教育学部教授 堤貞夫
教育学部教授
堤貞夫
(つつみ・さだお)
1934 年群馬県生まれ。早稲田大学第一理工学部鉱山学科卒業、同大学院理工学研究科博士課程修了、工学博士。専門は鉱物学(鉱床母岩の変質作用と変質帯に産出する鉱物の研究)。教育学部教授、81年からバスケットボール部長、循環型環境技術研究会会長を務める。趣味は鉱物でできた動物の収集、バラつくり。
 コラム

スポーツで人を育てる―バラを育てる―

教育学部教授 堤 貞夫

 私の家の小さな庭には190 種、230 本ほどのバラが咲いている。家を建てたが塀を作る金が足りなかったので、目隠しの垣根として、つるバラを2 本と庭に木バラを3 本植えたのが始まりである。バラはBush rose (木バラ)とClimbingrose (つるバラ)に大別されるが、花の色、花弁の形と枚数、香りの有無、耐病性、樹勢の強弱などが異なり、それぞれのバラが特徴を持っていて、花は素晴らしいが香りがない、病虫害に強いが意外に成長し難いなど、あるいはそれらの逆であったりして、すべてに長けているものは数少ない。

 このように、個々のバラはそれぞれ違った性質を持っているのだが、それはまさにバスケットボール部員が、シュート力やスピードなどバスケットボールの技能が優れている、3P シュートの確度が高い、素質や体格に恵まれているが気力が今ひとつであるとか、意外に故障がちであるなど、それぞれ異なった特徴を有しているのと同じことである。もっとも、肝心な、花や選手としての素晴らしさの評価には、それらを育てている者の主観が入っているのであるが。初めて植えたバラにすっかり魅せられて、わが家のバラは年々その数と種類を増し、10 年後には90本ほどになった。1 人で楽しむよりはと思い、花の盛りの5 月に「バラの会」を開いて、ゼミの学生や卒業生と一緒にバラを楽しむことにした。毎年5 、60 人の人々が集まったが、先輩との語らいの中から現役の進路が決まったり、この集まりが縁でカップルが誕生したこともある。学部の事務所にそれぞれ種類の異なるバラを届けるようにしていたことが、当時の『新鐘』の編集者の耳に入り、第29号に「ばらつくり」と題する拙文を載せたこともあって、学内に私がバラを植えていることを知っている人が多くなった。このような事情から表題のような内容の本文を書くよう求められたのだと思っている。

 初めてバラを植えてから35 年、部長としてバスケットボール部員に接するようになってから23年を数える。バラと一緒にするのは部員諸君に失礼であるが、バラが鮮やかな色と芳醇な香りを備えた見事なバラに育つためには、また、部員が高度な技術はもとより立派な人格を備えたバスケットボール選手になるには、それぞれの個性を十分に伸ばして、豊かな環境の下で、適切な手入れや理にかなった指導が必要であることは言を俟たない。バラはものを言わないので育てる側の日常の気配りが必要であるが、部員諸君の場合には、成長の過程で指導者や部員相互の間でコミュニケーションを図って切磋琢磨することができ、大きな飛躍のために自分自身の意志を作用させることができる。部員諸君の文武両道を求める強い信念とひたむきな努力を期待してやまない。

(2003年12月15日掲載)




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First drafted 2003 December 15.