OB・OGインタビュー

ワセダ・カルチャートーク2002ダイジェスト(3) 拡大版
日本テレビアナウンサー 福澤 朗さん


あらゆる経験はプラスになる!
人生全てプラスです!
でも、好きなことは続けるべし!



  登場するや否や、超満員の観衆のどよめき拍手に応えて、「みんな燃えているか〜?!」とお約束の雄叫びで観客を一気にワシづかみ。ここで、どんな軽〜いおしゃべりが始まるかと期待した向きには意外な展開の、実に真摯な講演会となった。大学とは何か、働くとはどういうことか、求められる人材とは?…緩急自在の語り口に魅了され、誠実な質疑応答に生真面目な人柄を感じ、参加者にとっては瞬く間の一時間半。  当日出席できなかった皆さんの強いご要望に応じ、今回は「拡大版OBトーク」で紙上再演だ。



【恨みも次のエネルギーになる】
人が選ばない方を選ぶ方が得!

 中高6年間卓球部に在籍し、最高記録が新宿区大会3位という微妙なもの。隣のフェンシング部は、競技人口が少なく、数回勝てば都大会や全国大会で優勝。以来、人が選ばない方を選ぶ方が得だという価値観が染み付いたようです。

大学への幻滅と劇団員への挫折

 僕自身なんとなくマスコミ志望で、高校から推薦で、著名人を多く輩出している一文に入学。もう大丈夫と、大きな淡い幻想を抱き、ホームラン打つぞ! と思いっきりバックスイングを取って4月を迎えた。でも、一般受験した人たちは精神的・肉体的にお疲れで、とりあえず、入ったらノンビリしようという人が多かった。
 1年が経ち、あまりにやる気の感じられない学生と、やる気はあるんだろうけれど覇気を感じない先生たちに囲まれて授業を受けることに嫌悪感を覚えるようになり、このままでは駄目になる。何とか大学という空間から抜け出さなければと切望するように…。
 2年の冬から学外の劇団の研究生に。何百人もオーディションを受けて50人しか受からず、2年目に進めたのが25人、3年目には12人。ところが、最後、正劇団員決定で不合格。背の高さや声と顔の大きさが舞台向き、と自信満々で周囲の評判も良く、間違いなくなれると思い込んでいました。3年間何だったのかと、人生最大の挫折を経験。結局、年間授業料数十万円を研究生から集めて劇団経営の一助とする制度だと知り、恨みが残りました。
 新卒扱いになる限度の留年は2年間。家庭の事情で絶対卒業せねばならず、6年生として大学に戻り、特別認定で土曜日までビッシリの科目を履修し卒業した。

三重苦の就職活動

 6年生の4月、何とか就職したいと「優5つ。つぶしの効かない文学部。しかも劇団研究生で2留」の三重苦を背負って就職課へ相談に行くと「高望みはしない方がいい。今月中に資料請求を100社位にした方がいいんじゃないの」と。これにはムッとしましたね。口には出さなかったけど、二度と世話になるかと。結局、自力で情報収集し最初に受けた日本テレビから内定が出て、フジテレビとは最終面接が重なり日本テレビに決定。就職課から来た「内定が決まったら教えてください」というハガキは、ゴミ箱へ捨てました。
 やる気のない学生と覇気のない先生とそれを許そうとする大学という組織に対する恨み、就職課への恨み、私の首を切った劇団研究所に対する恨み、この3つのトロイカ体制で、就職後5、6年の仕事をすべて、見返してやりたいという恨みをエネルギーに変えてやってきた。若い頃の僕は、やたらと叫び続けていて、表面的には元気のいい人だと思われていたかもしれないけど、裏には根深いものがあったんです。こんなヤツに負けられないと、その恨みを次の仕事のエネルギーにするのです。恨みは本当に人生のガソリンとなる。大切にしてください。

【早稲田という懐の深い大学】
過度に期待しないクセを!

 燃ゆる思いを常に持ち、相手には無理強いしないで、心はいつもフラットな状態が理想。就職も同じ。どんな組織にも過度な期待をしなければ、小さなことでもすべてがプラスに加算される。出会いに期待し過ぎると裏切られた感じで、すべてがマイナス評価になってしまう。皆さんも「これだけ受験勉強をした。きっと素晴らしい教授や学生に出会えるぞ。さァ何をしてくれるんだ早稲田!」と過度な期待をしてません? これでは、早稲田に通うすべての日々がマイナスになってしまう。少し価値観を変えましょう。
 相手に過度な期待をしなくなると、自分で何か事を起こさなくては、と危機感を抱く。そうして見つけ、面白いと感じたことは徹底的にやってみる。突破口が開けます。時間がかかっても、大学は8年間いられるんだからOK。僕も2年留年してる。そして、それを許してくれるのが、早稲田という鷹揚な懐の深〜い大学なのだと、最近ようやく分かりました。
 小規模でアットホームで、休むと先生が心配するような大学にいたら、僕芝居もやらず、留年もせず、そこそこの企業に勤めていたかもしれないけど、今の福澤には決してならなかった。だから、皆さんは早稲田のような良くいえばおおらか、悪く言えばずぼらな大学に入ったことを感謝しましょう。どうぞご自由に! これです。

【採用する側になって思うこと】
ピュアな心は、5分で分かる

 入社10年目で就職の面接を担当するようになりました。応募書類の写真は綺麗に撮れ過ぎていると実物に会ってガッカリでマイナス評価になります。文字の間違いは厳禁。TPOをわきまえず友達メールのような文章も困ります。
 面接では、朝から晩まで何人もの相手と面接し続ける人のハートを掴む方法を考えましょう。でも、個性という言葉で自分の可能性をつぶさないこと。ウケを狙って「個性的な自分を演出しよう」などというのはチャンチャラおかしい。大隈重信の人生125年説で言えば、たかだか20年の人間に個性なんてとんでもない。カツゼツの良さや声の大きさでなく、常にピュアなハートで、伝えたい思いに溢れた言葉は必ず伝わります。人に対してフラットに対応し、何かに感動し、他人を助け自分を戒めピュアに生きているかは、5分で分かる。面接では学歴や成績なんてまず見ませんし、会社や業界に詳しいかなんて二の次。

公平な入試と不公平な就職試験

 国家公務員も医者もテレビ局員も運転手も、人に何かを提示して、お金をもらうからにはサービス業。この原点、お客様の要求に応えるという気持ちを忘れないこと。「一緒に仕事をする仲間・家族」これが「社風」につながる。自分の家族を選ぶ面接だと言うこともできる。入社できたから素晴らしいわけでも、できなかったからヒドイわけでもない。今の證券金融業界のように、どんな組織も明日どうなるかは分からない。テレビ局も少ない予算で良い番組を作ろうともがいています。
 将来のことは誰にも分からないのだからやりたい仕事をやってほしい。自分が何に興味を持ちどんな時に震えるような感動を味わったか、怒ったか、喜んだか、人生のサンプルをひもときましょう。大企業だから良いのではなく、小さいところから始められるというクリエイティブな気持ちは僕もいつでも持ってる。「入学試験」という極めて公平な試験に対し、「就職試験」は極めて不公平な試験で主観がたくさん入ります。素晴らしい「家族」に巡り会うために見識見聞を深めてください。

人生すべてプラスになる! 

 どんな経験も決して無駄にはならないと断言できる。入社後、見たこともないプロレス中継の実況をやらされたけれど、やっていなかったら、「ジャストミート!」とか「ファイアー!」とか絶叫していない。高校生クイズも、とんねるずとの出会いもなかったでしょう。あらゆる経験はプラスになる。人生すべてプラスです。

【質疑応答から】
Q…日本テレビはお金をかけたカラフルな番組が少なくなり残念。
A…不況でスポンサーが付かないのは他局と同じ。少ない時間とお金でどれだけ面白い番組ができるかが課題。朝四時に出社するとあちこちにスタッフが行き倒れた戦士のように寝ている。テレビ業界に淡い幻想を抱いている人は痛い目に遭う。覚悟してほしい。

Q…日テレはどんなアナウンサー・人材を求めているのか
A…日テレは巨人戦を始め圧倒的にスポーツ中継が多い。別に普段テレビを見ている必要はないが、クリエイティブな心や、スポーツマインドは必要。中高年により支持され、ファミリーなものを目指している。対極がフジテレビ。たとえばアナウンサーもその路線に合う人を選ぶことになる。

Q…アナウンサーになるには友人はアナウンス学校へ行って訛りを直したり表情の作り方などを研究すべきだと言うが。僕はそんな暇があったら映画でも観て感動したりしてる方がよいと思うが。
A…見極めたいのは本質で訛りではない。綺麗な日本語を話す人ばかりでは面接する側は飽きる。そこで、あなたのような訛った人が現れたら、思わず身を乗り出して「出身地どこ?」から始まって何でも聞いちゃいますよ。だから、訛りはむしろ武器。イントネーションは就職後一年で完全に直るので、今はそのままのあなたがいい。

Q…採用面接担当の父は、留年や優の数は、結構重要な判断基準だと言う。私が最近興味を持った仕事は、明らかに才能が必要。あるかないか分からないような才能にかけるよりも、地道に評価される仕事をすべきというのが親の意見で、私も迷っている。
A…必ず就職しなくてはいけないという考え方はおかしいが、経済的な事情である程度以上の収入を得たいなら、優をたくさん取るのも手段として仕方がない。自分の夢や好きなことと折り合いをつけていくしかない。好きなことは継続してやり続けた方がいい。
 才能の有無は自分で判断しないこと。「才能とは持続し続ける情熱である」という言葉がある。人に「才能ない」と言われても本人は楽しくて仕方なくて続けているなら、それが才能。才能を生かす仕事では、それをどこまでも持続できるかが勝負。持続できるなら、誰にも評価されなくてもあなたには才能があるということ。

■ふくざわ・あきら
 1963年9月14日(乙女座)血液型O型。東京都生まれ。私立早稲田中学校・高等学校卒業後、推薦で本学第一文学部入学。88年3月同学部教育学専修卒業(2年留年)同年日本テレビ放送網入社。現在、編成局アナウンス部、チーフアナウンサーとして月曜〜金曜の早朝5時半〜8時半まで「ズームイン!!SUPER」を担当。これまでの主な担当番組は、「アメリカ横断ウルトラクイズ」「全日本プロレス中継」「とんねるずの生でダラダラいかせて」「高校生クイズ」「ズームイン!!朝!」など。


(2002年6月6日掲載)