すずき・たく
◎2000年理工学部建築学科卒業。04年多治見市陶磁器意匠研究所修了。07年6月には陶芸家の辻厚成氏の声がけにより、若き陶芸家の発表の場として始まった「辻厚成&若き獅子“SAMURAI DREAM”」展に参加。東京では「サボア・ヴィーブル」、「ファーマーズテーブル」などで作品を見ることができる。 >>webサイトへ
 特集1 校友が語る「つくる」の現場

6  自然と協同で作品をつくる

陶芸家 鈴木 卓 さん

自分に正直であれば つくりたいものは 見えてくる

陶芸家 鈴木 卓 さん

建築学科の学生が 陶芸家を志す

 「ファミコンが買ってもらえず、レゴブロックで一日中遊んでいたのがモノづくりの原点かな」と笑うのは、理工学部建築学科を卒業後いったん就職し、その後、改めて陶芸を学び始めたという、異色の経歴を持つ陶芸家、鈴木卓さん。子どものころから図画工作が得意で、大学進学時にも「理系志向の自分が、何かモノをつくっていけそうな学科」という理由から建築学科を選んだ。入学と同時に念願の「陶芸サークル」にも入会を果たした。

 「10人くらいのサークルで、手ほどきは先輩から受けました。3、4年の時はかなり熱心に打ち込みましたね」

 そんな日々の中で、忘れられない出会いがあった。

 「三原研さんという陶芸家の個展を見たときのことです。生まれて初めてと言っていいほどに心を動かされました。これが感動するということなのかな、なんて」。会場にいた三原氏に「遊びに来なさい」と言われ、早速、3年生の夏休みに島根県の工房を訪ねた。

 「陶芸家の生活ってこういうものなんだなあ、これは仕事としても生き方としてもアリだな、と思いました」。三原さん曰く「毎日が日曜日みたいだよ」。これで鈴木さんの心は決まってしまった。

陶芸と向き合い 自問自答する日々

 しかし、話は簡単には運ばない。両親の反対もあった。「芸術で生活できるの?」。そこで、いったん就職し、陶芸の道を歩みはじめるための貯金をすることにした。会社の仕事が楽しくなったらそれはそれで続ければいいという、なかなか合理的な決断でもあった。

 就職したのは設備関係の設計施工会社。

 「大学での勉強とは違って、建物ってこうやってできてるんだ、と間近で見る新鮮な感覚がありました。いい経験をさせてもらいました」

 とは言っても、やはり陶芸への思いは断ちがたかった。2年間で貯金が目標額に達したのを機に、退職。岐阜県の多治見市陶磁器意匠研究所の研究生として、25歳からの2年間を過ごした。

 「ここでの2年間は、陶芸の技術を身につけるというよりも『自分は陶芸で何をしたいのか』と問い直す日々でした。課題や作品の制作を通して、常にそのことと向き合っていました」

 修了後、多治見に居を構えた鈴木さんの活躍にはめざましいものがある。修了年である2004年に第5回益子陶芸展に入選したのを皮切りに、翌年には第1回菊池ビエンナーレと朝日現代クラフト展で優秀賞、第3回現代茶陶展で大賞に輝き、9月には最初の展示会を多治見で開くこともできた。

土と対話し 作品に導かれる

岐阜県土岐市にある工房で作陶する鈴木さん
岐阜県土岐市にある工房で作陶する鈴木さん
土器や青銅器といった年月を経て風化したものに惹かれるという鈴木さん。
土器や青銅器といった年月を経て風化したものに惹かれるという鈴木さん。その感触を、今の時代の自分の感覚でつくりだした作品。焼き上がったときは金色の状態で、酸で拭いていくと色が紫、緑青色へと変化するのだという。

 鈴木さんの作品は、直径50センチを超えるオブジェから日常づかいの茶碗まで幅広い。そこに通底するテーマは「形の美しさ」だという。

 「ずっと、きれいな形やシルエットが気になる。かっこいい形が好きなんですね」という鈴木さん。しかしその具体的な形は、土と相談しながら考えるのだとか。

 「作品をつくるときは、土を触りながら漠然としたイメージをふくらませていき、徐々に形を決めていきます。最初に思っていたものとは、どんどん変わっていきますよ。そして、ひとつの作品ができあがると、自分でも意識していなかった部分が発見できます。その発見に導かれ教えられて、次の作品にとりかかる。作品づくりはこの繰り返しです」

 陶器は窯で焼くと一割以上縮んでしまう。変形することもある。人智を超えたものが必ず付け加わるのだ。その部分をできるだけコントロールしようとしながら、多少は窯や釉薬に仕上がりを委ねようとする気持ちもあるという鈴木さん。次の構想は常にいくつもあり、毎回、実験的な試みをほどこした陶片を窯の中にしのばせ、仕上がりを楽しみに待つ。

 ものづくりの原点であり終着点ともいえる陶芸の世界で、いまや自由に羽根をのばし悠々と羽ばたいている鈴木さんに、ものをつくって生活していくことについて尋ねると、「生活の心配があまりに強すぎると、『売れる物』ばかりをつくってしまいがち。自分に正直につくることができれば、こんな楽しい仕事は、きっと他にありません」と答えてくれた。


(2007年11月5日掲載)




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First drafted 2007 Oct 30.