要旨:
研究1
発達の3段階(思春期前,思春期,思春期後)に伴う,運動パフォーマンスと協調運動の性差および発達的傾向を同定するために,60名の被験者(男性30名,女性30名)で13種類の運動課題を調べた.思春期に特有の身体特徴によって被験者を3段階のいずれかに分類した.分散分析,共分散分析の結果,運動パフォーマンスは性別にかかわらず青年になる過程で向上することと,運動パフォーマンスには性差があり,男性の方が女性よりも優れていることが示された.これらの結果は,男女いずれも思春期には協調運動が損なわれたり,ぎこちなさが生じたりすることはないことを示している.
研究2
青年期にいたる過程での認知発達を評価するために, 124名の児童(7-18歳)と27名の若年成人に標的弁別課題を行わせた.この課題では,誤反応によってエラー関連陰性電位(error-related
negativity: ERN)とそれに後続するエラー陽性電位(error-positivity: Pe)と呼ばれる事象関連電位(event-related
negativity:ERN)が惹起される. ERNの発生源を前部帯状皮質(anterior cingulate cortex: ACC)とする証拠が実験的に示されている.ERN振幅は,非線形的であるものの,年齢と共に増大した.Peの振幅には年齢に伴う変化はなかった.これらの結果は,青年期にかけて成熟し続けるACCと前頭前野(prefrontal
cortex)の点から議論される.総合論議では,青年期にみられる運動能力・認知能力の変化のうち,予測されるものと予測されないものについて言及し,こうした変化と思春期発達との関係について考察する.
世話人、問合せ先
正木宏明 (Hiroaki Masaki, Ph.D.)
早稲田大学スポーツ科学部
〒359-1192 所沢市三ヶ島 2-579-15
masaki@waseda.jp