よくわかる!

研究最前線 よくわかるCOE(5)
実践的ナノ化学教育研究拠点

竜田邦明理工学部教授
竜田邦明理工学部教授
Q ナノって何なの?
A ナノとは長さの単位で、
1ナノメートル=10億分の1メートル
ナノテクノロジーは、ナノ単位で極微細加工する技術の総称。「この数年間、化学では、ナノレベルからさらに精密な原子1個の精度で物質を設計し、合成・構築できるようになってきた。世界ではとくに、ナノレベルの開発競争が栄んになっています」と竜田教授。

図1「実践的ナノ化学」教育研究拠点
5部門の連携による相乗的な展開

3カ所のポケットに結合する化合物を設計し、合成した。その結果強力な活性を示した。
 最近よく耳にする「ナノテクノロジー(超微細加工技術)」。IT、バイオと並びわが国が重点目標とする最先端技術である。そのナノテクノロジーの分野で、本学の高い教育研究実績を基盤とした「実践的ナノ化学教育研究拠点」が、「世界的教育研究拠点形成のための重点的支援―21世紀COEプログラム―」に採択された。平成14年度は本学から5つ採択され、本紙でもこれまで4つを紹介してきた。今回は、具体的な研究成果を中心に、拠点リーダーの竜田邦明理工学部教授にお話を伺った。

ナノ研究の基盤は化学であることを再認識
 「早稲田大学では材料科学分野でナノの研究をやっている人が多い。多くの優秀な卒業生も輩出しています。材料の基は分子で、したがってそれを支えているのは化学です。実践的ナノ化学では化学が基盤となっていることを再認識し、基礎から応用まで最先端の研究に取組んでいます」。今年度、学際型のナノ理工学専攻が大学院に設置された。応用化学、化学、生命理工学、ナノ理工学の四専攻が、このCOEプログラムの研究に携わっている。

五部門が相乗的に連携。 「1+1=3以上」の実践的成果を挙げる
 具体的にこのCOEは「ナノエレクトロニクス材料」、「応用ナノ化学」、「ナノ合成化学」、「精密プロセス」、「分子ナノ科学」の五つの部門から構成されている。各部門では有機的かつ相乗的な連携により共同研究を展開している(図1・図3参照)。「基礎研究からいかに応用つまり実践的レベルまで発展させるかというプロセスを大切にしています」と竜田教授。

研究成果の一例では、免疫性疾患、リューマチに効く薬の開発につながる
 「例えば、免疫性疾患やリューマチに効く薬の開発を行っています。血球中にはB細胞/好酸球という成分があります。その中のたんぱく質にポケットが三つ(pY pocket, pY+1 pocket, pY+3 pocket)あることを見つけました。そして、これらのポケットに異物質が入り、変に活性化されてしまうとリューマチやアレルギー疾患が始まってしまう。そこで、病気にならないように三つのポケットにアンタゴニスト(拮抗剤)を入れてやる。しかも一つひとつバラバラではなく、結合させて同時に入るように最適化した仕組みを構築した。そうすると想像を絶する効果を示した。一個だけ入るより三個同時に入ると、五百倍の活性を示したんです(図2参照)。それはまさにナノのレベルで分子を設計すると同時に、炭素を一個ずつ動かして最適分子を合成した結果です。これをさらに発展させると免疫性、炎症性疾患の薬になります」
 「DNAやたんぱく質の構造が分かっただけでは薬はできませんが、われわれはどのような化学物質がどこに入るか調べ、それを合成する方法をみつけた。ポストゲノムの研究でも、この研究方法が使えます」

産学協同研究体制を育み、国際級の若手研究者を育成 
 本COEでは、若手の教員と優秀なポスドク(博士号を取得している研究員)がキーワードとなる。ポスドクは公募。今年度は二十人くらいの優秀なポスドクを雇う。「ポスドクが修士課程の学生を励まして、研究って楽しいんだなっていうのを見せ、博士に進学する学生を増やす。博士課程の学生には本当の研究の厳しさと楽しさ、研究の哲学を教える。そして博士の学生は、ポスドクとして残ってほしい」
 博士課程の学生のポスターセッションはこれまで三回実施している。「ノーベル賞級の学者および世界各国の化学会の代表二十人が三月に日本化学会百二十五周年で来学したとき、博士課程のポスターセッションに来て討論してくれました。今年十二月には国際会議を開きます」
 「COEは五年間だが、終わっても永久にこのサイクルが回るようなシステムを構築することが大切。そのためにはメンバー全員がいい仕事をして、新しい産業をつくり、また、大学に還元するという確実なサイクルをつくらなければならない。産学協同が順調にできることが必要です」と語る竜田教授の言葉からは実績に裏付けられた自信がうかがえた。

図3 期待される共同研究の例
  • 分子ナノ科学部門−ナノ合成化学部門
     「DNAインターカレーション」松本、竜田
  • 分子ナノ科学部門−精密プロセス部門
     「ナノ反応場の反応解析」古川、菊地
  • 分子ナノ科学部門−応用ナノ化学部門
     「貴金属ナノワイヤ均一配向組織」松本、逢坂
  • 分子ナノ科学部門−ナノエレクトロニクス材料部門
     「ナノ構造配列を用いた高感度チップクロマトグラフィー」松本、大泊
  • ナノ合成化学部門−精密プロセス部門
     「高効率分離膜」西出、酒井
  • ナノ合成化学部門−応用ナノ化学部門
     「高出力燃料電池用高分子電解質」西出、逢坂
  • ナノ合成化学部門−ナノエレクトロニクス材料部門
     「高スピン有機ラジカル分子の性状制御ナノ構造配列基板」西出、大泊
  • 精密プロセス部門−応用ナノ化学部門
     「メソ多孔体材料」菊地、黒田
  • 精密プロセス部門−ナノエレクトロニクス材料部門
     「マイクロメンブレンリアクタ」菊地、庄子
  • 応用ナノ化学−ナノエレクトロニクス材料部門  「金属析出サイトの形成と電気化学的手法を用いたナノ金属ドット」逢坂、大泊

プログラム推進担当者一覧
氏 名所属部局・職名
(拠点リーダー)
竜田 邦明
応用化学専攻(生命理工学専攻)・教授
朝日 透ナノ理工学専攻・客員助教授
石原 浩二化学専攻・教授
伊藤 紘一化学専攻・教授
逢坂 哲彌 応用化学専攻(ナノ理工学専攻)・教授
大泊 巌 電子・情報通信学専攻(ナノ理工学専攻)・教授
菊地 英一 応用化学専攻・教授
木野 邦器 応用化学専攻・教授
桐村 光太郎 応用化学専攻・教授
黒田 一幸 応用化学専攻(ナノ理工学専攻)・教授
酒井 清孝 応用化学専攻・教授
庄子 習一電子・情報通信学専攻(ナノ理工学専攻)・教授
菅原 義之 応用化学専攻・教授
武岡 真司応用化学専攻・助教授
常田 聡応用化学専攻・助教授
中井 浩巳 化学専攻・助教授
西出 宏之応用化学専攻・教授
新田 信化学専攻・教授
平沢 泉 応用化学専攻・教授
平田 彰 応用化学専攻・教授
古川 行夫化学専攻・教授
堀越 佳治電気工学専攻(ナノ理工学専攻)・教授
本間 敬之応用化学専攻(ナノ理工学専攻)・助教授
松方 正彦 応用化学専攻・教授
松本 和子 化学専攻(生命理工学専攻)・教授
門間 聰之 ナノ理工学専攻・客員助教授