先輩に乾杯!

白衣からツナギへ…国内初の女性航空工場整備士
ANA 松田 実生さん

エンジンの前に立つ松田実生さん。ツナギ姿じゃないのが残念!
エンジンの前に立つ松田実生さん。ツナギ姿じゃないのが残念!

まつだ・みのり  1969年東京都生まれ。私立女子学院(中学・高校)を経て、1988年4月早稲田大学理工学部応用化学科に入学。専門は有機合成化学。卒論指導は清水功雄教授。1992年3月同学部卒業。同年4月より全日空叶ョ備本部原動機センター勤務。1997年難関を突破して、国内初の女性航空工場整備士資格を取得。現在は、同センター品質管理室アシスタントマネージャー。
趣味・特技:競技スキー(社会人になってからも「草スキー」(本人談)競技大会に出場、賞品をもらったこともある)、他に趣味はテニス、海外旅行、映画鑑賞等。
 いまや理工学部は2人に1人が大学院へ進学する。「就職活動も厳しそうだし、もう少し学生でいるか」と、なんとなく進学する人もいるのかも…。でも、ちょっと待った! 例えば、異分野で方向転換を考えるなら、就職という選択肢は、新たな可能性に直結する。今回は、理工学部応用化学科出身で、少し方向違いの航空機整備の仕事に就いた松田実生さん。TVドラマの柴咲コウよりグッと知的な国内初の女性航空工場整備士の登場だ。

「つなぎ系」OK! だって実家は自動車整備工場
 整備の仕事のイメージは、油まみれのツナギ姿で働く体力勝負の男の世界。けれど、自動車修理工場の娘にとっては、工場もツナギ姿も日常の世界だった。小学生の時、ジャンボジェット機のコックピットを偶然見せてもらい「こんな機械を動かせたらスゴイ!」と理系少女は精密機器に心を奪われた。高校時代は化学が好きだったので、大学は応用化学科へ進学した。しかし、大学院進学か就職かと進路に迷った時、「コックピットの世界」が甦り、整備の道へ方向転換。

「男の中に女が一人」が当たり前の早稲田生活
 中高一貫の女子高では、仲間に恵まれ楽しく生活できた。一転、大学では女子が多いと思って入学した化学系でも女子占有率は1割に満たなかった。実験も実習も男集団に女1人。さらに、大学で始めた競技スキーも男の世界。彼女は元々プレッシャーに強くパニクらない。大回転でもスラロームでもガンガン飛ばして結果が出るのが楽しかった。学部でもサークルでも「高校時代と違い、同じ女性として共感できる仲間が少ないのは寂しい。でも、成果を出せば男女は関係ないという状況は、厳しくても居心地は悪くありませんでした」

理系なら専攻は問わない<航空整備士の世界>
 理系という枠があるだけで、航空整備部門への就職では専門は一切問わない。化学でも生物でも数学でも建築でも理系ならOKなのだ。
 航空工場整備士の資格を取った時は、疲労困憊した業務後に死に物狂いの勉強をしなくてはならず、本当にきつかった。「化学出身ですから、物理の勉強なんて高校以来。例えばエンジンの原理で、わけの分からない物理の数式が出てきたりします。でも、一緒に勉強している同僚や先輩が教えてくれるので、学ぶ環境は最高です。だから、素養は必要ですが、専門は超えられます」

女性整備士で得したことや、損したことは?
 安全に関わる仕事柄、特に上下関係に厳しい整備士の世界に、ちょっと大げさに言えば風穴を開けることがある。女性が話すと場が和んだり、同期の男性が断られても彼女が言えば話が通ったりすることもある。でも、こういうのは「初回効果」に過ぎないと自戒している。どんな仕事にも甘えは許されない。ましてや、人命を預かる仕事に緊張感は欠かせない。女性で損したことは全くないと言う。「力では勝負にならないので、そこで勝負しようと思わない。ちょっとした工夫でカバーできることがほとんどです。それに本当に重いものはクレーンで引き上げます」 
 なるほど、力のビハインドは工夫と能力で補えるのだ。力だけがちょっと足りないと思っている皆さん、頭と心をうんと鍛えて、先輩に続こう!!

(2003年10月23日掲載)