教育実習奮戦記
体験談:教育学研究科国語教育専攻修士課程1年
 古右田千春さん

自分には何が向いているのか?
今、自分に必要なものは何か?
大学での勉強は将来役に立つのだろうか?
漠然と抱いている疑問の答えが、社会に飛びだすことで発見できるかもしれない。

  小学校から高校までの間、自分の通っていた学校に教育実習の大学生が来たのを覚えているだろうか。先生たちよりずっと若くて、優しそうなお兄さん、お姉さん。もっと仲良くなりたかったのに、誰にも言えない悩みをうち明けてみたかったのに、ほんの少ししか一緒にいられなかった。

 現在、「荒れている」と言われている学校教育の現場へ、高い志を持って自ら足を踏み入れようとしている熱き教員の卵たち。彼らは実習中、どんなことを心に秘め、何を経験していくのだろうか?教職を目指す人以外にはなかなか知られることのなかった教育実習生の素顔が、今ここに明らかになる!

私の教育実習日記

授業は自分で作るもの

 いよいよ4年生。もともと日本語教師になりたくて教育学部国語国文学科に入ったのだ。今年は教育実習がある。始まったばかりの「教育実習」のクラスでは、教育史や子どもの発達にかんすることなど一般的な内容ばかりで、いざ自分が授業を行うときに直接役立つようなことは教えてくれない。『教育実習マニュアル』という本を買って、自分で自分が受け持つ授業のことを考えて行かなくてはならないのだ。

 不安を抱えながらも実習先の学校へ挨拶に赴いた。実習校は基本的に自分の母校の中学校か高校でということになっている。私は母校である私立高校の中等部へ行くことになっていたので、学校の雰囲気に違和感はない。勤務時間や出勤時の注意事項、実習時に行われる学校行事などの説明を受け、実習の時間割を細かく打ち合わせた。

 指導をしてくださる先生は、実習生にどんどん授業をやらせて実践から学べという考え方を持っている。2週間の実習で、14回もの授業を受け持つことになった。担当するのは古典。『枕草子』と『徒然草』だ。使用する教材も渡され、この時やっと自分で授業を作るという実感がこみ上げてきた。授業の方向性を見失わないように、これから具体的にどう行っていくか考えながら、学習指導案を作らなくてはならない。

 この学習指導案の作成というのが、骨の折れる作業だ。初めてということもあって、1回分の授業に5時間ほど準備が必要だった。古文は現代文と違って、1度読んだだけでは内容がなかなかつかめない。まずは授業の導入部分を工夫して、作品に興味を持ってもらうことから始めよう。「春はあけぼの」といったら、そこに描かれる風景や色彩感を頭の中にイメージできるように、絵やカードなどを用意したらどうだろう。生徒たちのどんな問いかけにも答えられるように、いろいろな角度から何度も何度も繰り返し作品を読み返しておこう。

実習初日

 朝の1、2時限を使って教育実習のためのガイダンスがあった。実習前の1週間は、自分が受け持つ授業の教材の研究に追われ、教師という仕事についてじっくり考えてみる余裕がなかった。このガイダンスで「生徒の将来に責任を持って行動することが、教師としてのやりがいにつながる」と聞いて、改めて教師の役割を考え直すきっかけになった。しかし、今の私がいくら考えても、実際の教師の仕事はイメージするものと大きく異なるかもしれない。今日から始まる2週間で、教師について、学校について、教育について、できる限り多くのことを吸収したい。

 5時限目からは担当する中学2年生の国語の授業見学だ。どんな子がいるのか、クラスの様子も把握しておかなければならない。私が指導教諭の先生から紹介されると、生徒たちはみんなすがすがしい挨拶をしてくれた。こんな生徒たちとならすぐに仲良くなれるかもしれない。

 授業を見学していて驚いたのは、先生と生徒の自然なコミュニケーションで授業が進行しているということだ。先生の問いかけに生徒たちは積極的に手を挙げているし、自由に質問もする。集中しなければいけないときには、全員が真剣に取り組む。こんな教室の「一体感」を私も作り出せるのだろうか…。

反省しきりの初授業

 実習3日目。初めて授業を行った。念入りに作った学習指導案も指導担当の先生にOK をもらっていたし、準備は万端のはずだった。しかし、教壇に上がると異常なまでの緊張感が私を包んだ。教壇が高く感じられ、生徒の数が実際より多く見える。自分が話そうと考えていたところは何度も予行練習していたのに、それすら上手くしゃべれなかった。生徒からの反応をきちんと受け止めながら、会話するような双方向の授業がしたかったけど、それにはまだ先が長そうだ。生徒たちの視点に立って、授業が準備できていなかったのだと反省する。問いを投げかけても、誰1人手を挙げてくれないという状況を思うと怖い。生徒たちがどんなことを考えているのか、きちんと向き合う勇気が欠けていたのだと思う。

図書館での調べ学習

 実習4日目。生徒たちに学習に対する主体性を持ってもらうために、図書館で調べ学習を行うことにした。特に古典では、作品が書かれた時代の背景を理解することが大切だ。クラスをいくつかのグループに分け、班ごとに「平安時代の恋愛について」とか「平安時代のファッションについて」など、興味を持ってもらえそうな事柄を調べてもらい、発表してもらうことにした。発表の形式は自由。劇で発表したところもあったし、クイズにしたところもあった。私自身、考えてもいなかったような本から情報を得ていた班もあって、生徒たちの好奇心の強さには驚かされた。日々、生徒から教わることがあり、そこに喜びを感じる。教師とはとても楽しい職業だと思った。

 授業後、司書教諭の仕事にも興味があったので、学校司書の方にお話をうかがった。在学中は当たり前のように図書館を利用していたのだが、学校司書の方も授業を担当している先生方と同じように、生徒たちの将来を深く考えながら、本を管理してくださっていることにはなかなか気付くことがなかった。学校は学校で働くすべての人の、生徒たちを思いやる気持ちに支えられていた。

2週間の成果、研究授業

 教育実習も終盤。2週間の成果を見極めるために、直接指導してくださった担当の先生以外の方にも授業を参観していただく研究授業の日だ。この授業のために作った学習指導案は、すべての先生方(総勢約80人!)に見ていただいて、たくさんのアドバイスをもらった。特に国語科の先生方からは、「問いが浅すぎる。単にストーリーを理解させるだけではなく、そこで描かれている登場人物の心情を推し量るような深い問いを立てなさい」と厳しい指摘を受けた。確かに国語の面白さは、そういう想像力を育むようなところにあると思う。国語教師としての力量が問われるところだ。

 4時限目は本番だ。緊張したが、課題であった生徒とのコミュニケーションを終始意識するよう心がけた。未熟な教え方だったのに、私の発する一言一言をじっくり聞いて、一所懸命考えてくれた生徒たちに感謝したい。

実習を終えて

 2週間の教育実習で私は非常に多くのことを学んだ。反省点も多いが、それ以上に教師という仕事に魅了されている。受け持った生徒たちのことを自分の弟や妹のように可愛いと思った。ひょっとしたらプロの教師としてそれはいけないことなのかもしれない。しかし、生徒たちと向き合って、いつも彼らの気持ちに近い存在であるからこそ、教師に課せられた責任を重く受け止め、そして成長を見て感動できるのだと考えている。

 また、今まで偏差値重視の受験教育に否定的だったが、教師の自己満足で楽しい国語の授業だけやっていればいいというわけではないとも感じ始めた。ただ、子どもたちが中学時代や高校時代にいろいろなことに悩み、いろいろな価値観に触れ、いろいろな経験をして、将来への基盤となるより多くのことを学ぶ機会を大切にしてあげたい。

 教員採用試験は狭き門だと言われているが、私自身もこれからいろいろな経験を積み、信頼される教師になっていきたいと思う。

 教員志望の人、必見! 教員就職指導室

教員就職指導室では、全国の国公私立学校教員への応募・受験サポートをはじめ、教員志望者の就職相談、採用試験の勉強方法など、教員を志す学生の就職支援を行っている。指導・相談は中学校、高校とそれぞれのベテラン教員経験者2 人が対応。古宇田さんも悩まされたという、学習指導案の作成方法なども懇切丁寧に教えてくれる。教員になりたいのだけれど、どうしたらいいか分からないという漠然とした相談でもOK!まずは1度足を踏み入れてみよう。

■教員就職指導室
【場所】西早稲田キャンパス14 号館2 階202
【開室日・時間】月〜金/10:00 〜17:00、土/10:00 〜15:00(12:30〜13:30は昼休み)
【必要なもの】初回に大学生協取扱い履歴書に写真を添付して提出
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(2002年6月10日掲載)




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First drafted 2002 June 10.