よくわかる!

研究最前線 よく分かるCOE:
 「超高齢社会におけるヒトとロボット技術の共生」

藤江正克理工学部教授
藤江正克理工学部教授
 21世紀、日本は若者3人が1人の高齢者を支える、世界初の超高齢社会を迎えると言われている。雇用、年金制度等の不安の声が広がる中、活発な社会を創る基盤技術の1つとして、ロボットテクノロジー(以下、RT)が、ITやBT(バイオテクノロジー)と並んで注目されている。
 今回紹介するプログラム「超高齢社会における人とロボット技術の共生」は、これまで本学が世界をリードし続けてきたさまざまなRT研究の更なる飛躍と言える。その構想、展望などについて、拠点リーダーの藤江正克理工学部教授にお話を伺った。

拠点の母体
▲拠点の母体
人と共生するRTで超高齢社会を活性化させる!
 超高齢社会では、単に高齢者を介護するのではなく、彼らが生き生きと社会に参加することが一層重要になる。誰もが社会を支えていくことが、社会を活性化させるからだ。その時、彼らを支援する「知恵のある杖」として、RTが利用される。
 「従来の産業ロボットは機械が対象でしたが、今後のRTは人間が対象となります。それには、RTが人間と共生することが不可欠。そのため、生体の性質を理解し、生体の材料を定量的に評価することで、人間を機械と同じ土俵に載せるんです」。つまり、今後のRT研究には機械工学だけでなく、医療・福祉工学、人間工学、バイオ工学、モビリティ工学等との幅広い連携が必要となるのだ。
 本学の5つの組織(ヒューマノイド研究所、WABOT‐HOUSE研究所、生命・生体・福祉研究所、先端医工学研究所、モビリティ研究所)は、それぞれに人間を対象としたRTの研究実績を持つ。それらを統合させ、RT研究・教育の拠点として展開していく。

RTを社会基盤にして、新たな文化・産業を創出する!
 研究拠点は、構想のコンセプトを作る「基本構想提案グループ」、機械技術の新展開を担う「ハードウェア提案グループ」、生体情報処理、安全制御等を追求する「ソフトウェア提案グループ」の3つで構成される。各々の成果を検討し合って取りまとめ、その結果をさらに各グループに持ち帰り実践していく。
 研究の対象は医療福祉ロボット、高齢者の日常生活支援ロボット、社会システムロボットの3種類。技術と人間の社会活動が豊かに創造し合う「次世代ロボット共創技術の確立」を目指し、現在、具体的な研究達成目標に下記の4つを挙げている。
  1. 手術支援ロボット(10umサイズの細胞を扱う) ※1umは百万分の1m
  2. 高齢者の移動支援エネルギーシステム(水素エネルギーサイクルのモデル構築)
  3. 高齢者の社会生活支援システム(福岡ロボット特区を活用させていただいたRTの評価実証)
  4. 農業・食の支援ロボットシステム(本庄・岐阜地区との共同による土壌調査、収穫)
 また、このプログラムでは、技術開発と共に、RTを社会基盤として確立していく。そのために、RTが実際の場で利用されたときに起こる問題も視野に入れている。「例えば、福岡のロボット特区のように、RTを実際の場で利用することで、安全性、快適性等の実証と共に、保険や法制度、ガイドラインの提言をしていきます。そうして、RTが社会に溶け込んだ新しい文化を創ることで、新産業も創出されるんです」  研究目標と共に、学内インキュベーション等の支援体制の下、ベンチャービジネスモデルの構築や、企業と連携して50件以上の特許の権利化を目指す。

企業で役に立つドクターを! 次世代を担う実践的技術者の育成!
 昨今、日本は科学技術の分野で、アメリカに遅れをとりつつある。数年前まで企業の最前線で研究を行ってきた藤江教授は、日本の優秀なリーダー養成の必要性を痛切に感じてきた。
 「今後、世界に勝つプロジェクトのリーダーシップを企業で取っていく人材には、ドクターの資格は必要条件になります。海外に比べ、日本はドクターを持つ技術者が圧倒的に少ない」。今後、次世代を担う博士課程の研究者、技術者を年に50人輩出していく。
 教育拠点として前述の学内5組織や海外の大学、企業等を活用。基礎教育を行う理工学研究科との間を循環して、学生は実践的な知識や技術を身に付ける。学生に実際にプロジェクトを担当させ、プロジェクトと共に、学生育成にも成果を挙げる共創教育を実践していく。
 「多彩な分野が連携する今後のプロジェクトを進めるには、まず自分の専門分野に特出していることが大前提。そして、専門外の分野の内容を自分の専門に持ち込んで理解し、提案に変える力が必要になります。学者というより、『企業で役に立つドクター』の育成を、このCOEで行っていきます」
 人類の幸福を目指す新たな科学技術の扉が、いま着実に開き始めた。

▲拠点形成の教育計画

事業推進担当者一覧  ※研究科・センターの明記がない者はすべて理工学研究科
氏 名所属部局(専攻等)・職名※
(拠点リーダー)
藤江 正克
機械工学専攻 教授
高西 淳夫生命理工学専攻 教授
菅野 重樹機械工学専攻 教授
三輪 敬之機械工学専攻 教授
山川  宏機械工学専攻 教授
梅津 光生生命理工学専攻 教授
勝田 正文機械工学専攻 教授
川本 広行機械工学専攻 教授
川田 宏之機械工学専攻 教授
大田 英輔機械工学専攻 教授
太田  有機械工学専攻 教授
山本 勝弘機械工学専攻 教授
浅川 基男機械工学専攻 教授
本村  貢機械工学専攻 教授
永田 勝也機械工学専攻 教授
大聖 泰弘機械工学専攻 教授
橋詰  匠機械工学専攻 教授
橋本 周司物理学及応用物理学専攻 教授
河合 素直機械工学専攻 教授
山口富士夫機械工学専攻 教授
林  洋次機械工学専攻 教授
富岡  淳機械工学専攻 教授
藤本 浩志人間科学研究科健康科学専攻 助教授
谷江 和雄理工学総合研究センター 客員教授
(独)産総研知能システム 研究部門長

(2003年11月13日掲載)