研究最前線 |
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齋藤美穂 人間科学部教授 色彩嗜好と心の関係を学際的な視点で追及! ―「白」を案内役として人の嗜好の不思議に迫る―
心理学ではクラシカルな「色彩心理学研究」の世界に「国際比較」という新風を吹き込む! 私たちの生活には、実にさまざまな色が溢れている。そして、皆それぞれに「好きな色」「嫌いな色」を持っているのではないだろうか。しかし、「好き・嫌い」という感情の原因を、深く探ろうとする人は稀だ。身近でありながら意外に知らない「色の好みと心の関係」を解き明かそうとしているのが、人間科学部・齋藤美穂先生だ。 「色の嗜好の研究」は、心理学の中でも伝統的な部門であり、「日本人の色の好み」については古くから研究されていた。しかしそれを「他の国と比較」したのは齋藤先生がはじめて。 比較のさきがけとして、まず欧米・アフリカ・オセアニア地域から抽出した6カ国に日本を含めた7カ国、さらに日系米人、在日外国人を加えた9つのグループに、色見本を使用した選択法による嗜好色のアンケート調査を行った。その比較分析の結果、日本人の色彩嗜好は世界的に見ても大変特徴的であることが分かった(図表参照)。そして、他国と日本の嗜好の違いは特に「白の嗜好」に強く現れていたのだ。 「この調査によると、日本で『白』は四人に一人という非常に高い選択率で嗜好色の1位にランクしました。でも、その他の国々では10位以内にも入らないんです。これは他の色には見られない『白』だけの特徴でした。」 これをきっかけに、齋藤先生は『白』を中心とした色彩嗜好の研究に踏み切った。 日本人はなぜ『白』が好き? その答えは遠く古代からの社会背景にあった! それでは、なぜ私たち日本人は『白』を好むのだろうか。 「日本では古来から『白』は『神聖・神秘』を感じさせる色として珍重されてきました。例えば、天照大神のような太陽神信仰では太陽光線を表す色とされていますし、七世紀の律令ではは天皇の色に定められています。その後も日本人が『白』を特別視していたと分かる事例が、歴史中に数多く見受けられ、現代日本の『白嗜好』は、こういった『白を重要な色』とする姿勢が、脈々と受け継がれてきた結果なのです。」 「嗜好」というものは、単なる感情の問題ではなく、その人の育った環境や文化といった外的要因が徐々に脳に擦り込まれ、形成されるものなのだ。 「では、日本と古くから文化的交流が行われていた中国・韓国をはじめとするアジア諸国ならば、日本人の嗜好と共通するところがあるかもしれないと思い、調査してみました。すると日本以上の『白嗜好』が見られたんです。つまり、日本人の『白嗜好』は、突き詰めていくと大陸からの影響なのだと言えますね」 「白嗜好」に重点を置いた研究は、より学際的な広がりを見せる! 「色彩嗜好の国際比較」を皮切りに、『白』に魅了された先生の研究は、とどまることを知らない。 「『白』は学際的に心理学を追及するのに、とても適した色だと実感しています。今までは主に、文化人類学・歴史学・民俗学などの観点から『白』を追ってきましたが、今後は言語学をはじめとして、大脳生理学や宗教学といった、より多角的な視点から研究を深めていきたいと思います」 多様な学問と結びつき、より大きな学問の流れを作る媒介役になれるという意味でも、心理学を学ぶことは非常に意義深いのだ。 「心理学に限らず、専門分野の枠を越えた大きな視点で研究を進めることは、とても大切です。学生の皆さんにもぜひ、多角的に物事を見る姿勢を大学で身に付けてほしいですね」 現在は、『白嗜好』研究の一環として、『色白肌』の研究にも力を注いでいる。文化の中で、『肌の色の嗜好』が象徴するものは、心理的に見ても非常に重要なのだ。 「日本では、どの時代を見ても美人の条件に必ず『色白肌』であることが含まれています。特に昨今の、日本をはじめとするアジア地域での猛烈な『美白ブーム』は、世界的にも特異な現象で、大変注目を集めています。海外の学会で、アジアにおける『色白肌嗜好の心理的背景』について講演する機会も多くなってきており、大変興味深いという反応を得ています。」 『白』に対するアプローチの手法は尽きることがなく、やればやるほど興味が増すばかり。「すっかりはまってしまいました」。と笑顔で話す齋藤先生は、これからも『白』を媒介として人々の心理を追い続ける。 図表(1) D-SCORE(嗜好色・地域別)
(2002年4月18日掲載)
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