OB・OGインタビュー

ゴスペラーズ


ゴスペラーズ
 昨年12月25日、記念会堂において本学のアカペラサークルStreet Corner Symphony(以下、SCS)出身の人気ヴォーカルグループ、ゴスペラーズによる「音楽ボランティア活動支援チャリティライヴ」(平山郁夫記念ボランティアセンター(以下、WAVOC)主催)が行われた。
 1994年12月21日、在学中にメジャーデビューを果たした彼らにとって、この日のライヴはまさにデビュー11年目の新しいスタートを飾る記念すべき門出となった。
 ライヴの余韻も冷めやらぬ昨年暮れ、彼らの熱い想いをじっくり語ってもらった。
チャリティライヴの模様
▲ チャリティライヴの模様。MCでは「卒業式では総代しか登れない壇上に立てて嬉しい」というトークも。
村上てつやさん
村上てつやさん
酒井雄二さん
酒井雄二さん
黒沢薫さん
黒沢薫さん
北山陽一さん
北山陽一さん
安岡優さん
安岡優さん
「普通」なんて無いんだ!―サイン色紙

<僕らの原点である早稲田の風景、僕らの愛校心を歌に託して>

―今回、チャリティライヴを早稲田で行うにあたり、どのような意気込みで臨まれたのでしょうか。
村上 今回は、とにかくゴスペラーズがどのように始まったのかを理解してほしい、早稲田で歌い出した時の僕らを自ら思い出し、その空気を伝えたいという気持ちで臨みました。WAVOC主催ということもあり、単に歌ってステージから語りかける以上のプレゼントをしたいと考え、この日のために作った「Street Corner Symphony」という曲を会場の皆さんと一緒に歌いました。感慨深かったですね。曲名は僕らのサークルの名前ですが、大袈裟に言えば「街角で歌い出すという一つの文化」、そこに感化されて僕らは歌を始めたということを伝えたかった。記念すべき11年目の最初の仕事としてその原点に戻ってくる、もう一度その場所に立ってみる、まさに僕らにとって象徴的な意味を持たせることができました。
 この曲は5人全員でアイデアを出し合いながら、本番直前の10日間で仕上げました。でも、この過程がまさに10年前、懐かしの第二学生会館で、この5人のメンバーで知恵を絞りながら最初のオリジナル曲を作った時の風景と図らずも重なり、眩しい想い出がよみがえる楽しい作業となりました。
安岡 僕らの記憶に残っている「早稲田の風景」を歌詩に盛り込みたいと思いました。携帯電話もない時代、学生は街に依存しているところがあった。キャンパスの片隅や馴染みの顔が揃う喫茶店とか。誰かに会わないかなと思って街をぶらぶらすれば誰かに会えたあの頃、僕らのサークルは大隈銅像脇の7号館前ベンチに誰かしら座って、実質的に占拠していた(笑)。
村上 通年出店状態。大学が知ったら許さないよね(笑)。
安岡 そこへ行けば誰かがいるという安堵感。その想いを盛り込みたくて、歌い出しを「覚えているかい ブロンズ色の 横顔を見上げたあの場所で」としました。
酒井 僕らの愛校心というのはそんなものかもしれません。インターネットも携帯もない時代に仲間のいる「場」、音楽をやる「場」を提供してくれたことに大学への恩を感じるような気持ちがあります。大隈講堂前も特別な空間でしたね。発声練習している奴や、妙にサックスの巧い奴がいたりして。
黒沢 まだ何者でもない者たち独特のエネルギーとパワーに満ち溢れていて、面白い空間だったな。
村上 日曜日、大学が外貸しの試験会場となっていた時に講堂前で大声で歌っていたら、守衛さんに「試験中だからやめてくれ」って言われて、「大学の金儲けのために俺の歌をやめろって言うのか!」と反骨精神むき出しで抵抗したりして…(笑)。思えば、それが大学との確執を感じた瞬間だったのかも(笑)。今回のライヴ終了後、副総長からの謝辞を受けて握手を交わして、ついに大学との歴史的和解を果たしたわけです(爆笑)。

―SCSは広く他大生にも門戸の開かれたサークルだったのですね。
黒沢 高校の同級生だった村上に誘われてSCSに入った僕は、自他ともに認める「誰よりも早稲田を愛する他大生」でした。あまりに早稲田が楽しくて、渋谷へは足が遠のき、とうとう中退してしまい、その後、早稲田に住んだりもして…。当時、僕の大学ではアカペラなんて夢のまた夢。アカペラサークルとして先駆的存在であったSCSには、真面目に歌いたい人がここなら歌えるということを聞きつけて、いろんな大学から集まってきていましたね。
北山 3年になって初めて、早稲田にアカペラサークルがあると知り、湘南藤沢キャンパスから通っていました。本格的にアカペラをやりたかったので、SCSに参加できて、本当にありがたかった。僕が早稲田で活動したことが縁で、情報交換が行われ、その後、慶應にもアカペラサークルができるきっかけともなり、結果的に早慶の架け橋になれたかなと思っています。

<大学は何かを見つけに行くところ、何かを奪いに行くところ>

―在学中からプロ活動を始められた皆さんですが、将来の進路についての迷いはなかったのですか。
村上 デビュー前から自分たちの歌に応えてくれる人が間違いなくいるという自信は、過信も含めてはっきり持っていました。そういう自信を持ちたいがために、早くからサークルの枠から飛び出して、ライヴ活動等で学外に対して確かめてきたんですけど。「周りは認めないけど、俺たちは最高の音楽をやっているんだ」というスタンスはナンセンスだと決めて、「何をやったら受けるか」を学生のうちからリサーチしていた。自らの活動をとおして「迷い」というハードルを低くしてきたんです。
酒井 メジャーデビューするかしないかという場面では多少悩みましたが、周りの仲間が芝居や物書きの夢を諦めて就職していく中で、チャンスがある人間、続けていける道がある人間はやらなければ、辞めていった人に申し訳ないという思いがありました。また、早稲田でいろいろな「怪人」に出会い、冒険をするカッコ良さや潔さも早稲田らしくていいかなって。
黒沢 確かにオリジナルメンバーの中には就職の道を選択し、メジャーデビュー直前に辞めていった奴もいましたが、彼らが続けていてもデビューできたという保証はないし、その時の決断を後悔している奴はいないと思います。今回のライヴにも来てくれましたが、それぞれ楽しそうに生きています。

―今、進路選択に悩む後輩に何かアドバイスがあればお願いします。
北山 進路選択にあたって、親の方針や意向がどうこうと言うのは甘えでしかないと知っておいてほしいですね。基本的に親は子どもに幸せになってほしいと思っているはず。そのために大学にやっていると親は言う。でも、自分の幸せは親が用意するものでなく、自分で見つけるもの。「俺はこれを見つけたんだ」ときちんと親にプレゼンできれば、そのことまで否定することはないと思う。何らかの抵抗はあるにせよ、それくらいの壁を越えられなければ、自分の幸せをつかむことなんかできない。
黒沢 最近、後輩たちから相談を受けると、就職の年齢制限を意識して「25歳までは頑張れば」と現実的なアドバイスをしています。最初から人生の選択肢を狭めることもない。確かに「音楽で食えるようになりたい」と言われて「よし頑張れ」とは言えない。実力だけではうまくいかない現実があるのがこの世界。自分たちはアカペラという形態も、当時「無風」だったことも含めて、ものすごくラッキーだった。
北山 僕らのように結成当初からプロとして恵まれた環境にいた者には、長年結果が出せないまま頑張っている人の苦労は語れないのですが、とにかく「自分の心が折れるまで頑張るべき」と思います。
村上 そもそも大学や誰かが何かしてくれるなんて思うのは間違い。
安岡 大学というのは何かをしてくれるところではなく、何かを見つけるところ、奪いに行くところ。大学にある知識っていうのはすでに誰かが出した自己表現だから、結局ただそれを持ち帰るのでは真似でしかなくて、その中から自分にとっての自己表現を見つける場が大学だと思うんです。
酒井 例えば僕も、アカペラをお手本にアカペラをやるのではなく、他の音楽サークルや劇団、お笑いなどたくさん経験して集約しようとしていました。目指すものだけに実直に取り組むようでは縮小コピーばかりになっちゃう。学生時代というのは、他人がやっているものも含めていろんなものを見て、吸収できる時期だから、必要分以上の興味を持って行動することで、結果的に100%のものになるのではないかと思う。

<緊張感を持って、坂を上り続ける>

―10年を振り返り、皆さんが今まで貫いてきたこと、今後目指していく方向はどのようなものですか。
村上 僕らは「常に緊張感を持とう。少しでも弛んだら、今の状態なんて一瞬でなくなるんだよ」という意識を全員で持ち続けてきました。
また、「5人が皆リードヴォーカルも取れて、作詞作曲もできて」ということを言い続けてきて、それを実際に世の中に示していくことに対して、メンバー同士、良い意味でプレッシャーをかけあってきた。結果さえ出せばOKな世界だからこそ、むしろ過程にこだわりたかったのです。
北山 過去10年の最大の成果は個々人が「自分の限界のちょっと先」を目指す姿勢を固められたことです。グループとしてより成長するため、それぞれが自分の得意なものを少しずつ向上させていく努力を怠らなかったことが大きい。
安岡 この先も、皆に受け入れられる曲を作り続けたいと思える心情であることが重要ですね。
村上 とにかく、デビュー以来の僕らのキーワードは「坂を上り続けること」。ここが頂上だなんて思ったらそこから先の成長はないのだから。そして、これからも…。

■ゴスペラーズ
 本学の実力派アカペラサークルStreet Corner Symphony出身の村上てつや(96年本学教育学部卒)、黒沢薫(國學院大学文学部中退)、酒井雄二(97年本学第一文学部卒)、北山陽一(98年慶應義塾大学環境情報学部卒)、安岡優(98年本学教育学部卒)からなるヴォーカルグループ。94年12月21日、「Promise」でメジャーデビュー。
 2000年リリースの「永遠に」が翌年にかけてロングヒットとなり大ブレイク。2001年、「ひとり」で日本音楽史上初めて、完全アカペラ曲のシングル・ベスト3という快挙を遂げ、その人気・評価とも確固たるものになった。

(2005年1月20日掲載)

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First drafted 2005 January 20.