短期集中連載

魅力ある職場としての OECD <全3回>
 第1回 OECDとは何か

早稲田大学商学部教授 山本 哲三

 私が、OECDガバナンス局にコンサルタントとして赴任して約1カ月半が過ぎた。ようやく職場にも慣れたところである。現在、71人の日本人がパリ本部で働いているが、残念なことに早稲田大学出身者は皆無に近く、このことがこの短文を寄せる一大動機をなしている。これを読む諸君が国際機関に進出し、アジアには強いが(?)、欧米には弱い(低い知名度)といった評判をこのあたりで変えてほしく思う。



▲OECD本部のあるシャトル:元フランス・ロスチャイルド家の別館
copyright:OECD PHOTO OCDE
 OECD(経済協力開発機構)については、経済予測などでときどき新聞・テレビで取り上げられるので、大方の読者はその名を聞いたことがあると思う。だが、何をやっているところかと問われたら、正確に答えられる人は少ないのではないだろうか。

 その本部は、パリの西方、ブローニュの森に近接する閑静な住宅街の1角(16区)にある。第二次大戦直後にマーシャル基金の利用モニター機関として設立された欧州経済協力機構(OEEC)が、その前身である。欧州復興がなった1960年に、北米(米国とカナダ)との経済相互依存の深まりを受け、大西洋両岸を結ぶ国際機関として先進国20カ国をもってOECDが設置され、その後先進国を包括する機関として発展してきたわけである(日本は64年に参加、現在30カ国にまで拡大している)。

 OECDは、時代の要請に応えるかたちでその活動範囲を拡大してきたが、その基本的な使命は、次の3つの目的(OECD条約)に要約される。
  • 加盟国において財政金融上の安定を維持しつつ、高度の経済成長、雇用、および生活水準の向上を達成し、もって世界経済の発展に貢献すること。
  • 発展途上国および非加盟国の経済の健全な拡大に貢献すること。
  • 国際的義務に従って、世界の貿易の多角的かつ無差別な拡大に貢献すること。
 OECDの最高意思決定機関は、理事会(加盟国の経済担当大臣が出席する閣僚理事会は年1回開かれる)とそれを補佐する執行委員会(パリ駐在OECD代表部大使によって構成され毎月開かれる)で構成されている。これらの機関は「決定」、「勧告」、および「宣言」を採択し、OECDの基本的な運営方針を決定するが、日常業務は行わない。実際の活動は、約200からなる専門委員会とそれに付属する作業部会において行われている。専門委員会は経済政策、貿易、開発援助といった経済分野から、エネルギー、科学技術、労働・社会問題、教育、環境といった多岐にわたる分野をカバーしている(図1参照)。そして、専門委員会や作業部会の活動(調査、研究、データ整備、ペイパー作成)を支えているのが、事務総長以下秘書にいたる約2,000人(そのうち専門家職員はおよそ870人)の事務局員である。

 現在、OECDが特に力を入れて取り組んでいる「ホライゾンタル・プロジェクト」は、( 1)人口高齢化、(2)バイオ、(3)資本移動と為替管理、(4)企業統治、(5)e-コマース、(6)健康・安全問題、(7)雇用創出策、(8)規制改革、(9)持続可能な発展、(10)貿易および投資の自由化の10項目である。
OECD組織図
OECD 組織図


山本哲三●Tetsuzo Yamamoto
 1970年に本学商学部を卒業、その後北海道大学大学院(経済学科)、筑波大学社会科学系助手などを経て、87年に本学商学部に勤務。現在、教授。社会経済学、厚生経済学を担当。OECD関連の翻訳書として、(1)『規制緩和と民営化』(東洋経済新報社)、(2)『プライスキャップ規制』(日本経済評論社)、(3)『成長か、衰退か:対日規制改革審査報告』(同)、(4)『規制改革(上)(下)』(同)、(5)『構造分離』(同)などがある。この他、『ネットワーク産業の規制改革』(2001年、日本評論社)などの著書がある。この間、いくつかの省で規制改革に関与してきた。

(2003年6月26日掲載)