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 環境総合研究センター「先進電動マイクロバス交通システム」完成!


大聖泰弘理工学術院教授
大聖泰弘理工学術院教授

 環境総合研究センターは、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)による「平成16年度民生部門等地球温暖化対策実証モデル評価事業」の採択を受け、独立行政法人交通安全研究所と昭和飛行機工業(株)と共同で「先進電動マイクロバス交通システム」の開発に取り組んできた(研究代表:大聖泰弘理工学術院教授)。この度、日本初の電動マイクロバスを含む一連の交通システムが完成し、4月22日、大隈講堂前で記者発表が行われた。その内容、特徴についてお知らせしよう。



▲ 排気のない電動バスにはマフラーがない!

NEDOのモデル事業って?

 NEDOとは、経済産業省の所管で、日本の産業技術とエネルギー・環境技術の研究開発と普及を推進する中核的な機関。日本の未来社会のため優れた研究成果を生み出すことを目的に、産学官の総力を結集させたさまざまな研究開発をトータルコーディネートしている。今回、採択されたNEDOの事業は、民生、運輸部門において、地方公共団体、事業者等の各主体が協力して取り組むことにより相当程度の省エネルギーが見込まれ、社会システムへの確実な定着を狙うプロジェクトを対象としている。今後の日本の省エネルギー施策への直結を目指した「モデル事業」なのだ。

人と地球にやさしい「先進電動マイクロバス交通システム」

「交通弱者」の移動手段確保を目的の1つとする電動マイクロバスは、車椅子利用者にもきめ細かく対応。車椅子の乗車口は通常の入り口と後部の2箇所に設置。人にやさしい低床設計もうれしい。
▲ 「交通弱者」の移動手段確保を目的の1つとする電動マイクロバスは、車椅子利用者にもきめ細かく対応。車椅子の乗車口は通常の入り口と後部の2箇所に設置。人にやさしい低床設計もうれしい。

 今回のプロジェクトが対象とする地域は、移動手段として主にマイカーが利用されている地方の中小市町村。このような地域では、まとまった数の利用者がいないため、公共交通機関の普及が立ち遅れているのが現状。1人あるいは数人で1台のマイカーでは、地球規模で見た場合、エネルギー使用に無駄があり、汚染物やCO2の排出量から見ても環境にやさしいとは言い難い。また、このような地域では、高齢者や障害者、子供などいわゆる「交通弱者」の移動手段確保も重要な課題。そこで、このプロジェクトでは、この2点を解決するため、CO2や大気汚染物を排出しない電動方式とし、かつ狭い道でも運行可能な小型バスに着目し、利便性の高い未来型新交通システムを開発することとした。

さまざまな技術を駆使した、先進デマンドバスシステム

 その交通システムとは、どのようなものなのだろうか。

  まず、バス利用者は、乗車希望の旨を携帯電話で運行管理センターに連絡。知らせを受けた運行管理センターは、GPS等によりバスの位置や乗客数、電池残量等を把握し、バス運転者に指令を出す。同時に、運転者とバス利用者に、最適経路や到着予定時刻、使用電力等の情報を速やかに発信。その後、バスは最適経路を通って利用者のもとへ向かい、利用者はバス到着の予定を知り、安心して待つという仕組みだ(下図参照)。

  一方、バスについては、コストが日中の3分の1という夜間電力を利用。フル充電の状態で、時速25kmの場合、100km走ることができる。走行中は、主要停留所に埋め込まれた装置から「非接触充電方式」により、使った分だけを適宜補充する。また、バスには特注の小型バッテリーを搭載。大聖先生によると、1990年代に電気自動車が「エコカー」として脚光を浴びたものの普及しなかった大きな要因として、バッテリーが重くスペースをとり、充電にも時間がかかることがあったとのこと。かつての電気自動車は「バッテリーを運んでいるかのごとく」だったが、技術の進歩がその小型軽量化を実現し、電動バスをも可能にした。

  なお、今回の開発には、それぞれの部分の技術開発自体には労力、費用ともほとんどかけられていないことも特徴の1つ。すでに開発済みのさまざまな最新技術が各所に活用されている。大聖先生の長年にわたる車の研究と、幅広いネットワークがあってこその成果だ。

この秋、本庄で実証実験

 この交通システムは、11月から今年度いっぱい、埼玉県本庄市の公道で実証実験が行われる。新幹線本庄早稲田駅、本庄キャンパス、JR本庄駅を結ぶ約10kmを運行する予定。すでに地元NPO団体から、利用者としての意見や感想を伝えたいとの申し出があり、大聖先生は「大歓迎。ぜひ、地元の方々の意見を取り入れながら発展させたい」と語る。

  さらに大聖先生は、「車の開発とは、理想の車を作って終わりというわけではありません。実用化され、便利で環境に優しく使われてこその車です。今回のシステムも、われわれが想定している地方の市町村だけでなく、空港や再開発地区、観光地など、さまざまな地域において導入の可能性が考えられるでしょう。私たちは、システム構築にあたりアンケート調査を実施し、各地域の交通システムの現状について詳細なデータも持っています。今後、実証実験で明らかになるであろう課題を解決しながら、導入と普及を提案していきたいと考えています」と、抱負を熱く語った。


運行システムの図
▲ 運行システムの図

(2005年5月26日掲載)

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First drafted 2005 May 26.