先輩に乾杯!

お茶漬け専門店「八十八楽」を展開
高井 悟さん

高井 悟さん
■たかい・さとる
1971年生まれ。1992年早稲田大学理工学部工業経営科入学。斎藤むら子ゼミ所属。96年卒業後、ヱスビー食品株式会社に入社。5年間の勤務を経て退社。2001年3月、梅澤英行さん(95年教育卒)とともに株式会社ティ・ーユー・ビー・アソシエイツを設立。01年9月、お茶漬け専門店「八十八楽(こめらく)」銀座本店を開店。翌年9月には銀座コリドー店、大手町店を立ち上げた。
【URL】八十八楽 http://www.komeraku.com/
 終身雇用制度の終焉、若年層の失業率増加に伴う雇用環境の変化…。誰もが漠然と将来に不安を抱えながら今を生きている。大企業勤務が将来の安定を保証する時代ではなくなったが、起業するきっかけとは、一体何なのだろう? 近頃、会社員やOLに人気のお茶漬け専門店として、マスコミ等も賑わす「八十八楽」。専務の高井さん自身も2年前までは会社員だった。早稲田の先輩・梅澤英行さんと始めた店舗は現在の3店舗から更なる展開を目指している。忙中のインタビューに答える姿はやはり、お茶漬け店の若旦那ではなく、新進のビジネスマンであった。

<「何かを立ち上げたい」。模索し続けてたどりついた“お茶漬け”>
 学生時代から「いつか何かを立ち上げたい」と考えてはいたものの、方向性が定まらず「いろいろなことが経験できそうな」ヱスビー食品に入社。「仕事はやりがいがあったし、楽しかった。でも完全に満足して “会社に残り続けること”が生活の目的になってはいけない」と、大学時代にサークルで知り合った先輩と「何かできないか」と、世の中のニーズを探る日々。そして一昨年、先輩からもちかけられた“お茶漬け専門店”の開業。専門店としては前例がなく、素材にこだわれば、誰にでもおいしく作れる。マニュアル化すればフランチャイズ展開も望める。「これだ」と確信し、会社を辞めて先輩と2人で事務所を構えた。

<発想・ひらめきで勝負! 出だし不調でも「自分を信じた」>
 食べることは好きだったが、料理の経験はまったくない。そこで基本的なダシの取り方等は専門家の指導を受けたが、具の食材は自分たちで決めた。「発明王じゃないけど、アイディアで勝負!」と、梅や鮭など定番の具から、フォアグラなどの変りダネまで揃えた30種。ダシもカツオかとんこつが選べ、いろいろな味を少しずつ楽しめるよう、1杯のサイズは茶碗半分ほど。細部まで工夫を凝らし、満を持して開店したが…。「最初の1カ月は予想以上にお客さんが来なかった。ものすごく焦ったけど、『今は我慢』と耐えました」。その甲斐あって徐々に口コミで評判が広まり、昨年は2・3号店を同時オープンさせるほどの盛況となった。「起業を目指す人には、かなりの精神的なタフさが要求されます。あとは逆境のときにどれだけ自分を信じられるか、これに尽きますね」

<会社に勤める、事業を起こす、どちらを選んでも“一長一短”>
 「会社に勤めること、事業を起こすことに、優劣をつけることはできません。どちらを選んでも“一長一短”です」。事業が軌道に乗った現在でも、「会社の歯車になるのはつまらない。ベンチャーで成功したもん勝ち」などというありがちな考えは微塵もない。「会社員として働いていた自分も好きだったし、この経験は大きかった。実務部分はもちろんのこと、一番の収穫は、会社で働く人たちの感覚を肌で感じ取れたこと。世の中の大部分はサラリーマン。この人たちの気持ちが分からなければ、成功するのは難しいですから」

<後輩へ…自分は何がしたいのか。その答えを必死で探そう!>
 「多くの人は、まだ自分のやりたいことが明確には分かっていないでしょう。すぐに答えは出なくても懸命に考え続けてほしい。就職試験は必ずしも努力が報われるとは限らないので、やりたいことができないこともままあります。『うまくいかないことも、あって当たり前』と受け入れ、手に入れたものの中から最良の選択をするよう心がければ、おのずと道は開けてくると思います」

(2003年4月24日掲載)