特集

ストップ ハラスメント


 2005年4月、本学は「ハラスメント防止委員会」(以下、防止委員会)を発足させた。これは従来からあった「セクシュアル・ハラスメント情報委員会」と「人権教育委員会」を統合し、機動的かつ効果的な組織運営を目指して発展的に改組したもの。これを機に、本学は従来からのセクシュアル・ハラスメント防止の取り組みに加え、大学という風土に特有のアカデミック・ハラスメント、さらに組織の中で起こり得るパワー・ハラスメントをも含めたハラスメント全般の防止に向けて、本格的な取り組みを開始した。

  重大な人権侵害であるハラスメント。ハラスメントのないキャンパスを作るためには、大学の構成員一人ひとりにハラスメントに対する認識と他者への配慮を持ってもらうことが何より重要。防止委員会はその実現を目指して活動を行う。「これはハラスメントでは」と思い悩むことがあったら、防止委員会に相談してほしい。

ハラスメントは「重大な人権侵害」であるということを理解しよう

  日本でもよく耳にするようになったハラスメントという言葉。英語のharass(悩ます、苦しめる)の名詞形であるharassmentは、まさに相手を悩ませたり、苦しめたりする問題行動。本学の「ハラスメント防止ガイドライン」によると、それは「性別、社会的身分、人種、国籍、信条、年齢、職業、身体的特徴等の属性あるいは広く人格等に関する言動によって、相手方に不利益や不快感を与え、あるいはその尊厳を損なうこと」と定義されている。一言で言えば、ハラスメントは人権侵害。人権を侵害されてもいい人間など、この世に存在しないという基本をまず再認識してほしい。

しない・させないハラスメント


 とりわけ、大学という環境下で発生しうるハラスメントとして、防止委員会が取り扱いの対象とするものは、次の3種類。
(1) セクシュアル・ハラスメント
(2) アカデミック・ハラスメント
(3) パワー・ハラスメント

  これらはハラスメントがどのような場面や状況下で起こるかによって分類されるが、実際には複合的に絡み合うこともあるので、あまり厳密な区分に気を取られる必要はない。むしろ、これらのハラスメント全般について、「あってはならないこと」という共通認識の下、自らが「しない」という自覚を持つと同時に、周囲にも「させない」環境を作り出すことが重要だ。

  キャンパスで起こる可能性が高いとされるハラスメントについては、下表を見てほしい。行為者と被害者、双方が本学に所属する場合はもちろんのこと、一方のみが本学に所属する場合でも、防止委員会は対応する。

  ハラスメントとされる行為は、「誰が見ても明らかなハラスメント」というものから、「人によってはハラスメントと感じるかもしれない」というものまで多種多様。しかし、どんな些細なハラスメントも放置し続けることはそれが蔓延する土壌を生み、深刻なハラスメントの誘因ともなりかねない。

  感受性には個人差があり、ハラスメントは多数決で判断する問題ではない。同じ行為をまったく気にしない人もいるから大丈夫というわけにはいかない。受け取る人がどう感じるかが重要である。気になる人が一人でもいればハラスメントの可能性があるといえる。悪意はなく、認識不足によって、ハラスメント行為をした場合には、素直に非を認め、謝罪すること。そして、2度と同じ行為を繰り返さないことが大事。このような自省と行動改善の積み重ねがハラスメントのないキャンパス、社会を生み出していくのだ。

社会に出る前に身に付けておきたい、ハラスメントへの深い認識

 在学生の多くは数年のうちに、社会に巣立っていくことだろう。社会において、悪質なハラスメントを行った者がどのような社会的制裁を受けているか、その現実に目を向けてみてほしい。それまで長年の努力によって築いてきた地位も名誉もすべて棒に振ることもありうる。学生のうちに、ハラスメントに対する深い認識、他者の人権を尊重する姿勢、他者を思いやる気持ち、軽率な行動を控える自制心などを身に付けてほしい。

  さらに、自分だけがハラスメントと無縁であればよいというものではない。慢性化したり深刻化したケースでは、被害者は人間不信、自信喪失、うつ症状等、メンタルヘルス上の重大なダメージをこうむるだけでなく、胃潰瘍、睡眠障害等の身体症状も引き起こし、時には就学や就労の継続を断念せざるを得ない事態に追い込まれることもある。ハラスメントとおぼしき言動に気付いた周囲の人間が行為者に注意を促すなど、構成員相互に配慮が働くようなコミュニケーション環境が生まれれば、事態の慢性化や深刻化を未然に防ぐこともでき、状況は大きく変わるだろう。一人ひとりの自覚がキャンパス全体の自覚となって、大きな変化が起こることが期待される。

困ったときは一人で悩まず、防止委員会の相談窓口を利用しよう

 防止委員会の活動の二本柱は、
(1) 防止のための諸活動
(2) 被害者の救済、問題解決のための相談対応、調整。

  (1) については、講演会の開催や教職員への定期的な研修など教育活動を通して構成員の啓発を進めていくと同時に、調査活動で実態と問題点を明確にし、広報活動で意識改革を呼びかけていく。

  (2) については、防止のための諸活動にもかかわらずハラスメントが発生した際に、その解決に向けて最善策を導き出していく。

  もしもハラスメントに遭い、苦しんだとき、一人で悩んだり、家族や友人に相談したりしてもなかなか解決の糸口が見つからないこともあるだろう。そんなときは、ぜひ防止委員会に相談してほしい。「感じやすいだけだから」とか「自分が悪いかもしれないから」とあきらめることはない。

  防止委員会室の相談窓口(24−8号館 2階)にはまず相談者の話を聴く役割のインテーカー(相談員)が常駐していて、ハラスメント被害で悩む人々の相談に真摯かつ親身に対応する。以下、一般的なプロセスを紹介しよう。

A.電話やメールなどでの相談

 防止委員会では、電話、ファックス、メール、手紙などの相談にも応じている。この段階では匿名でも構わない。直接インテーカーに対面しない形で、ファーストコンタクトをとった方が安心というケースもある。ここでの相談対応だけで解決の糸口が導き出されることもある。

B.来所による相談

 きちんと面談したうえで、じっくりと解決策を模索した方がよいと相談者本人が判断した場合は、事前予約をとったうえでの来所相談となる。予約をすることで他の人とかち合わず安心して相談することができる。プライバシー保護には最大限配慮している。ここではまずインテーカーが話を聴く。この段階で気持ちの整理がつき、納得できる解決策が導き出されるケースもある。

C.苦情申立書の提出

 相談だけでは納得できず、相手方への何らかの対応を求めたい場合には申立書を提出し、苦情申し立てをすることができる。防止委員会はガイドラインにもとづき、苦情処理案件として対応可能であれば迅速に対応する。

D.苦情処理

 苦情処理の対象案件と判断された場合には、調整手続きによる具体的解決策の検討に入る。調整では、公正な立場の調整委員が相談者、相手方双方と個別に面談を行い、事実関係の確認を行ったうえで、相手方に申立人の要望を伝えながら、当事者双方の間の関係を調整する。その結果、状況が改善され、相談者が納得すれば解決となる。

  なお、以上の手続きとは別に、防止委員会は、ハラスメントが重大で懲戒処分を行うことが適当であると認めたケースについては、加害当事者の所属する箇所長に対して処分の勧告をすることができる。

相談者の保護が大前提

 上記のプロセスにおいて苦情申し立てを行った相談者が、相手方から脅迫、威圧、報復等の不利益扱いを受けることがないよう防止委員会は厳格に対処し、相談者を保護する。そのような不当行為があった場合には、防止委員会が厳格に対処する準備がある。当然のことながら防止委員会のメンバーには守秘義務があり、相談内容が外部に漏れて相談者自身の立場が悪くなることはないので安心してほしい。

  防止委員会はハラスメントがなくなり、当事者間の関係が修復されるよう総力を挙げ、問題解決に向けて真摯に取り組んでいる。とは言え、大学内での相談には踏みきれない人もいるかもしれない。学外での相談窓口の例も委員会HPに掲載しているので参考にしてほしい。
【URL】http://www.waseda.jp/stop/


講演会でハラスメントに対する理解を深めよう!

 防止委員会発足を記念して、下記のとおり講演会を開催する。
多くの学生、教職員の皆さんに参加してほしい。

ハラスメントのない大学をめざして―早稲田大学の新しい取り組み―
日時:6月10日(金) 13:00〜16:00(開場12:30)
会場:
 小野記念講堂 (西早稲田キャンパス27号館小野梓記念館地下2階)
対象:学生・教職員 (予約不要・一般来聴歓迎)
講演:
「セクシュアル・ハラスメントとアカデミック・ハラスメント」
 講師:上野 千鶴子 氏(東京大学人文社会系研究科教授)
「セクシュアル・ハラスメントとパワー・ハラスメント」
 講師:金子 雅臣 氏(労働ジャーナリスト)
「早稲田大学としての新たな取り組み」
 講師:石田 眞 氏(ハラスメント防止委員会委員長、本学法務研究科教授)



(2005年6月2日掲載)

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First drafted 2005 June 2.