ってくれた。

(2005年6月2日掲載)

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First drafted 2005 June 2.