現場レポート |
小泉八雲と語り文学の今日的意義
社会科学研究科修士課程2年 辻村 佳宏 今年は小泉八雲没後百年にあたり、全国で小泉八雲の関連行事が開催されている。小泉八雲がその人生の最晩年をすごした早稲田大学では、「没後百年記念国際シンポジウム 混淆文化の国 クレオール日本」が催された。開催された9月26日は、百年前に八雲が息を引き取ったその日でもある。 第1部の基調講演では、作家でありコロンビア大学教授であるマリズコンデ氏によって、グローバル経済が世界・文化のハイブリッド化を引き起こし、古き良き時代のエキゾチシズムに死をもたらしていることが示唆された。 第2部のパネルディスカッションでは、鶴岡真弓教授(立命館大学)、齋藤孝教授(明治大学)、ポール・スノードン教授(早稲田大学)をパネリストに招き、司会は、本シンポジウムを主催した国際言語文化研究所所長の池田雅之教授によって執り行われた。消え行くであろう日本のエキゾチシズムを耳で知覚した八雲の、独特の身体性、精神性がテーマとして展開された。目には見えないさまざまな「気配」(エートスや感情、幽霊)を感じ取ることの大切さを表現した八雲文学の、その今日的意義が提示された。 八雲の魅力が紹介されたパネルディスカッションが終わり、八雲の作品に触れたくなる頃合に第3部が開かれた。舞台朗読の幸田弘子氏とその門下生による八雲文学の朗読である。終日音声調整室にこもっていた私も、朗読が始まるや、生身で会場の雰囲気を体感するべく、調整室を飛び出した。朗読者の声色と、耳を傾ける来場者の静かな興奮が会場の一体感をつくりあげていた。語り手と聴き手によって創造され完成されるものこそが、八雲が耳にし、筆で書きとめた「語りの文学」であると実感させられた。 八雲の文学は、ぜひ朗読をお勧めしたい。「気配」を感じ取ることに熟達すれば、豊かな心が培われるだけではなく、幽霊や妖怪と出会えること請け合いである。
(2004年10月28日掲載) Copyright (C) Student Affairs Division, WASEDA University. 2004 All rights reserved.First drafted 2004 October 28. |