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早稲田大学
国際教養学部
学部長
森田典正
国際教養学部は早稲田大学の10番目の学部として2004年に船出した新しい学部です。7歳を迎えたばかりの若い学部でもありますが、この7年のあいだに、 早稲田大学の中で、日本国内で、そして、海外で、ユニークな教育・研究機関として広く認知され、その地歩と固めてきました。国際教養学部 (School of International Liberal Studies、略してSILS=シルス)は英語を中心とした多言語主義と、教育・研究や学生生活において、 特定の国や地域の文化に拘束されない多文化主義を基本理念にしています。そして、この理念を反映した教育課程とカリキュラムと教育方法をもち、2007年以来、 有能な卒業生を多様な企業や大学院に輩出してきました。
SILSは125年以上の歴史をもつ早稲田大学にとってだけでなく、日本の高等教育界においても、壮大な「教育実験」であったと言えるでしょう。 学部創設時より、ほぼすべての授業を英語で行い、教員と学生の3分の1を海外出身者とし、1年間の海外留学を必修(日本語を母語とする学生のみ)とし、 少人数教育を徹底し、国際機関、国際企業で活躍できる人材や、大学院に進学して研究を続けられる能力のある学生を育成しようという、 歴史的に類のない野心的な目標を設定し、その達成に努力してきましたが、第一期卒業生が巣立った2007年までの4年間で、それらをすべからく達成することができました。 最近ではSILSと同種の学部がいくつも立ち上がっていますが、ほぼすべての授業を英語で行い、在学生の約8割にあたる500名以上の学生を毎年約30以上の 国・地域の高等教育機関に派遣し、国際機関、製造業・商社・情報通信・金融・コンサルティングなどを中心とした国際企業に多数の人材を送り出している大学、 そして、学部はSILSを除いて他にはありません。
日本の大学生は勉強をしない、また、学生の学力は入学時をピークに次第に低下すると、よく決まり文句のように言われ、これは100年以上にわたる日本の 高等教育の宿痾とも考えられてきました。しかし、これはSILSの学生には該当しません。講義や演習(ゼミ)はプレゼンテーションやディスカッションを中心とした学生と教員の 双方向のやりとりからなり、多量のリーディングとライティングが課せられ、在学中の4年間の中間には海外留学の選抜試験と海外留学が実施され、 海外留学後には演習(ゼミ)の選抜試験と英語による卒業論文があります。また、アカデミック・アドバイザー(専任教員)が学生一人ひとりに配置され、 学習と学生生活に関する指導や助言を行い、万が一、成績不良に陥った場合はアカデミック・プロべーション制度により、指導や罰則が加えられる一方、 成績優良者はディーンズ・リストにより報奨されます。たとえば、SILSの学生の英語力は在学中、TOEFL-iBT換算値で約40点上昇しているというデータは、 在学生の学力が着実に向上している証左の一つと言えるでしょう。ただし、SILSは「英語学部」ではありません。SILSは英語を学ぶ場所であると同時に、 英語「で」学ぶ共同体です。教養教育とリベラルアーツ教育を基本とし、多くの分野にわたり、多彩な科目を鏤めたカリキュラムを用意していますから、 学生の皆さんはそれらを広く学ぶことによりジェネラリストになること、あるいは、特定の分野を集中的に、深く、長く学ぶことによりスペシャリストになることが可能です。 分野を跨る学習の機会を維持しながら、特定の分野の集中的履修をメジャーとして公式に認定してゆく制度の立ちあげを、目下、次年度にむけて検討しているところです。
2009年4月からSILSは大隈銅像を見下ろす11号館に移り、教育・研究活動の新たな段階が始まったことにより、早稲田には新風が吹き込まれました。 早稲田キャンパスの真ん中に真の国際的組織が生まれたからです。われわれもまた、これに伴って、予想外の経験をし、また、国際化、 グローバル化について思いを新たにしました。たとえば、SILSには日本国籍をもちながら入学まで18年間、ニューヨークで教育を受け、日本での滞在経験のない、 日本語による意思疎通が必ずしも得意ではない学生が入学してくる一方、ものごころがつく前に来日し、初等・中等教育を神戸で受け、 両親の母語より関西弁をはるかに流暢に話すロシア人が入学しています。SILSという共同体に生活する者は誰でも、民族、文化、アイデンティティに関する意識の 修正が余儀なくされ、国籍・人種・文化に関わる観念が相対化する場面に日常的に立ち会うことになるでしょう。これこそが多言語主義、 多文化主義の意義なのかもしれません。
国際教養学部の多言語主義、多文化主義をめざす理念に共感し、このユニークな共同体の一員になろうとする熱意のある皆さんを、この学部は大歓迎いたします。