よくわかる!

研究最前線 よく分かるCOE(8) 
 「開かれた政治経済制度の構築」

拠点リーダー 藪下史郎政治経済学部教授
拠点リーダー 藪下史郎政治経済学部教授
GLOPE-RMOの概念図
GLOPE-RMOの概念図

船木由喜彦政治経済学部教授
田中愛治政治経済学部教授
田中愛治政治経済学部教授
 世界最高水準の拠点作りを目的とした「21世紀COEプログラム」として、今年度採択され活動を開始した「開かれた政治経済制度の構築」。いったい何が「開かれ」、どのような研究が行われているのか。同拠点事務局長の船木由喜彦政治経済学部教授、同拠点メンバーの田中愛治政治経済学部教授に伺った。

専門化・細分化により閉じられていた「政治」「経済」研究を、「開かれた」政治経済学研究へと再構築!
 「現代社会は、『脱国境化時代』、『労働者の流動化』に例えられるように、いろいろな意味で『開かれ』ています。このような新しい状況で起こるさまざまな現象を、政治学と経済学の両方を合わせて研究しようというのがこの研究拠点です」と、田中教授。もちろん、これまでも国際経済学や国際政治学など、開かれた状況での問題を扱う研究はあった。しかし、これまで閉じられているのが前提だったものを、開かれた状況に置き換えて改めて研究するということはなかったのだ。
 また、19世紀には、イギリスでも経済学をPolitical Economy と言っていたように、政治学と経済学は非常に近い関係にあった。しかし、20世紀に入るとそれぞれ独自の道を歩き始めた。同じテーマが政治学と経済学で別々に研究され、それぞれの専門化が進んだ結果、手法も理論も違う、理論が違うから言葉も違う、という状況になった。それが、1990年代に入り一層複雑化した社会を前に、学者の間に「やはり政治だけ、経済だけの研究では無理」という気運が起こる。本プロジェクトは、このような流れを受けての政治・経済学の再統合、すなわち、両学問領域間にも「開かれた」政治経済学なのだ。  「学者の間には不可能との声もありました。それができたのは、早稲田大学には『政治経済学部』があったからです。一つの学部に、政治学と経済学の学者が揃い、共に研究できる環境があることは強みでした」(田中教授)

早稲田大学国際政治経済研究センター(GLOPE)と3つの研究班
 本プロジェクトは、「早稲田大学国際政治経済研究センター(GLOPE)」を設立し、以下3つの研究班に分かれて研究を行っている。それぞれの研究は、拠点リーダー、各研究班の班長、副班長で構成されるリサーチ・マネジメント・オフィス(RMO)により、有機的に連携される。
■構想班
 「開かれた制度」というキーワードに関連するいろいろな問題の政治・経済学両面からの分析を担う。
■理論班
 問題を分析するための新しい手法(Method)の開発を担う。
■理念班
 研究すべき問題があり、分析する手法があっても、理念なき分析は無意味だ。どういう制度を作ろうかという、理念を担う。

目標は、「Waseda Model GLOPE-Method」の開拓と発信!
 「『政治経済学実験』という、データ分析の新しい理論と手法を開拓します。一般的に、ある理論が正しいかどうかは、データを基に分析します。理論に合ったミニチュアである実験モデルを作り、そこで人間がどう行動するかというデータを収集して、その理論を検証するのです。これは、経済学では最近発展している分野です。しかし、実験室の中の実験だけでは、どうしても規模が小さい。そのため、そのデータと、これまで政治学の分野で行ってきた世論調査のような規模の大きいデータとを組み合わせる。そうすれば、実験室でのデータが良いサンプルとして成り立つかどうかを検証することができるはずです。本プロジェクトではその理論と手法を『Waseda Model & GLOPE-Method』として開拓し、世界中の若手研究者を対象としたサマーセミナーによって世界に発信します。若手研究者がこの『Waseda Model & GLOPE-Method』を学び、世界に広がる。それが、本プロジェクトの一つの目標です!」(船木教授)

充実した博士課程学生・ポスドク支援プログラム
 COEの目的の一つに挙げられている大学院教育の重点化。本プロジェクトもさまざまな若手研究者支援プログラムを用意している(表2)。「COE予算、およびCOEにかける労力の7割は、若手研究者養成に使います!」(田中教授)。例えば、これまで一堂に会する機会のなかった、政治と経済の若手研究者が顔を揃えるワークショップやセミナーを毎週開催し、政治と経済の融合を進める。また、スティグリッツはじめ、数人のノーベル賞受賞者級学者による連続講義も開催予定! 「このような世界最高水準の教育を提供し、国内外から優秀な若手研究者が集まる世界的拠点としたい。そして、彼らには、若手研究者同士で交流を深め、博士論文を書く一方で、私たちと一緒に共同研究を進めていってほしいと切に望みます」(船木教授)。充実した支援プログラムと、ベテランから若手研究者への熱いエール。プロジェクトは、すでに成功に向け動き始めている。

2003年度 博士課程学生、ポスドク支援プログラム

(1)PDRA(COE助手)の雇用
(2)21世紀COE奨励研究費
(3)若手研究者海外派遣旅費・滞在費
(4)若手研究者国内出張援助
(5)若手研究者セミナー
(6)若手国際交換客員研究員受入
(7)海外より著名教授による博士課程学生向け連続講義
(8)日本学術振興会特別研究員(DC1,DC2)を本拠点より1名推薦


表1 事業推進担当者一覧
氏 名所属部局・職名
構想班(拠点リーダー)
藪下 史郎
経済学研究科・教授
◎清野 一治経済学研究科・教授
○眞柄 秀子政治学研究科・教授
 秋葉 弘哉経済学研究科・教授
 石井 安憲経済学研究科・教授
 伊東 孝之政治学研究科・教授
 上田 貴子政治経済学部・助教授
 弦間 正彦社会科学研究科・教授
 貞廣  彰経済学研究科・教授
 福田 耕治政治学研究科・教授
理論班◎船木由喜彦経済学研究科・教授
○田中 愛治政治学研究科・教授
 河野  勝政治学研究科・教授
 戸田  学社会科学研究科・助教授
 森川 友義国際教育センター・教授
理念班◎飯島 昇藏政治学研究科・教授
○須賀 晃一経済学研究科・教授
 梅森 直之政治学研究科・教授
 川岸 令和政治学研究科・教授
 清水 和巳政治経済学部・助教授
 西原 博史社会科学研究科・教授

(2003年11月27日掲載)