スポーツサイエンス研究会

(第5回まではスポーツニューロサイエンス研究会)開催記録


                             最近の開催記録はこちらから


★第1回 2003年4月22日

■演題:Measuring Brain Activation and Connectivity by Means of Combined EEG and fMRI Recordings

 演者:Pedro A. Valdes-Sosa (キューバ神経科学センター副所長)

 

★第2回 2003年5月24日 (早稲田大学精神生理学研究会共催)

■演題:Monitoring and Evaluation Processes of the Medial Frontal Cortex

 演者:William J. Gehring (ミシガン大学心理学科助教授)

 

 

★第3回 2003年9月2日

■演題運動準備電位と脳内情報処理過程

 演者:正木宏明先生 (早稲田大学スポーツ科学部)

 長時定数で増幅記録した脳波を随意運動の開始時点で加算平均すると,運動開始前1〜2秒から陰性方向へ緩徐に立ち上がる準備電位 (readiness potential; RP) が観察される. RPは前期成分BP(Bereitschaftspotential)と後期成分NS’(negative slope)から構成され,BPは全般的な準備状態を反映し,NS’は当該運動に特異的な準備過程を反映するものと解釈されている.BP振幅は左右半球間で差はないが,NS’振幅は運動肢と対側半球で大きい.従来の報告を概観すると,RPは力量や運動速度などの運動要因や,注意,構え,動機づけなどの心理要因の効果によってその波形は変化する.いずれの要因の効果も,RPの振幅増大や立ち上がり時点(出現時点)の移行として現れる.ここでは,課題遂行に関与する心的努力によってNS’振幅が増大する知見を紹介したうえで,90年代以降の認知心理学研究にもたらしたRPの貢献について紹介する.NS'は当該運動の準備−実行に直接関与する脳内プロセスを反映することから,NS’の偏側性は,1985年以降,認知心理学のモデルを検証する道具として注目されるようになった.NS’の偏側性を表現するために左右半球間で算出した差波形は,lateralized readiness potential (LRP)と呼ばれている.LRPの出現時点は反応処理系の開始を反映することから,LRPは反応処理系のタイミングを知るツールとして捉えられている.しかしながら,認知心理学で提唱されている各処理段階(刺激評価段階,反応選択段階,運動プログラミング段階,運動実行段階,など)のうち,どの処理段階とLRPの出現時点が対応しているかについては明確にされていなかった.最近行った実験によって,LRPが反応選択段階直後かつ運動プログラミング段階直前から出現することを示せたので,この知見についても紹介したい.

 

 

★第4回 2003年9月29日

■演題1:アレイ電極を用いたEMG計測とその応用

 演者:小田俊明先生 (東京大学大学院生命環境科学系)

1980年代以降,複数の電極を直列に配列したアレイ電極を用いて,対象筋から多チャンネルの表面EMGを計測することが行われてきた.本発表では,この方法を利用することにより可能となる測定法・解析法(筋線維の活動電位伝導速度,電流発生源[運動終盤位置]推定,運動単位のデコンポジション等)について紹介し,その身体運動科学への応用例を示す.


■演題2硬膜下電極を用いた睡眠覚醒時の皮質律動の研究

 演者:内田 直先生(早稲田大学スポーツ科学部スポーツ医科学科)

 てんかんの外科手術適応判定の際に行う硬膜下電極慢性留置は、ヒトの皮質電気活動を測定するための非常に貴重な機会であ る。我々は、都立神経病院脳神経外科清水弘之部長らのグループと共同で、これまでに覚醒、自然睡眠を通じてのヒト大脳皮質各部位での皮質電気活動について記録してきた。これらの結果について、まとめて報告したい。

 側頭葉内側部では、大きく二つの特徴ある波形が記録された。一つは、15Hz前後の我々がベータ1と読んだ帯域であ る。この15Hz前後の律動は、非常に規則的で連続性がよく、睡眠覚醒の中では、覚醒とレム睡眠期に出現していた。側頭葉内側部の重要な部位は海馬であ るが、げっ歯類などの哺乳類では海馬で覚醒時とレム睡眠期にシータ活動が記録されることが知られている。ヒトで記録された15Hz前後の律動がこの海馬シータ活動とどのような関連があ るのか興味がもたれる。もう一つは30-150Hzのガンマ活動である。この活動は徐波睡眠期でやや減少するものの、覚醒睡眠を通じて一貫して側頭葉内側部に出現していた。また、セボフルレン麻酔では麻酔濃度が上昇するにつれてガンマが減少した。また、あ る一例では、側頭葉内側と同時に前帯状回に電極が装着されたが、ここからは非常に規則的なシータ律動が覚醒時とレム睡眠期に出現していた。

 このように、硬膜下電極記録は通常の表面脳波では記録できないヒトの大脳皮質電気活動の特徴を捉えるのに非常に貴重な情報を提供する。これまでの研究では、これまで報告の無いいくつかの特徴的律動を記述することができた。今後はこれらの律動がどのような生理学的な機能を持っているのかを明らかにすることが課題となる。

 

 

★第5回 2003年11月10日

■演題1:スポーツの精神障害者生活時間への影響

 演者:福田敬子先生(早稲田大学大学院人間科学研究科スポーツ精神医学研究室)

 スポーツ活動が精神障害者の生活に具体的にどのような影響を与えているのかは、十分に明らかになっていない。そこで本研究では、精神障害者のスポーツ活動と生活時間の関連性について調査を行った。方法:東京近郊のデイケア患者を対象に、スポーツ活動の頻度調査と生活時間調査を実施した。調査項目のうち、睡眠覚醒に関しては、睡眠をとっている時間帯を、連続する2日間、被調査者全員分の値を加算し、睡眠中の人の割合の推移を求めた。また、入眠時刻、覚醒時刻についての差異についてStudent t-testを用いて有意差検定を行った。結果:週3回以上スポーツをしていると答えた群(スポーツ群)と全くスポーツをしていないと答えた群(非スポーツ群)で、生活時間について比較した。覚醒時刻の平均値はスポーツ群、非スポーツ群でそれぞれ6:45、7:19;入眠時刻は、20:45と22:14であ り、覚醒時刻入眠時刻供にスポーツ群で早かった。統計的には有意ではなかったが、入眠時刻はより強い傾向を示していた(P=0.096)。また、スポーツ群においては、全く昼寝をしているものがおらず、また夜間においても全員が睡眠を取っている時間帯が存在した。考察:週3回以上スポーツをしていると答えた人は、全くスポーツをしていないと答えた人と比べ、早寝早起きの傾向があ り、さらに昼寝はせずに夜は必ず眠るという規則正しい生活リズムを示していることが明らかになった。しかし、今回の調査では、規則正しい生活リズムとスポーツ頻度の因果関係は明らかになっていない。今後は、スポーツをほとんどしていない患者を対象とし、スポーツ活動を行った場合どのように生活リズムが変化するのかを調査する必要があ る。もし、スポーツが実際の生活リズムに好影響を与えているのであれば、生活リズムが乱れた患者群に対して、積極的にスポーツ活動を導入する根拠となる。


■演題2
Resistance exercise combined with vascular occlusion

 演者:宝田雄大先生(早稲田大学スポーツ科学部スポーツ医科学科)

   Skeletal muscles adapt themselves to varied exercise stimuli in a manner that they respond appropriately to the new mechanical and metabolic demands: intense resistance exercises generally cause increases in muscular size and strength (McDonagh and Davies 1984), whereas exercises with much smaller load and larger volume result in an increase in the muscle oxidative capacity without considerable increase in muscular size (Holloszy and Booth 1976). For the particular purpose of muscular hypertrophy and concomitant increase in strength, it has been believed that intensity higher than 65% of one repetition maximum (1RM) is to be used (McDonagh and Davies 1984).
On the other hand, we have shown that a low-intensity resistance exercise (20-50%1RM) combined with vascular occlusion (occlusive resistance training) induced marked increases in size and strength in elbow flexor muscles of old women and in knee extensor muscles of athletes, even if the intensity of exercise was much lower than expected to promote muscular hypertrophy (Takarada et al. 2000b; Takarada et al. 2002). The mechanisms underlying such an effect of externally applied occlusive stimulus have been interpreted as follows: 1), additional recruitment of fast-twitch fibres in a hypoxic condition (Takarada et al. 2000a; Takarada et al. 2000b) 2), stimulated secretion of growth hormone (GH) and norepinephrine (Takarada et al. 2000a). I will first talk about the acute effects of the occlusive resistance training, then chronic (long-term) effects of that. In addition, I am going to show the latest data concerning the effects of the occlusive resistance training on fMRI-measured brain activation in my laboratory.

 

 

★第6回 2003年12月15日  

■演題1:随伴陰性変動(CNV)によるタイミングの研究

 望月芳子先生(早稲田大学大学院人間科学研究科D1)

 本研究では,連続タイミング事態下で,時間間隔変化がCNVに及ぼす影響を調べた.刺激間間隔(inter-stimulus interval: ISI)と試行間間隔(inter-trial interval: ITI)を操作した.実験の結果,CNV波形に及ぼすISI効果は中心−頭頂部に,ITI効果は前頭−中心部に観察された.タイミングの情報処理には,ISIとITIの両効果が影響していることを紹介する.

■演題2:脊髄の歩行パターン生成能力とその回復可能性

 中澤公先生(国立身障者リハセンター)

 最新の神経科学の進歩は従来不可能とされていた脊髄損傷者の歩行機能回復を、既に実現可能な目標として捉えはじめている。 ここでは,最新の歩行トレーニングの科学的基礎をなす、脊髄の歩行パターン生成能力とその可塑性に関する近年の研究動向について紹介する。

 

★第7回 2004年1月19日

■演題1:中高年の運動処方の現状と状来

 能勢 博先生(信州大学・加齢適応医科学系独立専攻・スポーツ医科学教授) 

 高齢化社会を迎え、高齢者を対象とした運動処方に基づく予防医学は、医療費削減の見地から国家運営の戦略上、早急に整備されなくてはならない問題であ る。米国では、10年以上前より高齢者の医療費の節約を目標として、Healthy People 2000 プロジェクトが、国家レベルで行われ、その効果が現れつつあ る。しかし、我が国では厚生労働省主導で、昨年度よりこのプロジェクトの日本版、「健康日本21」が行われているが、その「運動処方」の部分については、現場で用いるには具体性に乏しく未完成であ るという指摘が多い。特に、高血圧、糖尿病治療のための運動処方が、健康保険適用(保健全体の5%)の対象となった昨今、我が国の実状に合わせた運動処方の「具体的」な運動強度の基準の確立が求められている。この点のデーターを補強すべく、松本市は平成9年度から7年間、40歳以上の中高年を対象とした健康スポーツ教室を開催している。その成果と将来展望について述べ、健康スポーツの今後の予防医療における重要性について述べる。


■演題2
:同一筋内における運動昇圧反射の部位差の検討〜漸増運動中の骨格筋脱酸素化と心血管反応の変移点負荷の関連性に注目して〜

 水野 正樹先生(早稲田大学大学院 人間科学研究科D2)

 我々は,安静時および運動後回復期において,同一筋内における近位部と遠位部でhemodynamicsが異なることを報告した(Mizuno et al. J Appl Physiol: 2003; Mizuno et al. Jpn J Physiol: In Press).そこで,この同一筋内におけるhemodynamicsの不均一性と運動昇圧反射の関連性について検討したので紹介する.

 

 

★第8回 2004年3月10日

■演題Motor and Cognitive Development in Adolescence Concomitant with Pubertal Hormonal Changes

 演者:Patti Davies (Colorado State University)

 

 

★第9回 2004年4月20日

■演題1:健康づくり事業における行動科学の役割

 武田 典子氏(早稲田大学大学院 人間科学研究科)


■演題2:上腕三頭筋の力−速度関係の生体計測

 川上 泰雄先生(早稲田大学・スポーツ科学部助教授) 

 人間を対象として、最大努力の肘関節伸展動作中の筋線維短縮速度の実測を通じて、筋線維の力−速度関係を決定し、関節における観察結果から推定した筋の力−速度関係との比較を行った実験結果を紹介します。

 

★第10回 2004年5月18日

■演題スポーツ免疫学の課題

 演者:赤間高雄先生(早稲田大学・スポーツ科学部助教授)

 適度なスポーツ活動は免疫機能を高めるが、過剰なスポーツ活動は免疫機能を低下させる。この現象の測定と応用の可能性について、唾液分泌型免疫グロブリンAのデータを中心に解説する。

 

 

★第11回 2004年5月20日 

■演題MR Phase Contrast Study of the Differences in Structure-Function Relationship during Isometric and Passive Movement of the Lower Leg

 演者:Dr. Shantanu Sinha(Assoc. Prof., Dept. of Radiology,UCLA School of Medicine)

 

 

★第12回 2004年6月15日 

■演題1:変形性膝関節症患者の膝関節モーメント

 演者:内藤健二先生(早稲田大学・人間科学研究科博士課程)

■演題2:生活フィットネスの加齢変化;貯筋のススメ

 演者:福永哲夫先生(早稲田大学・スポーツ科学部教授)
 
健康で活発な日常生活を遂行する為には生活環境に適応できる身体能力が必要であ る(この能力を総称して「生活フィットネス」と呼ぶ事にする).「生活フィットネス」は加齢と共に低下するが,その低下パターンに個人差が大きい平均的な生活を送っている場合に比較して,日頃 活発な身体活動(スポーツ)を実施している場合には「生活フィットネス」は高い水準を維持する事が出来る.一方,運動不足状態が続くと「生活フィットネス」が低下し,また,病気などをきっかけにして急激な「生活フィットネス」の低下が観察される.「生活フィットネス」の中でも特に重要な要素に脚の筋機能があ る.筋機能は筋量により決まる。脚筋機能の低下は、「歩く」「階段を昇る」「立ったり座ったりする」といった日常生活動作の遂行に支障を来し、関節への負担を増し,ちょっとしたバランスの崩れを修正できず転倒の危険性を高める。 加えて,身体不活動は骨量の低下をも引き起こすので,骨折しやすくなり、ひいては寝たきり状態をもたらすことにもなりかねない。

正常な日常生活が維持できなくなる機能水準(仮に「寝たきりフィットネス」と呼ぶ事にする)に近づく事は生活能力に余裕が無くなる事を意味する.高齢者にとって「自立して生活できるだけの身体能力があればそれ以上の体力は不要である」との意見も聞く.しかし,病気ではなくとも「寝たきりフィットネス」に近い状態で生活する事は病気になった場合(例えば,風邪をひく,骨折をする等)の安静状態(身体不活動)がもたらすフィットネスの低下は「寝たきりフィットネス」を簡単に達成する事(脚筋機能低下)になり,その結果,病気は治ったけれども「歩けない」→「寝たきり」と云った状態を引き起こす事になる.一方,高水準の「生活フィットネス」所有者は病気などの状態になったとしても「寝たきりフィットネス」まで時間を稼ぐ事が出来,充分に回復する為の時間的余裕を有する事が出来る.いざと云う時の為の「貯金」と同じく,日頃 高い「生活フィットネス」を保証する身体諸機能を貯えておく事「貯筋」が必要である.

    高年齢になるに伴い筋骨格系機能が低下することは生物学的特性として致し方のないことではあ るが,その能力は日常生活習慣や環境条件などにより強く影響されると考えられる.加齢変化は人為的に変えられようもないが,その変化に身体運動は見事に影響を与える主要条件であ る.身体を構成する器官や組織の形態と機能に対する加齢変化を的確に把握し,自分の生活習慣にフィードバックする事が出来るかどうかは,まさしく各自の知性と教養によるものであ ろう.その為にも,ヒトの身体組成とその運動機能に対する加齢現象とその運動の効果に関する正確な情報を得、その知識を自らの身体を創造する為に生かされなければならない。

★第13回 2004年6月29日

■演題1:前額部への機械的外乱の予測可否による頸部筋反射応答の変調

 演者:倉持梨恵子先生(早稲田大学スポーツ科学部助手

 ヒトの運動にとって重要な頭部姿勢を制御する頸部筋を対象に,外乱の予測可否が筋の反射応答に与える影響を検討した.特に頭部への外乱に対する頸部筋の反射応答には,前庭器官と筋紡錘という異なる受容器からの入力情報が含まれることに着目し,分析した.

■演題2日本の相撲は古代オリンピックと赤い糸でつながっている

 寒川恒夫先生(早稲田大学スポーツ科学部教授)

 スイスのバーゼル大学の古典学教授カール・モイリは、紀元前8世紀に始まる古代オリンピックは、中央アジアの騎馬遊牧民の葬礼競技に発するとの仮説を提出した。この説を展開すると、日本古代の相撲と古代オリンピックとが結びつくことになるのだが‥‥

 

★第14回 2004年7月13日

■演題1:身体運動トレーニングによる骨格筋代謝機能向上のメカニズム

 演者:寺田 新 (早稲田大学スポーツ科学部,日本学術振興会特別研究員)

 食事などで摂取した糖質の80%以上が骨格筋で処理される.したがって,糖尿病(2型)は,骨格筋の代謝機能異常が原因となって発症すると考えられている.身体運動は,骨格筋の代謝機能を高めることから,糖尿病の予防および治療に効果的であ ることが良く知られている.しかしながら,身体運動が,骨格筋代謝機能を向上させる分子メカニズムはほとんど明らかとなっていない.我々は,身体運動が骨格筋代謝機能を向上させる分子メカニズムの解明,さらにはそれに基づいた運動処方プログラムの開発を目指して研究を行っており,本研究会では,これまでに得られた我々の研究結果の報告を行う.


■演題2
ローイング運動の健康科学

 演者:樋口 満先生(早稲田大学・スポーツ科学部教授)

 ローイング(ボート漕ぎ)は脚・体幹・腕などほぼ全身の筋肉を動員して行われる持久性運動であ り、ボート選手は筋量が多く高い呼吸循環器系機能を有することが知られている。そこで、日常規則的に行われるローイング運動は中高年者の健康増進、生活習慣病予防にとっても有効であ る可能性がある。我々は中高年ローイング愛好者を対象として、このような視点から研究を行っているので紹介する。

 

 

★第15回 2004年10月19日

■演題1:大学生の睡眠-覚醒パターンと精神的健康

 演者:浅岡章一先生(早稲田大学スポーツ科学部)

 大学生の就床時刻は他の年代と比較して後退していることが知られている.我々はそのような睡眠習慣を引き起こす要因について検討するとともに,睡眠習慣の乱れが大学生の精神的健康に与える影響を検討してきた.


■演題2
投球競技者の肩関節回旋腱板筋の形態・機能特性

 演者:長谷川伸氏(早稲田大学スポーツ科学部)

 投球やラケットスイングを伴うオーバーヘッド型スポーツの選手には棘下筋萎縮や、外転・外旋筋力の低下が示されることが多い。しかし、こうした現象が競技歴の長期化に伴う必然的なものかどうかは明らかではない。そこで中学〜大学生までの野球選手を対象に回旋腱板筋の形態・機能について検討した。


■演題3
発話動作における感覚フィードバック機構

 演者:誉田雅彰先生(早稲田大学スポーツ科学部教授)

 発話動作は脳の内部モデルに基づくフィードフォワード制御によると考えられている.一方、発話獲得時においては聴覚フィードバックが不可欠であ ることが知られている.ここでは、発話動作と感覚フィードバックの関係に関する知見を紹介し、これらの知見から導かれる発話動作の運動制御機構に関する仮説について述べる.

 

 

★第16回 2004年11月9日(火)

■演題1:てんかんとスポーツ

 演者:松浦雅人教授(東京医科歯科大学大学院)

 てんかんをもつ人のスポーツへの参加をめぐる問題については,小児期の発作頻発例や重複障害例にみられるVulnerable Child Syndrome,運動中の突然死,水泳中の事故などについて紹介する.また,運動によって誘発される発作や,バイオフィードバックを用いた発作の行動療法についても紹介したい.ついで,一般の人が運動中に生じることのあ るけいれん発作をめぐる問題についてふれたい.最後に,運動が脳機能に与える影響,とくに運動によって脳内ドーパミン活性が亢進し,てんかん発作の閾値を下げる可能性について考察したい.

■演題2オーバートレーニング症候群とうつ病

 演者:内田 直教授(早稲田大学スポーツ科学部) 

 オーバートレーニング症候群(OTS)は、長期間の過度なトレーニング負荷の結果出現する身体的、精神的な症候を呈する病態であ る。特に、精神的症候はうつ病に酷似しており、また発症の形式も長期の慢性的ストレスへの暴露という点で類似しているため、OTSの中枢における病態を理解するためには、うつ病研究の成果が大きな助けになる可能性があ る。近年のうつ病研究では、セロトニン仮説、グルココルチコイド受容体仮説などが提出されているが、これらとオーバートレーニング症候群研究の知見には共通した部分もあ る。これらを踏まえ今後のOTS病態解明の戦略としては、臨床的には経過の丁寧な観察、特に身体的症状と精神症状の関連;OTSの症例に対するSSRI等使用の治験の積み重ね;OTSに陥り易い性格傾向や小児期のストレスなどについての調査研究;最近のうつ病研究の方法(脳機能画像など)をOTS患者に当てはめるなどが考えられる。


★第17回 2004年12月14日(火)
■演題1:加齢に伴う力調節能力の変化

 演者:篠原 稔氏(コロラド大学ボゥルダー校 統合生理学部 上級研究員)

 加齢に伴って筋量や最大筋力,最大パワー,反応時間などの最大容量が低下することはよく知られている.ここでは,日常生活でより頻繁に行われる最大下収縮における,力を調節する能力の加齢に伴う変化とその神経生理機序を中心に発表する.


★第18回 2005年1月18日(火)
■演題1:手足の協調運動の解析
 
演者:大部隆志氏(早稲田大学人間科学部4年)
■演題2:運動制御における皮膚反射の意義
 
演者:小宮山伴与志先生(千葉大学教育学部教授)

★第19回 2005年2月22日(火)
■演題1:体重負荷による筋力トレーニング動作の筋活動水準の定量への試み
 
演者:高井洋平氏(早稲田大学大学院人間科学研究科)
■演題2:筋活動レベルが関節トルクに応じて決定する機序: 二関節筋の存在が意味すること
 
演者:野崎大地先生(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所運動機能系障害研究部)

 

★第20回 2005年3月11日(火) 2004年度修士論文発表コンテスト 

司会 内藤健二

1.谷端 淳(今泉研)

 Relation between muscle plasticity and muscle protein synthesis in rats.

2.若原 卓(福永研)

 腓腹 筋内側頭の形状および機能に及ぼす関節角度の影響

3.保原浩明(鈴木秀研)

 弾性エネルギーの入出力関係に基づく伸張−短縮サイクル

4.トンプソン雅子(中村好研)

 シニアのQOL向上を目的とした運動プログラム開発の試み

司会 太田めぐみ

5.本橋 紀夫(今泉研)

 Muscle strophy-induced changes of cathepsin and dipeptide levels in rats.

6.宇佐美 由布子(内田研)

 アスリートと非アスリートの単純運動による脳賦活の差異について:fMRI研究

7.久保田 潤(鳥居研)

 等尺性運動時における半腱様筋の筋活動動態

8.杉崎 範英(福永研)

  動的筋力発揮中の腱組織における弾性エネルギーの利用

9.坂本圭祐(鈴木秀研)

 野球の打撃動作におけるinterctionトルクの有効性

 

★第21回 2005年4月25日(月)

■演題1:一致タイミング制御におけるベイズ統合

 演者:宮崎真先生(早稲田大学人間総合研究センター)

  我々の外的・内的環境は、ノイズ (変動) に満ちている。身体運動制御系は、そのノイズをいかに処理しているのか?本発表では、一致タイミング制御にあ たって、ヒトの運動制御系は、ベイズ統合という方略を用いて、その最適処理を行っていることを示す。

■演題2 上腕動脈阻血が体性感覚誘発電位とα運動神経に与える影響

 演者:宝田雄大先生(早稲田大学スポーツ科学学術院)

 虚血の末梢神経の伝導に対する影響を調べるために、自然血流下と虚血下での正中神経刺激によるSEPとM波の比較をおこなった。SEPの潜時及び最大振幅とM波の積分値を両条件で比較したが変化はみられなかった。

 

★第22回 2005年5月16日(月)

■演題1Neural Correlates of Symmetry Perception in Humans and Monkeys

 講演者:Yuka Sasaki, Ph. D.NMR center, Massachusetts Genral Hospital, Harvard Med School. MA, USA.)

              Humans often create and appreciate visual symmetry in their environment, and the underlying brain mechanisms have been a topic of increasing interest. Here, symmetric versus random dot stimuli produced robust fMRI activity in higher-order regions of human visual cortex (especially areas V3A, V4, V7 and LO), but little activity elsewhere in brain. This fMRI response was found both with and without attention controls. Moreover, it was highly correlated with the psychophysical perception of symmetry. Similar symmetry responses were found using line-based stimuli, and dot stimuli at a wide range of stimulus sizes and geometric configurations. Weaker symmetry responses were found in analogous regions of macaque visual cortex, using fMRI techniques with higher sensitivity. This evidence suggests that visual symmetry is specifically enhanced in human brain, but that the underlying neural mechanisms may nevertheless be resolvable in non-human primates.

 

★第23回 2005年5月31日(月)

■演題1: 複数体肢運動時の循環系調節

 演者:時澤 健氏(人間科学研究科博士課程2年・村岡研究室)

 ヒトが日常で行う動作やスポーツ活動では,複数の体肢を同時に働かせて目的の運動を行っています.しかしながら,そのときの循環系応答がどのように調節されているかについては,十分に明らかとなっていません.本研究では,運動によって活性化される骨格筋内の感覚受容器に注目し,末梢血流の配分にどのような働きを持つかについて検討しました.

■演題2:筋と腱の強さの関係

 演者:村岡 哲郎氏(早稲田大学先端科学・健康医療融合研究機構)

 筋力が大きいほど腱は硬い?腱は太いほど硬い?スポーツ動作を通して筋・腱に高い負荷を長年に渡ってかけ続ければ,筋・腱は強くなる?これらの疑問について,横断的研究により検証を試みた.

 

★第24回 2005年6月28日(火)

■演題1: レジスタンストレーニングと動脈

 講演者: 宮地 元彦先生(独立行政法人国立健康栄養研究所)

 習慣的な有酸素性運動は動脈硬化や高血圧などの循環器病の危険因子を改善することが知られている。その一方で、もう一つの運動形態であ るレジスタンス運動の実施が循環器病危険因子にどのような影響を及ぼすかについては十分明らかになっていない。我々は、横断的、縦断的研究手法を用いて、レジスタンストレーニングが動脈のコンプライアンス(柔軟性)や血圧に及ぼす影響について検討した。その結果、レジスタンストレーニングは頚動脈や大動脈といった中心動脈のコンプライアンスを低下させることが明らかとなった。血圧には影響を及ぼさなかった。また、中心動脈コンプライアンスは加齢とともに低下して、循環器病を引き起こす原因となるが、レジスタンストレーニング実施者では加齢による中心動脈コンプライアンスの低下が運動しない人より速いことも示唆された。

 

★第25回  2005年7月25日(月)

■演題1:陸上競技短距離選手に見られる加速走中の下肢スティフネスの変化

 講演者: 土江 寛裕先生(富士通,早稲田大学スポーツ科学学術院非常勤講師)

 走パフォーマンスを評価する際,Spring-Massモデルを用い,下肢のスティフネスとしてシンプルに表すことは,複雑な走運動を表すのに有効であ る.下肢のスティフネスは走速度やピッチ,ストライドのに伴い変化することは報告されているが,加速中の動作や速度の変化に伴うスティフネスの変化は明らかになっていない.本研究では,五輪代表短距離選手における,加速中の速度に伴うピッチとストライドおよび下肢のスティフネスの変化を調べることを目的とする.

■演題2:短距離のモデリング ―コーチングの視点からー

 講演者: 磯 繁雄先生(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)

 

★第26回  2005年10月25日(火)

■演題「トップスイマーへのサポート活動(仮称)」

 演者:岩原文彦先生 (日本体育大学助手)

 岩原先生は チーム北島の参謀役として活躍。早稲田大学スポーツ科学部の非常勤講師もなさっておられます.

■演題「競泳のコーチング(仮称)」

 演者:奥野景介先生 (早稲田大学スポーツ科学学術院助教授 早稲田大學水泳部 競泳部門監督)

 

★第29回  2005年11月1日(火) 

■演題「高次脳機能障害者を守るということ」
演者:中島八十一先生 (国立リハビリテーションセンター感覚機能研究部部長)

 

★第30回  2005年11月15日(火)

■演題Point cluster法による6自由度膝関節微細運動の計測」

演者:井田 博史先生(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所運動機能系障害研究部)

   Point cluster法(Andriacchi et al, 1998)は新規の動作計測法であり,身体部分表面に貼付した5〜20個の多数のマーカ座標データから,膝関節の3次元6自由度微細変位を観察することが可能である.

■演題「膝靱帯損傷の受傷メカニズムービデオからの解析—」

演者:福林 徹先生 (早稲田大学スポーツ科学学術院)

■演題Point Cluster Tecnique の臨床応用
−片脚着地における性差およびトレーニング効果−」

演者:永野 康治氏 (早稲田大学人間科学研究科)

★第31回  2005年12月6日(火)

■演題「ヴィクトリア/エドワード朝のイギリスにおける柔術ブーム-身体文化・社会ダーウィニズム・帝国的身体-」

演者:岡田 桂氏 (早稲田大学スポーツ科学学術院)

 19世紀後期から20世紀の初めにかけて、イギリスで柔術ブームが沸き起こったことは、あ まり知られていない。本発表では、なぜこの時期に、遠い東洋の小国・日本の格闘技がイギリスの人々の興味を引き、浸透していったのかについて、同じく当時ブームとなった「身体文化(Physical Culture)」との関係から考察する。

■演題「17世紀のオリンピック:イギリスの伝統的競技会「コッツウォルド・ゲーム」の起源をめぐって」
演者:石井昌幸先生 (早稲田大学スポーツ科学学術院)

 イギリスで毎年5月、通称「コッツウォルド・オリンピック」と呼ばれる小さな競技会が開かれている。この競技会は1612年にロバート・ドーヴァーという人物によって創始されたと伝えられる。発表では、この競技会の起源を当時の政治的・宗教的文脈のもとに考察する。

★第32回  2006年1月31日(水)

■演題:「各種スポーツ(ボート・カヌー・陸上競技・柔道・相撲・ショートトラック等)及び学校体育の指導へのバイオメカニクス研究の導入・貢献」

演者:植屋清見教授 (山梨大学教育人間科学部)

 

★第33回  2006年2月15日(水)
2005年度修士論文発表コンテスト

15:00 開会の挨拶  内藤健二 (修士論文発表コンテスト実行委員)

<セッション1> 座長: 時澤 健 (村岡研究室)

15:03 大室康平 (彼末研究室) 野球のバッティングの再現性

15:16 中植弘満 (原田研究室) ジャパンラグビートップリーグ観戦者の観戦動機に関する研究

〜観戦動機とアイデンティフィケーションの関係モデルの検討

15:29 赤木亮太 (福永研究室) 安静時と等尺性筋活動時における肘関節屈筋群の筋形状と肘関節屈曲トルクの関係

15:42 福田 誠 (内田研究室) 発揮筋力の視覚的フィードバックが最大筋力発揮と前頭前野ヘモダイナミクスに及ぼす影響

15:55 植松 梓 (鈴木研究室) ヒトのヒラメ筋におけるホフマン反射の運動後増強について

16:08 藤本恵理 (樋口研究室) 高強度・短時間運動トレーニングによる骨格筋GLUT-4の発現の機序に関する研究

16:21 秋山裕介 (鳥居研究室) 身体的特徴及び投球動作から見た成長期の野球選手における肘障害の発生要因

<セッション2> 座長: 武田典子 (中村研究室)

16:43 加藤えみか (川上研究室) ストレッチングと等尺性筋活動が筋および腱の伸長性に及ぼす影響

16:56 小林裕央 (鈴木研究室) 野球の投球動作における上肢帯の機能と役割

17:09 眞榮里耕太 (寒川研究室) 小学校体育における社会性の育成

17:22 勝亦陽一 (福永研究室) 野球選手における筋形態および筋機能からみた投球速度の決定要因

17:35  山下麻里子 (野嶋研究室) 初心者の身体表現における認識過程の変化

17:48 荒木智子 (鳥居研究室) 足部形態の発育・アーチ構造の発達と関連因子の検討  

18:15 表彰式&懇親会

1位: 福田 誠   

2位: 加藤えみか   

3位: 大室康平   

特別賞: 荒木智子

 

★第34回  2006年3月13日(月)

■演題:ヒトの伸張性筋活動に伴う筋損傷と遅発性筋痛

演者:野坂和則先生

    Edith Cowan University,School of Exercise, Biomedical and Health Sciences(Australia)

 収縮している筋が伸張される動作を伴う運動(伸張性運動)によって、筋の微細構造の変化が生じ、筋機能の低下、筋の腫脹、遅発性筋痛(DOMS)、筋タンパク質の血液中への逸脱や、核磁気共鳴や超音波画像の変化も生じる。本発表では、いくつかの伸張性運動モデルに伴うこれらの変化について示し、伸張性運動に伴う筋損傷と適応のメカニズムを考察し、筋損傷やDOMSの予防、対処法について最近の知見を紹介したい。

★第35回  2006年4月5日(水)

■演題Effects of practice and time pressure in dual tasks studied with ERPs

演者:Werner Sommer教授(ドイツ・フンボルト大学)

        In many situations we have to simultaneously process and respond to multiple pieces of information. The problems arising in multitasking situations have been experimentally studied in the overlapping task paradigm, usually employing behavioral measures like reaction times. A more detailed view of the mechanisms at work in such situations is provided by recordings of electrical brain potentials, such as the lateralized readiness potential.  Recently we have conducted experiments on the mechanisms of two possible strategies of overcoming dual task costs, time pressure and practice. As it turns out both strategies are similarly effective on a behavioral level, but the underlying mechanisms are to a large part quite different.

 

★第36回  2006年4月26日(水)

■演題1:骨格筋ミオシン重鎖成分へのHeat Shock Protein 72の関与

演者:緒方 知徳先生(早稲田大学スポーツ科学学術院助手)

 生体へのストレスに対する防御応答の代表的なものとしてHeat Shock Protein(HSP)72の発現増加が挙げられる。HSP72はストレスに対する保護機能のみならず生体タンパク質の形成を補助する分子シャペロンと呼ばれる機能も有していることが知られている。本研究では,運動や発育などによって起こる身体の適応現象(筋肥大や筋線維タイプの変化)へのHSP72の関与を検討した。

■演題2:跳躍能力の優劣はいつ何によって決まるのか?

演者:田内健二先生(早稲田大学スポーツ科学学術院助手)

 本研究は,運動課題の異なる2種類の跳躍運動,すなわち垂直跳とリバウンドジャンプの遂行能力をもとにして個人の跳躍能力の特性を評価し,その特性に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的としている.本発表では,これまでの成果および途中経過を発表する.

★第37回  2006年5月18日(木)

■演題1:睡眠中の眼球運動と夢見の精神生理学的検討

演者:小川景子先生(スポーツ科学学術院)

 私達が寝ている間に見る"夢"について,夢を見ているときに脳はどのような活動をしているのか,脳波を使って検討し,夢の発生メカニズムを解明したいと考えています.具体的には,夢をよく見る時期であ るレム睡眠期に焦点を当てて,レム睡眠中に生じる急速眼球運動とそれに関連する脳電位活動を検討した結果をご紹介します.

■演題2:運動トレーニングで骨密度は変化するか?

演者:劉 莉荊先生(早稲田大学スポーツ科学学術院助手)

 pQCT法(末梢骨定量的CT法)を用いた研究では、長期間の運動トレーニングによる骨強度の増大は骨の体積骨密度の増大ではなく、骨形態の変化によるものであ ると考えられる。今回の発表は、現在までの様々な実験結果と先行研究を纏めて、総説として紹介する。

★第38回  2006年5月31日(水)

■演題Surgical treatment of gait disturbances in neuromuscular diseases based on gait analysis

演者:Dr. Hyun Woo Kim

Department of Orthopaedic Surgery, Severance Hospital, Yonsei University College of Medicine, Seoul, KOREA)

 

★第39回  2006年6月28日(水)
■演題1:日常生活動作を利用したトレーニング動作の有用性
演者:高井 洋平氏(早稲田大学スポーツ科学研究科 博士後期過程)
筋量及び筋力を増加させるためには日常生活水準以上の筋活動水準が必要である.そこで,体重のみを負荷とする日常生活動作を利用したトレーニング動作が,トレーニングとして有用であるか否かについて,筋電図を用いて検討した.

■演題2:学問におけるスポーツ科学の位置づけ

演者:高井 昌吏先生(早稲田大学スポーツ科学学術院助手)
「社会学」という文科系の一分野(「村社会」と言いかえてもよい)に属していたわたくしは、早稲田大学スポーツ科学部助手に着任して以来、いわゆる理系の学問と接するようになった。「文理融合」という声が高まっているにも関わらず、わたくしは不勉強がたたり、理系の方の発表がほとんど理解できないこともしばしばである。テクニカルタームを知らない、あたまの回転が遅いなど、理由は多々あるであろう。しかしながら、自身の学問と皆様方(理系)の学問のあいだに、ある種の問題意識を共有したいという欲望にかられていることも事実である。本発表では、「社会学村」という立場からみたスポーツ科学について言及し、皆様方にご指導、ご鞭撻をいただければと考えている。


★講演会 兼 第40回  2006年6月23日
■演題1:3次元動作解析におけるトルク非直交分解法(3次元投球動作への適用)
演者:平島雅也氏(東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻)
 スポーツバイオメカニクスでは、観測した運動データから関節トルクを算出するという逆動力学計算が広く用いられてきた。従来の3次元動作解析では、トルクベクトルを直交3成分に分解する方法が一般的である。しかし、本研究では、トルクと3次元関節回転の因果関係を正確に把握するためには、トルクベクトルを非直交3成分に分解する必要があることを示す。また、関節トルクだけではなく、セグメント間の相互作用によって生じる相互作用トルクの算出法についても述べる。最後に、この方法を3次元投球動作に適用し、スポーツスキルの評価や指導への有効性についても考察する。


★第41回  2006年7月12日

■演題1:長時間運動時の体温調節と全身循環を改善するスポーツウエア
演者:鷹股 亮先生(奈良女子大学生活環境学部助教授)
 立位運動を特に暑熱環境下で長時間行うと、一定負荷で運動を行っていても体温上昇に伴い心拍数が徐々に上昇する。これは、cardiovascular drift として知られているが、一定運動を行っていても長時間運動時には時間とともに相対的運動強度が高くなることになる。また、立位での運動では一定以上の体温になると、体温上昇に対する体温調節反応の増加が抑制される。即ち、体温調節反応のレベルオフが起こる。体温調節反応の抑制や心拍数の増加の少なくとも一部には、中心血液量の減少が関与していると考えられている。そこで、我々はスポーツウエアを用いて静脈還流量を維持して中心血液量の減少を抑制することにより、長時間運動時の体温調節と全身循環を改善することが出来るのではないかと考え、実験を行った。スポーツウエアを用いることにより、体温調節反応や全身循環を改善することが出来る可能性が示されたので紹介する。

■演題2:基礎代謝と身体組成の関連および加齢・閉経の影響
演者:薄井 澄誉子先生(早稲田大学スポーツ科学学術院助手)
 近年、中高年者の生活習慣に関連する疾病が問題となっている。それらを予防し、健康で充実した生活を営むためには、年齢や生活活動強度に基づく適切なエネルギーを摂取し、消費するというサイクルの中での生活が望ましい。それを実現するためには、その基準となる基礎代謝量(basal metabolic rate; BMR)についてよく知ることが重要である。本発表では、健康な中高年女性を対象としたBMRと身体組成および加齢・閉経との関連を報告する。

 


★第42回  2006年11月28日

■演題1:超音波法による骨格筋の定量とフィールド研究への応用
演者:真田 樹義先生(早稲田大学 生命医療工学研究所 講師)
 現時点では、磁気共鳴映像法(MRI法)やコンピュータ断層撮影法(CT法)が骨格筋の定量法として最も精度の高い測定方法である。しかし、フィールド研究に応用できる安価でかつ正確な骨格筋の定量法は現在でも開発されていない。超音波法は、生体での筋サイズを正確に評価できるとともに、その装置はコンパクトで持ち運びができ、比較的安価であり、測定にかかる時間もきわめて短いという特徴がある。そこで本研究は、超音波法を用いた簡易で正確な骨格筋量推定法を開発した。超音波法による推定値は、MRI法による値との間に男女とも有意な相関関係が認められ、独立した被験者においても、推定値と実測値との間には有意な差は認められなかった。結論として、超音波法による筋組織厚は全身および局所骨格筋量を正確に推定することができた。さらに本研究では、大規模な被験者を対象とした日本人における骨格筋量の参照値を提示するとともに、生理学的パラメーター(有酸素能力や骨量)における骨格筋量の標準化(normalization)について検討した。

■演題2:大学相撲選手の器官・組織レベルからみた身体組成およびそれらを用いた安静時代謝量の推定
演者:緑川 泰史先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)
 1950年代から、スポーツ選手の身体的特徴を探る研究は、体重を体脂肪量と除脂肪量とに2分類する方法で評価が行われてきた。その研究成果の一つとして、スポーツ選手は一般成人に比べ、除脂肪量の絶対値が大きいことが広く知られるようになった。しかし、50年以上経つ現在でも、スポーツ選手と一般成人との間にみられる除脂肪量の差の「中身」について明確に示したデータは報告されていない。これまでの身体組成研究では、両者の除脂肪量の差は、そのほとんどが筋肥大による骨格筋量の増加であり、臓器重量にはほとんど違いがないと考えられてきた。そこで本研究は、大きな除脂肪量を有する大学相撲選手を対象に、MRI法を利用して器官・組織レベルからみた身体組成、特に骨格筋および肝臓・腎臓の量的特徴を一般成人との比較から明らかにした。その結果、大学相撲選手は骨格筋量だけでなく、肝臓・腎臓重量も一般成人より大きいという特徴が観察された。この結果は、継続的なレジスタンス・トレーニングや高強度トレーニングを行うと、骨格筋量だけでなく、臓器重量も同時に増加するという新たな可能性を提示した。さらに、この研究成果を応用し、古くからの研究テーマである安静時のエネルギー代謝とスポーツ活動との関連性について、特に大型スポーツ選手の安静時代謝量が高い値を示す原因解明に取り組んだ。


★第43回  2006年12月26日
■演題1:都市における運動空間としての「公園」に関する研究−日比谷公園に注目して−
演者:小坂 美保先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)
 本研究は、1903(明治36)年に日本で初めて洋風公園として誕生した日比谷公園に焦点を当て、公園という空間が都市においてどのような目的で設置され、どのような役割を果たしていたのかについて検討していくことを目的とするものである。
日比谷公園に注目する理由は、近代都市空間を具現化する装置としてのこの「公園」に、開園当初から、園内施設として「運動場」・「運動器械」(青年用5種、幼年用3種の計8種)が設置されていたからである。日比谷公園は、明治後半以降の日本の都市公園のモデルともいわれる。このような場所に運動空間としての機能が付与あるいは期待されたのはなぜなのか。誰によってどのような目的のもとに運動施設が設置されたのか。また、公園や運動空間としての「公園」建設が、当時の国家レベルの思想とどう結びついていくのか。さらには、運動空間としてどのような演出がされ、これらの空間を利用者がどのように受容していたのか、といった視点から公園についてみていきたい。

■演題2:運動による免疫細胞の分布変化のメカニズムとその意義について
演者:奥津 光晴先生(早稲田大学 生命医療工学研究所 講師)
 身体運動は生体の免疫応答を変化させます。その原因の1つとして免疫細胞の体内分布変化があげられます。細胞の分布および移動を制御する中心的役割を担っているのがケモカインとケモカイン受容体の相互作用です。我々は、一過性の高強度運動で増加するコルチゾールがリンパ球や単球に発現するケモカイン受容体を増強させることを明らかにしました。また単球は、動脈壁へ浸潤後、酸化LDL等を取り込むことで動脈硬化症を発症することが知られていることから、コルチゾールによる単球のケモカイン受容体の発現の増強は、免疫応答の制御のみならず、循環器疾患の発症をも制御する可能性を示唆しています。本研究会では、これらの内容と現在行っている動物実験から得られた最新の知見を合わせて紹介します。


★第44回  2007年1月30日
■演題1:体操競技の運動技術
演者:村田 浩一郎先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)
 男子体操競技は6種目(床、鞍馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒)からなり、跳馬を除く5種目は、約10個の「技」で構成される「演技」として実施される。また、その勝敗は審判員のシステマティックな採点によって序列化されることで決定する。審判員は採点規則(2006年度版採点規則)をもとに、価値点(A得点)の算出と実施に対する減点(B得点)を行い、その合計が競技者の得点となる。したがって、競技者が高得点を獲得するためには、高難度の技をできるだけ多く、かつ減点されずに実施しなければならない。今回はいくつかの種目を取り上げ、運動技術に関する最新情報と、その解明への糸口となるであろう研究アプローチについて紹介する。

■演題2:1910年代における「呼吸健康法」の流行について
演者:佐々木 浩雄先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)
 
1910〜20年代には、国家による健康・体力向上のための施策が推進される一方で、呼吸法、強健術、食餌療法、霊術など様々な健康法や癒しの技法が広がった。その中でも「岡田式呼吸静坐法」「藤田式息心調和法」「二木式腹式呼吸法」が三大健康法と呼ばれたように、「呼吸健康法」は精神修養的な意味合いも持ちつつ、肺結核予防や虚弱体質改善を目指す「積極的衛生」の方法として1910〜20年代に流行した。これらは、技法に違いはあるものの、いずれも〈丹田〉や〈気〉といった概念を用いて身体・精神を総合的に捉えようとしている点、坐を伴い、丹田に意識をおく腹式呼吸法を基本としている点で共通している。
本発表では、急速な近代化を進める社会において健康観がどのように変容し、「呼吸健康法」にみられる伝統的な身体技法がどのように位置づけられたのかという関心から、1910年代における「呼吸健康法」流行の背景について述べ、そこから読みとれる生理学・解剖学的知見に立った近代的身体観と心身一如の思想に裏づけられた東洋的身体観との揺らぎの状況について論ずる。


★第45回  2007年2月27日
兼 2006年度修士論文発表コンテスト

<セッション1>座長:時澤 健 (村岡研究室)

15:05 設楽 佳世 (福永研究室)
      演題名:光学非接触式3次元人体形状計測法に基づく日本人女性の体表面積の推定式作成
15:18 高橋 恵理 (樋口研究室)
      演題名:若年成人女性の身体組成と基礎代謝量について
15:31 大部 隆志 (彼末研究室)
      演題名:動作の方向と筋活動のタイミングが同側手足の協調動作に与える影響
15:44 岡田 依子 (寒川研究室)
      演題名:プロ野球私設応援団の文化論−福岡ソフトバンクホークス−
15:57 中島 哲也 (志々田研究室)
      演題名:近世における起倒流柔術の歴史的実態
16:10 池端 宏之 (トンプソン研究室)
      演題名:スポーツ、アイデンティティ、「国民」概念−その関係と歴史−

<セッション2>座長:勝亦 陽一 (福永研究室)
16:35 深野 真子 (福林研究室)
      演題名:足部運動解析の新展開
16:48 光川 眞壽 (川上研究室)
      演題名:反復的な足関節底屈運動中の腓腹筋内側頭およびヒラメ筋の動態からみた筋力低下の規定因子に関する研究
17:01 金松 慶 (内田研究室)
      演題名:平面的および空間的位置関係の知覚の相互変換に関するfMRI研究
17:14 梶川 悟 (村岡研究室)
      演題名:Hypoxia-inducible factor-1αの一塩基多型が低酸素刺激に対する応答の個人差に及ぼす影響
17:27 山脇加菜子 (中村ょ研究室)
      演題名:携帯電話のメール機能を活用したウォーキング行動促進プログラムの開発
17:40 高田 一慶 (原田研究室)
      演題名:わが国の球技系トップリーグ観戦者に関する研究−クラスター分析を用いた観戦者の分類−

優勝 
光川 眞壽 (川上研究室)
演題名:反復的な足関節底屈運動中の腓腹筋内側頭およびヒラメ筋の動態からみた筋力低下の規定因子に関する研究
2位 深野 真子 (福林研究室)
演題名:足部運動解析の新展開
3位 設楽 佳世 (福永研究室)
演題名:光学非接触式3次元人体形状計測法に基づく日本人女性の体表面積の推定式作成
特別賞 池端 宏之 (トンプソン研究室)
演題名:スポーツ、アイデンティティ、「国民」概念−その関係と歴史−


★第46回  2007年4月24日
■演題1:生活習慣病に関連するミトコンドリアゲノム多型およびハプログループ
演者:福 典之先生(東京都老人総合研究所 健康長寿ゲノム探索研究チーム 主任研究員)
 ミトコンドリアは独自のDNA (mitochondrial DNA, mtDNA)を持ち、核DNAとは独立して複製される。また、mtDNAの遺伝様式は母性遺伝である。mtDNAを詳細に解析することにより約15万年前にアフリカで誕生した人類がどのような経路を辿って日本まで到達したかを知ることができる。すなわち、北方経由で寒冷に適応した人類か否かなどを知ることも可能である。このような人類の移動により細胞内小器官であるミトコンドリアもその環境に適応するために多様な変化をしたと推定される。このようなミトコンドリア機能の違いがエネルギー代謝能を変化させ、現在においては、生活習慣病などに対する易罹患性に影響を及ぼしていると考えられる。我々は、これまでに、生活習慣病や長寿および陸上競技長距離選手などを対象にmtDNA多型との関連性について検討してきた。そして、mtDNA多型の解析からミトコンドリアハプログループに分類すると、いくつかのハプログループは糖尿病・メタボリックシンドロームおよび長寿と関連することが分かってきた。また、日本人の若干名ではあるがトップアスリートのミトコンドリアハプログループについても解析した。本研究会ではこれまでに我々の研究グループで得られた知見について紹介する。

■演題2:Environmental and Genetic Determinants of Elite Athletic Performance:Examples from Africa
演者:Robert Scott先生(Post-doctoral Researcher, Faculty of Biomedical and Life Sciences, University of Glasgow)
 
At every major international athletic competition, it is likely that the majority of finalists in the 100m sprint will be of west African origin, and that those enjoying success in distance running events will be of east African origin. Many explanations have been proposed for this phenomenon, including the belief that African athletes have a genetic advantage in sport. While it is becoming evident that there is a genetic component to the determination of elite athletic performance, the extent of its influence is unclear. Also, the extent to which genetic differences between populations account for inter-population differences in performance are also unknown. In this talk, I shall review the available evidence for the domination of African athletes in international sport and present data from our studies of elite African athletes investigating both environmental and genetic determinants of their success


★第47回  2007年6月26日
■演題1:ナッブートの民族誌
演者:瀬戸 邦弘先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)
 
エジプト・アラブ共和国の上エジプト地方では聖者を祝う祭りに際して、ナッブートと呼ばれる民族スポーツの競技会が開催される。ナッブートとは本来アラビア語で「杖」を指す言葉で、上エジプト人は祝祭の折にこの杖を用いて、剣道やフェンシングのような形態の格闘技の試合を行う。本研究ではこのナッブートの競技会を通して、当該地域の人々が如何に地域に対するアイデンティティを確立し、それを維持・再生産するプロセスを考察する事をその目的とする。また、本競技には実修者達のみに共有される身体観が存在し、その身体観を基とした身体技法が確立されており、現地における参与観察を通して、研究者のエティックな視点はもとより、実修者のみが知りうるイーミックな視点の両視点からのナッブートの研究も行われる。
本研究ではナッブートを包含する祭り全体という大きな枠組みから、競技会の運営に関わる人々、参加者、競技空間など競技会を取り巻くさまざまな構成要素もあわせて考察が展開され、その意味では伝統な民族スポーツ「ナッブート」を巡る総合的な文化研究といえる。

■演題2:生体電気インピーダンス法を用いた筋量および腱伸長量測定法の開発
演者:太田 めぐみ先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)
  トレーニングや加齢により骨格筋量(以下、筋量)や腱伸長量は変化する。筋量や腱伸長量の簡便な推定法として、生体電気インピーダンス(bio-electrical impedance:BI)法が適用可能かどうかを検討した
○体幹部筋量の推定:全身重量のおよそ50%を占める体幹部の筋量を推定するため、新たなZ誘導法を開発・検討した。競技者12名を含む28名から体幹部のZを誘導し、体幹のBI indexを算出した。その結果、BI indexとMRI法で求めた筋体積の間には有意な相関関係が認められた(r = 0.844, p<0.05)。また得られた関係式(体幹筋体積の推定値= 143.6×体幹BI index + 45.2)に交差妥当性があることが示された。
○腱伸長量推定に関する研究:等尺性肘関節屈曲筋力発揮中の上腕部のZを誘導し、超音波法で定量した腱長変化との関係を検討した。両者の間には非線形の関係が認められ(y = - 0.044x2 + 0.704x + 0.111, R2 = 0.988, p < 0.001)、BI法で腱長変化が推定可能であることが示された。しかしながら、Z変化の感度には個人差が大きいことから(0.24〜0.89% / mm)、腱伸長量の推定式確立に向けては、更なる検討が必要である。


★第48回  2007年7月24日
■演題1:戦後の雑誌にみる女相撲に関する言説とその変遷
演者:一階 千絵先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)
日本の民族スポーツである相撲は、男性だけでなく女性も行ってきた。しかし女性の相撲(以下「女相撲」と表記)は猥褻な見世物とされ、従来の相撲文化研究において研究対象とされることが少なかった。
本研究では、戦後に発行された雑誌の記事をもとに女相撲に付された猥褻的イメージの様相とその変遷を追った。
女相撲に関する記事を多数掲載していた『奇譚クラブ』(1947〜1975、曙書房)における記事には、女性の格闘に見出す美をさす「女闘美(めとみ)」と称する概念を通じ女相撲の理想像を描くものが多数見られた。寄稿家により美や魅力を見出す点に多少の違いはあるものの、女相撲の魅力をエロティシズムと密接な関連を持つものとして語る姿勢は共通している。
同誌以後の雑誌においては、女相撲は美意識よりもサディズム・マゾヒズムとの関連のもとに競技性が排除される文脈で語られることにより、女相撲は力と技を競うスポーツではなく特殊な性的娯楽の一形態であるとする言説の発生が見られる。

■演題2:自律神経による心拍数調節:システム解析を用いた内部構造の理解
演者:水野 正樹先生(国立循環器病センター研究所 先進医工学センター 循環動態機能部)
 心拍数は交感神経と迷走神経による二重の神経性調節を受けている。交感神経活動の亢進は心拍数を増加させ、迷走神経活動の亢進は心拍数を減少させる。それぞれの神経への直接電気刺激に対する心拍数応答を観察すると、交感神経と比して迷走神経の方が速い心拍応答を示す。この現象は、伝達関数を用いたシステム解析によって、交感神経刺激から心拍数への伝達関数は2次遅れ低域通過特性で、迷走神経刺激から心拍数への伝達関数は1次遅れ低域通過特性で近似することができ、それぞれの神経系の応答速度の差異を定量的に説明(システム同定)することが可能である。さらに、これらの心拍数の動的特性の差異は、それぞれの神経系における神経伝達物質の洞房結節への作用機序の違いや、その下流に存在する細胞内伝達機構の差異によるものであると考えられている。今回は、迷走神経が有する迅速な心拍数制御を担う内部構造(サブシステム)の理解に焦点を絞り、システム生理学的研究法を用いて概説する。


★第49回  2007年11月27日
■演題1:上・下肢の律動的な協調運動の制御機構
演者:坂本 将基先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)
 
ヒトの歩行時には,上肢と下肢の律動的な協調運動がみられる.無意識な歩行状態では上肢と下肢が180度の位相差をもって対称的に動くが,ヒトは歩行時に上肢を意識して止めることも,また足と同じ方向に動かすことも可能である.このような上肢と下肢の協調関係が,どの程度無意識に(反射性に)調節されているのか,また,脳を中心とした意識的な制御がどのように遂行されているのかについては不明な点が多い.
近年,ペダリング運動を制御する神経機構が歩行運動のそれと類似する可能性が示唆されたため,ペダリング運動がヒトの歩行運動の神経機構を検討する運動モデルとして用いられてきている.さらに,上肢と下肢のペダリングを同時に遂行することにより,歩行中にみられる上・下肢の律動的な協調状態を再現する試みもなされている.そこで本研究では,上肢と下肢の同時ペダリング運動を用いて,上・下肢の律動的な協調運動にかかわる神経機構について検討を加えた.特に,脳および脊髄神経機構の活動を詳細に観察した.


■演題2:
動脈圧反射と筋機械受容器反射の相互作用
演者:山元 健太先生(早稲田大学 先端科学・健康医療融合研究機構)
 動脈圧反射は日常生活における血圧の安定化に極めて重要な機構である。この動脈圧反射は、頚動脈洞や大動脈に存在する圧受容器が血圧を感知しながら、自律神経系を介して血圧を調節する負帰還調節機構である。身体活動中は動脈圧反射に加え、上位中枢からのcentral command、活動筋からの求心性入力が循環中枢で統合され、血圧が調節されるが、その統合様式は複雑である。本研究は平衡線図解析や伝達関数(白色雑音法)という手法を用いて、活動筋からの求心性入力の一つである筋機械受容器反射が、動脈圧反射の静的および動的入出力関係に及ぼす影響を定量化した。麻酔下のウサギにおいて、圧受容器が存在する頚動脈洞を体循環から外科的に分離することにより、負帰還機構のループ(閉ループ)を開ループの状態にし、筋機械受容器反射活性化中の動脈圧反射の入出力関係を同定した。その後、開ループ状態で同定した動脈圧反射の静特性と動特性を解析的に閉ループ(生理的状態)に戻し、二つの反射の統合様式を検討した。その結果、筋機械受容器反射は、動脈圧反射による血圧調節を高速化させることが示唆された。また、この活動筋からの求心性入力などが存在しないと、ランニングや自転車運動のような動的運動時の血圧が低下する可能性が示された。


★第50回  2007年12月18日
■演題1:持久的トレーニングに対する骨格筋適応における転写因子PPARδの役割
演者:寺田 新先生(Washington University School of Medicine, Section of Applied Physiology,早稲田大学 先端科学・健康医療融合研究機構)
 
骨格筋に発現している転写因子PPARδは持久的トレーニングによって増加することが報告されている。しかしながら、その機能については不明な点が多く残されていた。
そこで、本研究では、持久的トレーニングに対する骨格筋の適応、特に糖・脂質代謝機能の改善機序にPPARδが関与しているという仮説のもと、分子生物学的手法を用い、マウスの骨格筋組織および培養骨格筋細胞にPPARδを高発現させ、どのような変化が生じるかを検討したので、その結果を報告する。


■演題2:高齢期からの運動による心臓・血管への効果と分子機序
演者:家光 素行先生(奈良産業大学 教育学術研究センター ・ (独)国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム)
 加齢に伴い,心臓・血管の機能は低下し,心血管疾患の罹患率を増大させる。その予防策の一つとして,習慣的な運動が注目されている。運動による心臓・血管の機能,形態,代謝への改善効果には,巧みな分子制御により,関連する遺伝子やタンパク発現の調節が行われていることが考えられるが,その詳細は不明である。
 我々は,老齢ラットを用いた高齢期からの運動トレーニングによる検討から,(1)心収縮能の改善にthyroid hormone receptorによるミオシン重鎖や筋小胞体Ca2+-ATPaseの遺伝子発現増大の関与,(2)心収縮に必要なエネルギーを産生する機能の改善にPPAR-αによるβ酸化の酵素遺伝子の発現増大の関与,(3)酸素供給に必要な毛細血管の血管新生能の改善に血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のシグナルカスケードの関与,(4)動脈硬化の抑制に内皮型NO合成酵素(eNOS)やエンドセリン(ET)-1による内皮機能改善の関与を見出した。
このように,運動による心臓や血管への刺激が,機能,形態,代謝のそれぞれに関連する分子制御(遺伝子やタンパクの発現調節)の変動を促すことによって,高齢期からの運動効果に関与していると考えられる。


★第51回  2008年1月11日
ランチョンセミナー

■演題:Mitochondria and free radicals: on relevance to health and ageing
講師:Satomi MIWA, Ph.D.


★第52回  2008年2月26日
ランチョンセミナー
■演題:水泳のバイオメカニクス:傷害予防とパフォーマンス向上のために
講師:
矢内利政 (中京大学生命システム工学部 教授)


★第53回  2008年2月27日
2007年度 修士論文発表コンテスト

<セッション1>座長: トンプソン雅子(中村好研究室) 
13:20 野倉 圭輔 (赤間 研究室)
      演題名:高齢ラットの免疫機能に運動が与える影響
13:35 竹迫 寿 (礒 研究室)
      演題名:やり投げにおける槍の速度に対する身体各部位の貢献
           −日本レベル選手から世界レベル選手を対象として−
13:50 石田 雄輝 (彼末 研究室)
      演題名:協調動作の安定性に関わる「動作方向」の検討
14:05 平山 邦明 (川上 研究室)
      演題名:反動動作によるパフォーマンス増強効果の個人差を決定する要因
          −筋腱複合体のStretch-Shortening Cycleに着目して−
14:20 石原 英明 (木村 研究室)
      演題名:総合型地域スポーツクラブの形成過程のタイプが経営条件および経営成績に与える影響
           −クラブ評価指標の作成を通して−
14:35 工藤 龍太 (志々田 研究室)
      演題名:合気道創始者植芝盛平の武術修行過程と武術技法の体系的特性
14:50 大塚 紀子 (寒川 研究室)
      演題名:諏訪流放鷹術

<セッション2>座長: 光川眞壽(川上研究室)
15:15 高橋 直美 (鳥居 研究室)
      演題名:四肢長管骨の長軸方向の成長と骨量・骨密度変化との関連性
15:30 芳賀 瑛 (トンプソン 研究室)
      演題名:インターネットにおける健康教育教材の開発と評価
15:45 原田 和弘 (中村ょ 研究室)
      演題名:我が国における筋力トレーニング行動の実施状況とその関連要因
16:00 東田 一彦 (樋口 研究室)
      演題名:一過性の低強度・長時間水泳運動が骨格筋における新規転写補助因子Lipin-1の発現量に及ぼす影響
16:15 冨田 真司 (福永 研究室)
      演題名:生体電気インピーダンス法を用いた中高齢者のセグメント骨格筋体積の推定
16:30 佐々木 理博 (福林 研究室)
      演題名:野球投手の投球数の増加が肩機能に及ぼす影響
           −投球制限の提案から投球障害予防に向けて−
16:45 長澤 卓哉 (誉田 研究室)
      演題名:ピッチ修正聴覚フィードバックによる感覚-運動制御系への影響

優勝 原田 和弘 (中村好研究室)
演題名:我が国における筋力トレーニング行動の実施状況とその関連要因

2位 竹迫 寿 (礒 研究室)
演題名:やり投げにおける槍の速度に対する身体各部位の貢献
    −日本レベル選手から世界レベル選手を対象として−
3位 高橋 直美 (鳥居 研究室)
演題名:四肢長管骨の長軸方向の成長と骨量・骨密度変化との関連性

特別賞
 東田 一彦 (樋口 研究室)
演題名:一過性の低強度・長時間水泳運動が骨格筋における新規転写補助因子Lipin-1の発現量に及ぼす影響

★第54回  2008年4月22日
■演題:筋収縮時における骨格筋の糖輸送調節
講師:藤井 宣晴(首都大学東京 大学院人間健康科学研究科 ヘルスプロモーションサイエンス系 教授)


 筋収縮は骨格筋においてインスリンに比肩する強力な糖輸送促進効果を有する。筋収縮による糖輸送は、インスリンの細胞内情報伝達経路の抑制にまったく影響されないため、独自の調節経路を備えていると考えられている。インスリンに依存しない「もう一つの糖輸送調節経路」の存在は糖尿病の治療に新たな方向性を与え得るので、その経路の同定が重要な課題となっているが、AMPキナーゼは細胞内エネルギーの監視センサーとして働く分子であり、AMPにより活性化されATPによって不活性化される。その細胞内情報伝達経路はインスリンのそれと独立している。AMPキナーゼ仮説では、筋収縮による細胞内エネルギーの低下が(すなわち細胞内ATP量の減少とAMP量の増加が)AMPKを活性化させ、これが糖輸送促進の引き金となる。しかし、最近になってなされたその報告は、AMPKの役割を肯定するものと否定的なものとに分かれ、いまだ明白な結論は得られていない。 我々は、骨格筋に不活性型AMPKを発現させたマウスを作製し、筋収縮時の糖輸送におけるAMPKの役割を再検討するとともに、これまでの異なる報告を整理して説明することを試みた。その結果、AMPKは骨格筋において、(1)?2サブユニット由来のキナーゼ活性を介して糖輸送を促進し、(2)細胞内ATP/AMPレベルのみを変化させるシンプルな刺激の場合(AICAR, rotenoneなど)は必須の糖輸送調節分子として働くが、(3)筋収縮の場合にはATP/AMPレベルの変化をともなうにもかかわらず不可欠の糖輸送調節分子ではない、ことが結論された。これらは、筋収縮時の糖輸送は、一部が欠損してもその影響が最小限に抑えられるredundantな調節機構を備えており、AMPKがその構成分子のひとつである可能性を示唆する。

★第55回  2008年5月20日
■演題:運動と報酬に基づく補足眼野のニューロン活動
演者:内田 雄介(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)

 
報酬は随意運動を正確かつ継続的に遂行するのに重要な要素であり、その報酬情報の処理過程については大脳基底核や前頭葉、頭頂葉などが関与している。特にサッケード眼球運動に関連する領域では、尾状核、前頭眼野、補足眼野が報酬の情報処理に関与している。尾状核は「どこに運動を行なったときに報酬を得たか」という報酬位置の情報と「運動を行なって得られたその報酬がどれくらいの大きさだったか」という報酬量の情報を持つのに対して、前頭眼野は位置情報を持つが量情報は持たない。一方で、補足眼野が報酬の位置情報や量情報を持っているかどうかは知られていない。 これを明らかにするために我々は、2頭のニホンザルに8方向のサッケード眼球運動課題を行わせ、正しく課題を遂行した場合には基本量または倍量の報酬を与えた。この課題遂行中の補足眼野細胞の活動を単一微小電極によって記録し、その性質を調べた。その結果、
補足眼野の約6割の細胞が報酬期間の活動を示した。また、その内の約7割が方向依存性を持つ活動を示した。これら運動方向選択的に報酬期間応答を示す細胞の約6割は報酬量と正に相関する応答を示した。 以上の通り、補足眼野には、特定の方向のサッケードと報酬の組み合わせに応じた報酬方向依存性の活動と報酬の量に関係する活動が共存することが明らかになり、補足眼野の細胞が実行された特定のサッケード眼球運動の価値を表現している可能性を示唆する。


■演題:習慣的運動が若齢者の前頭機能に与える影響
演者:
紙上 敬太(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)
 認知症罹患者数の増加は、世界的に今日における主要な健康問題のひとつであり、その数は今後も増加し続けることが予測されている。近年の疫学的研究では、特に高齢者において習慣的動が認知機能の改善、認知症の予防に貢献するのではないかと示唆されている。さらに、肥満、心血管系疾患、高血圧症、2型糖尿病なども認知症のリスクを高める可能性があるとした見解が示されている。この観点に立てば、認知症を生活習慣病のひとつとみなす考え方が成り立つ。よって、他の生活習慣病などと同様に、認知症予防の側面からも習慣的運動の効果を明確にする必要があると考える。 発表者はこれまで、認知・脳機能を客観的に評価する指標として脳波・事象関連脳電位を用い、「どのような身体運動が認知・脳機能を改善させるのか」、「どのような認知・脳機能が身体運動の影響を受けるのか」に関して若齢者、高齢者を対象に研究を進めてきた。生活習慣病の低年齢化が問題となっている昨今、これまで焦点を当てられてきた高齢者だけではなく、運動習慣者の割合が特に低い若齢者においても習慣的運動の効果を明らかにすることは重要である。
そこで本研究会では、若齢者を対象に習慣的運動と前頭機能との関係について検討した研究を紹介する。

★第56回  2008年6月17日
■演題1 動脈の弾性特性と筋力トレーニングに関する研究
演者:河野 寛 先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手)
 循環器疾患は我が国の死因の3割を占める。一方で、長寿国における健康課題であるサルコペニアや骨粗鬆症の予防には、有酸素性運動では不十分という報告がある。筋力トレーニングは、サルコペニアや骨粗鬆症の予防に絶大な効果があり、近年注目される運動様式である。しかしながら、筋力トレーニングを行うことで動脈の弾性機能(コンプライアンス)が低下することが報告されており、これは循環器疾患の独立した危険因子でもある。これらを背景に発表者は、1)どのような筋力トレーニングが動脈コンプライアンスの低下を引き起こさずに遂行可能か、2)動脈コンプライアンスの決定要因である動脈内皮機能が筋力トレーニングの影響を受けるかどうかについて検討した。
 結果として、1)筋力トレーニングのみを行うよりも、有酸素性トレーニングを並行して行うことで動脈コンプライアンスの低下を引き起こさずに筋力トレーニングを遂行できること、2)動脈コンプライアンスの決定要因の1つである動脈内皮機能は筋力トレーニングの影響を受けないこ
とが明らかになった。今回は、これらのデータの他に、中高齢者が筋力トレーニングを行う際の循環応答からみた危険性について関するデータも紹介する。

■演題2 成長ホルモン(GH)は持久性運動パフォーマンスを改善させるか?    
       −ヒトへのGHおよびGH作用阻害薬の投与を用いた研究−
演者:後藤 一成 先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 助教)

 
成長ホルモン(GH)は運動や睡眠により分泌が刺激され、筋でのタンパク合成(筋肉づくり)を促進させる効果を有することでよく知られている。また、加齢に伴いその分泌量が顕著に減少することから、「アンチエイジング作用」をもつホルモンとしても近年、注目されている。
 一方、GHは強力な脂肪分解作用も有する。たとえば、GHを血中に投与した場合には、投与約60分後から血中脂肪濃度の上昇(脂肪分解の促進を反映)が認められる。また、運動数時間前にGHを投与した場合には、その後に行う持久性運動中の脂肪分解は劇的に増加する。理論的には、持久性運動中の「脂肪分解の促進」は「脂肪利用(燃焼)の増加」を引き起こし、それに伴い筋グリコーゲンの利用は減少するはずである。このような持久性運動中の「筋グリコーゲン使用の節約」は、筋グリコーゲンの枯渇を防ぐことから、特に、持久性運動終盤の運動パフォーマンスの向上をもたらすものと推察される。
 本発表では、GHやGH作用阻害薬のヒトへの投与に伴う、1) 持久性運動中のエネルギー代謝、2) ホルモンの分泌動態、3) 運動パフォーマンスの変化などを検討したデンマーク・コペンハーゲンにおける研究プロジェクトを紹介する。

★第57回  2008年7月15日
■特別講演 「QOLに資する貯筋と保腱」
演者:福永 哲夫 先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授)

★第58回  2008年9月24日
■講演 Strategies to enhance performance in the heat
     (暑熱下での運動パフォーマンスを上げるには?)
演者:Prof. Nigel A.S. Taylor
(Human Performance Laboratories, School of
Health Sciences, University of Wollongong, Australia)
While the precise mechanisms which lead to performance decrement,
and the premature termination of exercise, are debated, we do know that body core temperature is intimately linked with these outcomes. Indeed, we know that rises in core temperature are directly dependent upon increments in exercise intensity, air temperature, ambient water vapour pressure, progressive dehydration, and the use of clothing. Conversely, it is well established that heat adaptation and whole-body pre-cooling serve protective functions against hyperthermia. Under climatic states in which air temperature approaches skin temperature, and where solar loads are high, the possibility for dry heat loss is negated, forcing an almost total reliance upon evaporative cooling at the skin surface. The most common means through which heat tolerance is traditionally improved is via heat adaptation, and its associated elevation in sweat secretion. While humans, and in particular well-adapted, endurance-trained athletes, possess a considerable capacity to secrete sweat, its evaporation, and hence its cooling power, is a function of the surrounding water vapour pressure. Under hot-humid conditions, exercise- and heat-induced augmentation of sweat gland function alone will not provide complete athlete preparation, forcing one to seek other strategies to facilitate performance optimisation. This presentation will review the methods and physiological consequences of heat adaptation, its impact upon sweat gland function and body-fluid balance, and its obligatory interaction with hydration state. In addition, possible supplementary means through which athletic performance may be enhanced in the heat will be reviewed, with emphases upon whole-body pre-cooling, altered hydration states (before and during competition), and the impact of polycythaemia upon heat tolerance.

★第59回  2008年10月28日
■演題1 筋の可塑性における部位差
演者:若原 卓 (早稲田大学スポーツ科学学術院 助手)  
  筋は可塑性に富む組織である.例えば,レジスタンストレーニングを行うことに より筋は肥大し,発揮筋力が増大する.一方,ベッドレストや宇宙飛行などの不 活動により筋は萎縮する.このため,トレーニング習慣や日常生活での筋活動強度 ・時間を反映したかたちで,筋のサイズに大きな個人差が存在する.  筋サイズの個人差の程度は部位によって異なり,個人差の顕著な筋と個人差の小 さい筋がある.このことは,トレーニングによる筋の可塑性に筋間差があることを 示唆する.すなわち,筋サイズの個人差が大きい筋は適応が起こりやすい筋であり, 筋サイズの個人差が小さい筋は適応が起こりにくい筋であると考えられる.  本発表では,600名以上の若齢男性より得られた筋サイズの個人差に関するデータを紹介する.また上記のデータにおいて個人差がもっとも顕著であり,適応が起こりやすいと考えられる上腕三頭筋を対象としたトレーニング実験に関するデータについても紹介する.


■演題2 有酸素性運動が内臓脂肪型肥満者の腹部脂肪に及ぼす影響
演者:沼尾 成晴 (早稲田大学スポーツ科学学術院 助手)  
  内臓脂肪の過剰蓄積は生活習慣病を引き起こす原因のひとつとされ,肥満者の中でも内臓脂肪が過剰に蓄積する肥満(内臓脂肪型肥満)の増加が問題となっている.その増加の予防策として近年有酸素性運動が注目されている.有酸素性運動は脂肪分解を高めるが中で内臓脂肪の分解を促進することで,内臓脂肪型肥満者の内臓脂肪を効率的に減少させる可能性がある.   そこで我々は内臓脂肪型肥満者に対して一過性および長期間有酸素性運動を負荷し,有酸素性運動が内臓脂肪型肥満者の腹部脂肪に及ぼす影響について検討をおこなった.その結果,一過性有酸素性運動中において内臓脂肪型肥満者では脂肪分解が増加していることが明らかとなった.また,長期間の有酸素性運動の介入前後において,内臓脂肪型肥満者の内臓脂肪が効率的に減少する可能性が示唆された.以上のことから,内臓脂肪型肥満者において有酸素性運動が内臓脂肪の減少に有効であることが示唆された.

★第60回  2008年11月18日
■演題1 
アキレス腱障害を有するスポーツ選手の腱力学的特性
演者:江川 陽介 先生(スポーツ科学学術院・助手)

 腱の障害は難治性で慢性化しやすく、症状が軽減しても腱の肥厚を残すことが多い。最近では、急性期と慢性期の病態が異なること、障害腱のコラーゲンタイプが健常腱と異なることなどが報告されており、筋腱複合体(MTC)にかかるメカニカルストレスによって、サイトカインを含む生化学的環境が段階的に変化する可能性が示唆されている。したがって、腱障害の発生メカニズムを解明するためには、生化学的、病理学的に障害腱の病態を検討するだけでなく、ヒト生体内における運動器としてのMTCの動態をリアルタイムに力学的に検討することが必要である。本研究では超音波断層法を用い、筋収縮中の右腓腹筋内側頭筋腱移行部の移動量から、アキレス腱の伸張量を計測し、筋力、腱形態との関連性から腱の力学的特性を算出した。今回は、慢性アキレス腱障害を持つスポーツ選手の腱の状態、および繰り返しの高強度運動によって筋腱複合体に歪みが残留した直後の筋腱複合体の状態に関して検討した結果を発表する。

■演題2 腰痛とスポーツ科学
演者:
金岡 恒治 先生(スポーツ科学学術院・准教授)

 腰痛の発生原因は複雑で、さまざまな因子が関与している。労作やスポーツ活動もその一因とされているが、どのような負荷が、どの組織に、どのような影響を与えて症状を出すのかは明らかではない。これまで、疫学的調査として、スポーツ種目毎の椎間板変性率を調査し、椎間板変性に及ぼすスポーツ活動の影響を調査してきた。また、バイオメカニクス的手法を用いて腰椎挙動を解析し、体幹筋の腰椎挙動に及ぼす影響、腰椎椎間板変性との関連を考察している。さらに、ワイヤ電極を用いた筋電計測によって、様々な運動時の体幹深部筋(腹横筋、多裂筋)の筋活動を評価している。これらの研究の成果と今後の方向性について述べる。


★第61回  2008年12月16日
■演題1 活動後増強効果が最大随意短縮性トルクに及ぼす影響
演者:宮本 直和 先生(早稲田大学スポーツ科学学術院・助手)

 高強度の筋収縮を行うと,単収縮トルクや低頻度刺激による強縮トルクは増強される。この現象は活動後増強(Postactivation potentiation: PAP)と呼ばれ、5〜10秒の最大筋力発揮を行うとその効果は10分程度継続する。このPAP効果は、筋の力−速度関係における等尺性最大筋力および最大短縮速度には影響を及ぼさない(最大筋力および最大短縮速度は変化しない)ことが報告されている。その一方で、PAPが、ある速度に対する発揮トルクや、ある負荷における短縮速度を増加させる可能性はある。そこで本研究では、最大随意短縮性トルク発揮を行う前にPAPを惹起するための筋収縮(コンディショニング収縮)を行うことにより、短縮性トルクが増強されるか否かについて検討した。その結果、コンディショニング収縮を行うことにより、主働筋および拮抗筋の筋活動量は変化しないにもかかわらず、短縮性トルクは増強されることが明らかとなった。これらの結果は、PAPがスポーツのパフォーマンス向上させる可能性を示唆するものである。

■演題2 スポーツに伴う腰痛のメカニズムと治療
演者:
山下 敏彦 先生(札幌医科大学医学部整形外科・教授)

 スポーツ活動により、腰部の傍脊柱筋や椎間関節に過剰な負荷や反復するストレスが加わると、これらの組織に存在する侵害受容器が活性化し、疼痛を引き起こす。また、侵害刺激により組織損傷が生じると、続発する炎症により侵害受容器の興奮や感作が起こり、慢性的な腰痛を引き起こす。
 椎間板ヘルニアでは、神経根周囲に炎症が発生し、異所性発火メカニズムにより神経根性疼痛(坐骨神経痛)が発生する。腰椎分離症では、分離部線維軟骨塊に侵害受容性神経線維が侵入し、とくに腰椎伸展時痛の原因となる。
 スポーツに伴う腰痛性疾患に対しては、まず理学療法を中心とした十分な保存療法を行うことが原則である。腰背部の柔軟性と安定性の獲得と維持を目的として、ストレッチングやモビライゼーション、体幹・下肢筋群の筋力訓練を行う。
 保存療法に抵抗する椎間板ヘルニアや分離症症例に対しては、手術が考慮される。最近は、内視鏡や顕微鏡を用いた、低侵襲の椎間板切除術や分離部修復術が主流になりつつあり、早期のスポーツ復帰が可能となっている。




★第62回  2009年1月19日

■演者:
Charles H. Hillman, Ph.D.
      (Director of the Neurocognitive Kinesiology Laboratory
      University of Illinois at Urbana-Champaign, USA)

 It is well-established that the early and late phases of the human lifespan are characterized by inefficient cognitive functioning, with the extant literature indicating a curvilinear relationship. Specifically, children and older adults exhibit relative deficits in performance, when compared to young adults, across a variety of tasks involving cognition and action. These deficits are due to alterations in brain structure and function, and lead to performance decrements that are disproportionately larger for tasks that entail extensive cognitive control. The study of physical activity influences on cognitive function has grown in interest over recent decades due to growing public concerns for a decrease in health status. Research has indicated that increased physical activity participation is associated with improvements in both general and selective aspects of cognition with the strongest relationship observed for tasks requiring extensive cognitive control. Thus, understanding controllable lifestyle factors (e.g., physical activity behavior) that may promote the health and maintenance of specific brain regions is important to improving cognition or protecting against cognitive loss. The overall goal of this area of research is to determine factors that improve cognition, maximize health and well-being, and promote the effective functioning of individuals as they progress through the human lifespan.


★第63回  2008年2月10日
2008年度 修士論文発表コンテスト
<セッション1>  座長  中村 真由美(彼末研)  タイムキーパー 岡部 祐介 (友添研)
13:05- 藤田 善也(礒 研究室)
     クロスカントリースキーのV2スケーティング滑走動作における運動力学的分析
13:20- 岡野 紘二 (間野 研究室)
     独立リーグ観戦者の観戦満足を規定する要因に関する研究-BCリーグにおけるサービスクオリティに着目して-
13:35- 野村 由実(福林 研究室)
     膝前十字靱帯再建術後の半腱様筋腱の再生と膝関節屈曲機能
13:50- 國寶真美 (寒川 研究室)
     バリ舞踊における基本姿勢(チャンケット)の定着過程
14:05- 小西 真幸(坂本 研究室)
     
急性睡眠遮断後の20分または2時間仮眠の自律神経系、運動耐容能、内分泌機能および精神状態に及ぼす影響
14:20- 磯谷 美穂(木村 研究室)
     bjリーグの活動継続意欲に関する研究
14:35- 浅香 明子(樋口 研究室)
     中高年男性における習慣的なローイング運動の健康維持・増進効果
14:50- 木内 虹平(中村好男 研究室)
     高等学校における長距離歩行行事の意義と運営上の問題点およびその対処方法

<セッション2>  座長  原田 和弘(中村好男研)  タイムキーパー 東田 一彦(樋口研)
15:15- 水口 暢章(彼末 研究室)
     Influence of touching an object on corticospinal excitability during motor imagery
15:30- 九鬼 まどか(土屋 研究室)   

15:45- 荘 雅筑 (赤間 研究室)
     エキナセア摂取がアスリートのコンディションに与える影響
16:00- 吉倉 秀和(原田 研究室)
     プロ野球観戦者の消費者行動に関する研究 -スタジアム環境要因および滞留希望に注目して-
16:15- 福井 俊太郎(矢内 研究室)
     両側性筋力低下に主働筋および関節角度の違いが及ぼす影響
16:30- 奥村 幸治 (鳥居 研究室)
     回旋腱板筋ならびに三角筋の形態および機能的検討 -一般人と大学生テニス選手の比較および成長に伴う変化について-
16:45- 望月 敦夫 (友添研究室)
     体育における授業評価の方法に関する研究

優勝 水口 暢章(彼末 研究室)
     Influence of touching an object on corticospinal excitability during motor imagery
2位 小西 真幸(坂本 研究室)
     急性睡眠遮断後の20分または2時間仮眠の自律神経系、運動耐容能、内分泌機能および精神状態に及ぼす影響
2位 望月 敦夫 (友添 研究室)
     体育における授業評価の方法に関する研究
特別賞 浅香 明子(樋口 研究室)
     中高年男性における習慣的なローイング運動の健康維持・増進効果


★第64回  2009年2月27日(金)
■演題: 「Circulatory regulartion during exercise」
 
演者:Niels H. Secher. Professor(The Copenhagen Muscle Research Center University of Copenhagen (Denmark))

★第65回  2009年4月28日(火)
■演題1: 膝前十字靭帯損傷リスクファクターの検討
■演者1: 永野 康治 先生(早稲田大学スポーツ科学学術院・助手)
  膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament: 以下ACL)損傷のリスクファクターとして運動時の動作に注目し,バイオメカニクス的手法を用いて検討することを目的とした。
【実験1: 片脚着地動作における膝関節運動の性差の検討】
 片脚着地における膝関節運動および筋活動の解析を行い、その性差の検討を行った。その結果、女性において脛骨内旋が大きく、大腿四頭筋優位の筋活動を示し、ACL損傷リスクが高いと考えられた。
【実験2: 着地・切り返し動作におけるACL損傷リスクの検討】
 ACL損傷好発動作である着地や切り返し動作の中から,片脚着地-切り返し、片脚着地、両脚着地における膝関節運動の比較を行った。その結果、片脚着地-切り返しでは片脚着地に比較し、脛骨内旋変位量、外転変位量が大きく、ACL損傷リスクが高いと考えらた。
【実験3: ターン動作における体幹位置と膝関節運動の関連および性差の検討】
 ターン動作における体幹位置と膝関節運動の解析を行い、その関連を検討すること。また、その性差の検討を行った。その結果、膝関節運動のみならず動作中の体幹位置もACL損傷リスクファクターとして考えられた。
 以上の研究からACL損傷リスクの高い動作が明らかになった。今後、リスクファクターに
対するACL損傷予防プログラムの効果検証の必要性が示唆された。

■演題2: 睡眠中の脳機能研究 〜レム睡眠中の夢を手がかりに〜
■演者2:
小川景子 先生(早稲田大学スポーツ科学学術院・助手)
 これまで発表者はレム睡眠中の夢を手がかりに睡眠中の脳機能研究を行ってきました。一晩の眠りではノンレム睡眠とレム睡眠が交互に繰り返されていますが、レム睡眠中でより鮮明でありありとした夢見体験が報告されます。またレム睡眠中には覚醒中の眼球運動(サッケード)と形態が類似した急速眼球運動が生じ、夢見体験との関連も指摘されています。そこで我々は急速眼球運動が生じる際の脳活動の様子を,時間分解能に優れ特定の事象に関連した一過性の脳活動を検討できる事象関連電位(ERP:event-related brain potential)を用いて検討しました。
 検討の結果、急速眼球運動の開始前には記憶や情動に係る海馬傍回・扁桃体の賦活、急速眼球運動の開始に伴い運動イメージや運動実行、情報のバインディングに係る運動野・頭頂連合野の賦活、そして急速眼球運動の停留に合わせて視覚情報処理に係る後頭部視覚野の賦活が観察されました。レム睡眠の中でも急速眼球運動が出現する区間では出現しない区間に比べてより鮮明な夢見体験が報告されています。本研究結果より、急速眼球運動に伴って観察されたこれらの一過性の脳活動が鮮明な夢見体験の生成に関与する可能性が示唆できました。今後は、急速眼球運動との関連が観察された脳活動のうち特に海馬傍回・扁桃体、運動野を取り上げ、なぜ夢見過程で記憶再生や情動・運動の知覚過程が体験されるのか、日中の経験と睡眠中の脳活動を指標に検討して行きたいと考えています。



★第66回  2009年5月19日(火)
■演題1: 特定健診・保健指導の認知度の変化に影響を及ぼすメディアの検討
■演者1:
李 恩兒 先生(早稲田大学スポーツ科学学術院・助手)
【目的】 特定健診・保健指導の認知度の経時変化と、認知度の変化に影響を及ぼすメディアの参考状況を明らかにし、健康情報を伝達するための有効なプロ モーション方策について検討した。
【方法】 40-59歳の社会調査モニターを対象として、2007年11月 (T1)および2008年12月(T2) にWeb調査を実施し、525名を解析対象とした。なお、認知度に影響を及ぼしたメディ アに関しては、2007年度の非認知群を対象(274名)に分析を行った。統計解析は、経時 変化に関しては、Wilcoxonの符号化付き順位検定、人口統計学的変数およびメディア参考有無に関しては、ロジスティック回帰分析、参考メディアの平均数の比較は、t検定を行った。
【結果】
T2(77.3%)の特定健診・保健指導の認知度は、T1(47.8%)と比較し、有意に高かった(z=-10.7,p<.001)。T1で非認知群(274名)において、人口統計学変数としては、「女性」(OR=2.92, 95%CI=1.05-8.14)、メディアの参考有無については、「病院・薬局のパンフレット」(OR=2.44, 95%CI=1.14-5.24)を参考にしていることが、T2の認知を有意に予測していた。なお、参考メディアの平均数は、非認知群は4.1±3.4個、認知群は6.1±3.1個であり、認知群の方が参考にしているメディアの数が有意に多かった(t(272)=4.824,p<.001)。
【結論】 今後、健康情報を伝達するためのメディアの有効なプロモーション方法について考える必要がある。

■演題2: わが国の女子体育教師と教材としてのダンスをめぐるポリティクス
■演者2:
稲葉 佳奈子 先生(早稲田大学スポーツ科学学術院・助手)
 スポーツ・フェミニズムの文脈では、スポーツとは、男性を基準に――つまり、男性の平均的な身体的特性が有利にはたらくようなかたちで――制度化され、男性を中心に組織化されてきた文化であり、スポーツ実践を通じたマスキュリニティの獲得を称揚する文化でもある。また、学校体育は、男性中心のスポーツ文化が教育の領域に移入されたものとみなされる。そうした共通認識もとで、これまで多くの場合、ジェンダーの視点をもった「啓蒙」や「教育」によるスポーツ文化の変革が主張されてきた。 先行する上記の議論に対する批判的検討をふまえ、本報告では、わが国の「体育教師社会」における女子体育教師のアイデンティティ・ポリティクスについて論じる。なかでもとくに、体育教材としてのダンスをめぐって、「体育的価
値」という側面からどのような言説実践が展開されたのかという点に注目し、その政治性について考察す る。この議論は、「スポーツや体育の男性中心主義を変革する」という意味でのスポーツ・フェミニズムの政治的困難あるいは不可能性の提示であると同時に、スポーツや体育と性をめぐる議論のオルタナティヴを模索することにつながるものでもある。


★第67回  2009年6月16日(火)

■演題1:
西島 壮 先生(首都大学東京)
■演題1: 運動による海馬神経活動の活性化とその生理学的意義
  生活習慣は脳機能に様々な影響を及ぼし、積極的な学習活動や余暇活動、そして運動などにより脳活動レベルの高い生活を営むことは、脳機能の維持・向上に有益である。しかしながら、なぜ神経活動を高めることが脳機能の維持・向上に貢献するのか、その疑問に答える神経科学的メカニズムは未だ明確でない。そこで、本セミナーでは、1)運動時に脳神経活動が活性化するか、2)なぜ神経活動を高めることが脳機能の維持・向上に有益であるのか、について、これまで得られた知見を紹介する。前者では、特に記憶・学習を担う脳部位である海馬に焦点を当てる。この海馬が走運動時に活性化するか否かを、レーザードップラー血流計を用いた海馬局所血流量のリアルタイム測定から検討した。後者では、主に肝臓から分泌されるインスリン様成長因子(IGF-I)に着目する。血中IGF-Iは、様々な神経保護作用を発現するホ ルモンであり、これまでに運動による有益な作用(神経損傷の軽減など)を仲介し、また脳実質内からアミロイドβを除去しアルツハイマー病予防に貢献することなどが報告されている。血中IGF-Iが血液脳関門および血液脳脊髄液関門を介して脳実質内にも取り込まれることが報告されているものの、どのようにIGF-Iの脳内移行が調節されているかは全く明らかになっていない。そこで我々は、「神経活動が血中IGF-Iの脳内移行を調節する」と仮説を立て、現在はその分子機構の解明を進めている。

■演者2: 遠藤 隆志 先生(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
■演題2: 伸張性筋収縮による筋損傷および遅発性筋痛が運動制御機構に与える影響
 収縮している筋が伸張される伸張性筋収縮を含む激しい運動後には、筋の微細構造は損傷し、最大筋力や関節可動域が低下すること、またこの微細な損傷が引き金となって、その運動の約24時間後には遅発性筋痛が発症することは広く知られている。このような筋損傷や遅発性筋痛が生じている時に、中枢における運動制御機構がどのような影響を受けているのかについてはこれまで不明であったが、近年、我々のグループを含めて、この伸張性筋収縮後の筋損傷および遅発性筋痛時における運動制御動態に少しずつ明らかになっている。本発表では、皮質運動野を刺激する経頭蓋磁気刺激、脳波および筋電図を用いて、皮質脊髄路の興奮性および抑制性、皮質運動野と脊髄運動ニューロンプールの同調的活動および体性感覚系の変化などの観点から伸張性筋収縮による筋損傷および遅発性筋痛が運動制御機構に与える影響について検討を加えた我々の研究結果を紹介する。


★第68回  2009年7月24日(金)

■演者:
V. Reggie Edgerton, Ph.D.
(Department of Physiological Science, Neurobiology, Brain Research Institute,University of California, Los Angeles, USA)

■演題:
Can we reconcile the musculoskeletal mechanics of human plantarflexion and dorsiflexion
    from a macro to a micro-perspective?

Although extensive detail is known about the mechanics of single molecules of actin and myosin in a dish and of sarcomeres of single fibers in situ as well as a reasonably detailed description of the mechanics of the ankle joint, it remains unclear how the actomyosin dynamics within and across many sarcomeres within and among muscle fibers generates the specific joint displacement and velocities that occur routinely in vivo. With our present level of understanding of all of the components of the musculoskeletal that generates and transfers forces and displacements, the mechanical properties of these routine movements at the macro level do not match the dynamics in the micro-level. Over the last decade several laboratories have begun to develop imaging technologies that have revealed a new level of understanding of the strain related to events that occur within and among musculotendinous units in small and large mammals, including humans. This presentation will focus on new MRI technologies that have allowed us to image the dynamics of different components of the musculotendinous units that are largely responsible for plantarflexion of the human ankle. As best can be done at the present data available, I will attempt to determine the degree to which the micro-and macro dynamics of plantarflexion in the human can be reconciled.



★第69回  2009年8月21日(金)
■演者: Dr. Leonard D. Zaichkowsky, Ph.D. (Boston University)

■演題:
ハイレベル・パフォーマンスを支えるスポーツ心理学―プロ・スポーツ,芸術,医療におけるパフォーマンス強化―
 Dr. Zaichkowskyは,現在,ボストン大学において新しく開始された学際的プログラム「教育学研究科および医学部医科学研究科のジョイントプログラム」の教授であり,さらに医学部におけるメンタルヘルス・行動医学部門大学院スポーツ・運動心理学プログラムのヘッドである.彼は,長年,応用スポーツ心理学の領域で多くの研究を行ってきたが,とりわけ最近では,脳・神経科学の視点でパフォーマンス強化に果たす実践研究を行っている.その適用は,スポーツ分野だけにとどまらず,芸術や外科手術など,優れたパフォーマンスが必要な様々な分野にもおよんでいる.この研究では,例えば,対象者が感情を自己制御できるように新しいタイプのバイオフィードバック技術を駆使し,その研究対象となる類い希なるパフォーマーはレアルマドリードのサッカー選手(http://www.soccer-new-england.com/Real-Madrid-BU-MIT-Join-Forces.html)をはじめとして,デューク大学医学部における有名外科手術者にも及んでいる.もう一つの研究は,脳イメージ研究である.彼は,カナダ・ナショナルチームに帯同する心理学者と共同で,水泳選手がパフォーマンスに成功,または失敗するイメージを想起させ,その際の脳活動をfMRI スキャナーを用いて測定・分析し,水泳選手のパフォーマンス向上に役立てている.講演会では,Dr. Zaichkowskyがコーチ,体育教師およびスポーツ選手に影響をもたらす神経・脳科学研究における最新の知見をわかりやすく紹介してくれることを期待している.