よくわかる! |
|
研究最前線 よく分かるCOE:「多元要素からなる自己組織系の物理」教育研究拠点
プログラム概要・主旨 タンパク質やDNAとカーボンナノチューブや高温超伝導体、生物や宇宙の階層構造との共通性、またこれを記述する物理の言葉とはなにかを考えるのに、生物・物質・宇宙を「自己組織系」という概念でとらえる。自己組織系とは、構成要素が相互作用することによって自発的に新しい機能や構造を獲得する系のことである。生物といえどもつきつめれば「モノ」の集まり。生物機能を担うタンパク質分子は、20種類のアミノ酸という多元要素(多種多様な要素)からなる自己組織系であり、生物機能は物質としての多元要素が互いにエネルギーと情報をやり取りしつつ、時空間的に織りなす一つの様相と見なすことができる。 多元要素からなる自己組織系を記述する第一原理的理論はまだ存在しない。現在の物理学の枠組みでは解明の糸口すら定かではなく、完全な解明はノーベル賞級の難問である。この難問に正面から向き合うため、高精度の測定結果に基づく理論解析を行い、研究成果を積み重ね、5年後には世界第一の自己組織系物理学の総合研究機関となることを目指している。 拠点形成の目的・必要性 本拠点の目的は、多元要素からなる自己組織系を理解し制御する物理学の創造であり、20世紀の還元主義(少数の基本粒子の性質が理解できればすべてが理解できるという考え方)への挑戦である。21世紀は生物の時代といわれ、国内外では「バイオ(bio)」の名を冠する研究教育機関が次々と創設されて、遺伝子(ゲノム)解析に力が注がれている。しかし、ポストゲノム時代の基礎生命科学に求められているのは、生物を生物として成立させている物質的基盤に働く基本原理の解明である。そして、生物の仕組み、例えば生物におけるエネルギー変換の分子メカニズムを理解するためには生物機能に内在する普遍性を抽出し記述する物理学が必要だ。 ここで提案する自己組織系の物理学が発展し、生物・物質・宇宙に共通の言葉、記述体系が見出せたなら、その影響は20世紀の量子力学に匹敵する変革をもたらす可能性がある。生物・物質・宇宙にまたがる多種多様な横糸を見出すこと、その過程には物理学としての未開拓の道があり、夢がある。物理を志す若者たちに新分野開拓の夢を与えることができるだろう。 研究拠点形成実施計画 異分野間の共同研究による相乗効果によって、個々の力では到達できない成果を得るための「システムと場」を構築する。「自己組織系をとらえる」計測グループ、「自己組織系をモデル化する」理論グループ、「自己組織系で機能を創造する」創造グループに分かれ、分野横断的な共同研究を推進する。一方、生物、物質、宇宙の3分野で、研究対象ごとにも共同研究を奨励する。研究対象を縦糸とすれば、手段を横糸としてメンバーは他のメンバーと有機的に連携し緊密な研究組織(ホリスティック研究システム)を形成することになる。
多元要素からなる自己組織系の研究には、広い視野を持って物理学を見ることができ、理学的思考と工学的思考のバランスを持った人材が必要不可欠である。そのため大学院生たちに、できる限り早く研究の最先端を意識させること、同年代のライバルを意識させること、研究の競争的環境を意識させることを目的とした「大学院生覚醒プログラム」を遂行する。 具体的には(1)優秀な研究提案(特に分野をまたがる野心的な提案を奨励)に対して研究奨学金を給付し、(2)海外研究教育機関との相互指導制度や、(3)ホリスティック物理学輪講などの新科目の設置などを計画している。
プログラム推進担当者一覧
(2003年10月23日掲載)
|