政治経済学部教授 清野一治
政治経済学部教授
清野一治
(きよの・かずはる)
1957年東京都生まれ。73年早稲田大学高等学院入学、80年早稲田大学政治経済学部卒業。85年東京大学大学院満期退学。86年から学習院大学講師(翌年助教授)、89年大阪大学助教授を経て92年早稲田大学政治経済学部助教授(翌年教授)、現在に至る。主な著書に『規制と競争の経済学』(1993年,東大出版会)などがある。
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都心の家賃はなぜ高い?

地方から出てきた学生がまず驚くのが、東京都内の家賃。もう少し安ければ、生活が楽になるのに!

都心で賃貸住宅を借りる以外の選択肢を考えてみましょう

 都心の家賃はなぜこんなに高いのでしょうね?田舎に行けば、もっと安いのに…。と、多くの皆さんが思っているのではないでしょうか。でも、そんなに家賃が高くて困るのであれば、都心でアパートやマンションを借りる以外の方法だってあるじゃないですか。例えば賃貸じゃなくて自分の家を持ったり、そもそも都心から離れたところに住むことだって、もしくは(これはお勧めしませんが)寝袋かなんかを用意して野宿生活とか。しかし、最後の方法は、定職を持ったり在学することを考えると、いろいろと面倒なことが起こったり、コワーイお巡りさんに職務質問されて、よくて実家へ帰されるか、下手をすると「臭い飯」をということにもなりかねません。ということで、都心で賃貸住宅を利用するのが割高ならば、持ち家か、それとも都心から離れたところで賃貸、または持ち家という代替的な選択だけを考えてみましょう。

 最初に持ち家ですが、確かに家賃は安い。タダです。だって、自分の家なんですから。と考えたい気持ちはよく分かりますが、本当はタダではありません。土地を買って、家を建てて、しかも台風が来たり、近くのいたずら小僧たちに塀なんかにとんでもない絵を描かれた日には一生懸命消さなくてはなりません。でも庭もあれば、駐車場も借りることはない。ただ、庭の手入れが必要です。イヤ自分は車はどうでもいいから植木を楽しめれば…。植木屋さんに頼むとウン万円かかりますよ(自己流は結果が悲惨だし、植木の手入れの技を身につけるにも時間も費用もかかります)。それでも、イヤー自分はたくさんお金を持っているから、銀行から借りる必要もないから、そのことを考えても持ち家の方が安いって言っているあなた。それは間違いです。手持ちのお金で(ちょっと最近は株式市場に元気がありませんが)他の運用をすることだってできるはずです。それを選ばずに、土地を買って、家を建てれば、他の資産運用方法を選んだ時に得られた収益を犠牲にしているのです。

 それでも、もし持ち家を選ぶ方が安ければ、多くの人がそうするはずです。そうなると、賃貸住宅を借りる人なんていなくなって(経済学で言えば、賃貸住宅に対する需要が減って)、困った大家は家賃を下げざるを得なくなるはずです。逆に言えば、都心の持ち家の価格は、家賃の水準と密接な連関があるということです。つまり、賃貸と持ち家とがそれほど差がないように最終的にそれぞれの価格が決まります。

 でも、都心の土地は住宅だけに用いられるわけではありません。コンサート会場、ブティック、オフィス等、多くのビジネス機会のためにも用いられます。そこで得られる収益が高ければ、ビジネス需要が都心にさらに集まり、都心の土地やビルなどの価格が上がっていきます。それと競合して、持ち家の値段も賃貸住宅の家賃も上がっていくのです。それでは、都心から離れたところに住むという選択はどうでしょうか。確かに家賃も持ち家の値段も下がります。でも、所得を稼いだり、勉学をしたり、レジャーを楽しんだりということは、都心にその機能が集中する傾向があります。そこへ行くためには交通手段を乗り継いでお金と時間をかけて行かなければなりません。自家用車を用いる場合であってさえも、ガソリン代もかかります。こうした時間をアルバイトにあてたりしたらもっと所得が上がったはずです。その意味で時間もまた費用(経済学で言えば機会費用)です。都心に住めばこうした費用は節約できるのですから、その分だけ都心の土地も家賃も高くなる傾向があります。

 このように都心の家賃が高くなるのは、都心に多くの人を引きつけるビジネス、レジャー、教養習得のための豊富な機会があるためです。都心に住む皆さん、いっそのこと、そうした機会をできるだけ活用しようではありませんか。

都心と郊外の立地(または住むことの)利益比較

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 もっと詳しく知りたい人は… オススメ本

宮尾尊弘著  『現代都市経済学』  日本評論社、1995年

(2002年1月10日掲載)




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First drafted 2002 January 10.