現場レポート

音楽でつながる空間、時間、そして心
 ―音楽ボランティア―


社会科学研究科修士課程1年 伊藤 襟香

コンサートの様子(左から3人目が筆者)
▲ コンサートの様子(左から3人目が筆者)

 「ふだんアカペラに馴染みのない人たちの前で、歌ってみない?」というWAVOC(平山郁夫記念ボランティアセンター)の呼びかけから今回の活動は始まった。

  アカペラは、何も特別な環境を必要としない身近な音楽。メロディーも和音もベースもドラムもすべてが声だけ。音と自分たちの中の何かがハマる瞬間(そう頻繁にあるものではないが)、驚くほどの音の厚みと心地良さが生まれる。それは単なる自己満足ではなく、聴き手にも確実に伝わる。今回の活動でもそれを感じることができた。

  これは私たちの所属するサークル「ストリート・コーナー・シンフォニー」の先輩であるゴスペラーズが昨年12月に行った「音楽活動ボランティア支援チャリティライヴ」での収益をもとに行われる「音楽活動を通して感動を分かち合うボランティア活動」の第一弾として実現した企画。3月16日、私たちが訪れた三芳中学校は、千葉県の房総、安房郡三芳村という自然豊かな地にある全校生徒が140人ほどの学校。最初のうちは硬い表情で、舞台の上に立つ私たちを物珍しそうに見上げていた生徒たち。曲間にはさまざまなコーナーを設けて交流を図ったのだが、赤くなって黙っていたり、照れ臭そうにしていたり…。でも、それは単に恥ずかしがっていただけで、本当はすごく楽しんでくれていたことが徐々に分かってきた。

  最後に会場全体で一つの曲をハモってみるという試みにチャレンジ。即興だったので難しかったと思うのだが、瞳をキラキラさせて、アカペラを体感している彼らの姿を目の当たりにした。その光景が何よりうれしかった。ステージの後、一緒に記念写真を撮ったり、話をしながら彼らの生の声を聴くことができた。私たちのつたない演奏でも、とても喜んでもらえた。素敵な体験をさせてもらったのは私たちの方なのに。これが本当にボランティアなのか? 何とも説明しがたい複雑な気持ちであった。

  今でも「音楽ボランティア」と言うと何か気恥ずかしい。誰かのためにとか、そんな大それた想いは私たちにはない。ただ私たちが歌い、そこに生まれる音楽や歌で、聴き手と同じ空間や時間を共有できたら、そしてそれが心満たされるものとなるなら、この上ない幸せだと思う。


中学生たちとの記念写真
中学生たちとの記念写真

(2005年4月28日掲載)

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First drafted 2005 April 28.