早稲田大学整数論セミナー    Number Theory Seminar at WASEDA Univ.

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2003 年度の内容  (コメントは講演者に書いて頂いております.)

2004 年 1 月 30 日 ( 金 )
講演者: 諏訪 紀幸 (中央大学数学科)
タイトル: Twisted Kummer and Kummer-Artin-Schreier theories
アブストラクト: 陸名の巡回多項式の group scheme の観点からの定式化についてお話しします。必要な affine group scheme の定義とそれに関する基本的な事項から始めて本題にはいります。
2004 年 1 月 23 日 ( 金 )
講演者: 伊藤 正 (早稲田大学大学院理工学研究科)
タイトル: 虚2次体の円分 Z_p 拡大のλ不変量の計算
アブストラクト: 虚2次体 K の円分 Z_p 拡大の岩澤 λ_p(K) 不変量の値はStickelberger元により, 岩澤多項式と共に計算される方法が一般的である. しかし, λ_p(K) だけであれば, より高速に計算できる方法が知られており, その方法の紹介と計算例を示す.
2004 年 1 月 23 日 ( 金 )
講演者: 佐藤 導吉(早稲田大学大学院理工学研究科)
タイトル: ある実4次巡回体の族の基本単数系に関する考察
アブストラクト: n > 2 なる整数に対して,f(n;X) = X^4+n(n^2-2)X^3-(n^4-2)X^2+n(n^2-2)X+1, を考える.Q 上の最小分解体 K は実4次巡回体をなしており,定数項が 1 であることから f の根は K の単数となる.そこで,これらの根を用いて K の基本単数系を構成できるか? という問題を考える.これに対し,これまで得られた結果及び数値計算から得られた興味深い現象について報告します.
2004 年 1 月 16 日 ( 金 )
講演者: 岡野 恵司(早大理工)
タイトル: 円分$mathbf{Z}_p$拡大体上の最大不分岐pro-$p$拡大の新たな例
アブストラクト: $p$を素数,$K/k$を代数体の円分$mathbf{Z}_p$拡大とする.$K$の最大不分岐pro-$p$拡大のGalois群を調べることは,岩澤理論の一つの拡張として現在盛んに行われている.しかしその構造が具体的に知られているのは,無限群の場合はfree pro-$p$群のみであった.(有限の場合は水沢氏の結果など幾つかが知られている)
今回新たな例として無限群で位数$p$の元を持つものが構成できたので報告する. 時間があればその応用についても触れる.
2004 年 1 月 9 日 ( 金 )
講演者: 鎌野 健 (早稲田大学教育学研究科)
タイトル: 多重ゼータ関数の負の値について
アブストラクト: Euler-Zagier型多重ゼータ関数を考える.この$n$変数ゼータ関数は$C^n$上有理型関数に解析接続され、その負の整数点では不定値になることが知られている.この講演では、不定値での値をセントラルゼータという極限のとり方で固定し、実際にその特殊値を求める.またその応用としてLerchの公式の多重化を導く.
さらに、早稲田大学・豊重巨之氏との共同研究として多重ゼータ関数をDirichlet指標で拡張した多重$L$関数を定義し、その正則性と特殊値について考察する.
2003 年 12 月 19 日 ( 金 )
講演者: 大溪 幸子(九州大学大学院数理学府)
タイトル: 全円分体上の不分岐非可解拡大の構成について
アブストラクト: 代数体 K 上に不分岐ガロア拡大を構成せよという問題があります.K が全円分体(有理数体の最大アーベル拡大)の場合,大きい非可解群をガロア群に持つようなものは知られていませんでした.そこで本講演では,同伴形式を持つレベル1の保型形式に付随する mod $p$ ガロア表現とその変形を用いて,その構成を与える予定です.
2003 年 12 月 12 日 ( 金 )
講演者: 中澤 直也 (大阪府立大学)
タイトル: 巡回的なFp-有理点群をもつ楕円曲線のパラメトリックな構成について
アブストラクト: 虚数乗法をもつ楕円曲線については,p-乗Frobenius写像の虚2次体の元としての表示から,Fp-有理点群の構造を定めることができる.このことを利用してFp-有理点群が巡回群となる楕円曲線をパラメトリックに構成できる.虚数乗法をもたない場合は,一般的に容易ではない.しかし,p=2^r 3^s+1, p=2^r 5^s+1, p=2^r 5^s q^t+1 の形の素数に対して,Fp-有理点群が巡回群であるような楕円曲線を構成することができた.本講演では,それらの例についてお話しします.
2003 年 11 月 28 日 ( 金 )
講演者: 伊藤 剛司 (早稲田大学理工学部)
タイトル: ある4次体における一般Greenberg予想について
アブストラクト: 総実代数体上の円分的$Z_p$拡大には「Greenberg予想」と呼ばれる予想が存在し、これまでに多くの人々によって研究が行われてきておりますが、総実でない代数体においてもこのGreenberg予想を一般化した予想というものが存在します(これについての概略は今年7月にこのセミナーでお話しさせて頂きました)。
今回は、基礎体がimaginary biquadratic fieldの場合におけるこの「一般Greenberg予想」に関して得られた結果についてお話ししたいと思います。
2003 年 11 月 21 日 ( 金 )
講演者: 藤井 俊 (早稲田大学大学院理工学研究科)
タイトル: ある虚巡回体の無限次p-類体塔について
アブストラクト: K. Wingbergは1993年に円の157分体Q(μ_{157})の157-類体塔が無限次であることを示した。ここで注目すべき点は、Q(μ_{157})のイデアル類群の157-rankは2であるということである。一般に、イデアル類群のp-rankが小さな体のp-類体塔が無限次であることを示すのは容易ではない。
今回私はこのWingbergの方法を参考にしてイデアル類群の3-rankが2で3-類体塔が無限次となる虚巡回体を発見することができましたので、それについてお話しします。
2003 年 11 月 14 日 ( 金 )
講演者: 水沢 靖 (早稲田大学大学院理工学研究科)
タイトル: 代数体の類体塔に関する岩澤理論の研究
アブストラクト: 素数 p に対して、代数体 F の最大不分岐 pro-p 拡大のGalois群を考える.その交換子群列に対応する中間体の列が F の p-類体塔と呼ばれるものであるが、本講演ではこれらの対象を代数体の Z_p 拡大上で考察する.主に Greenberg予想との関連をふまえながら、代数体の円分 Z_p 拡大体の最大不分岐 pro-p 拡大のGalois群に関して、現在までに得られた結果をお話しします.
2003 年 11 月 7 日 ( 金 )
講演者: 成田 宏秋 (東大数理)
タイトル: Fourier-Jacobi expansion of automorphic forms on Sp(1,q) belonging to quaternionic discrete series
アブストラクト: 一般に非正則保型形式の研究は、正則保型形式のそれに比べ非常に難しいが、タイトルの保型形式は非正則保型形式の中でも比較的扱い易い。実際この保型形式は正則保型形式と振舞がよく似ており、例えば多変数正則保型形式にしかその成立が知られていないケッヒャー原理を満たす(つまりこの保型形式の解析的条件が、その緩増加性を自動的に保証する)。この講演では、タイトルの保型形式について明示的なフーリエ-ヤコビ展開をあるテータ関数を用いて与え、そしてケッヒャー原理の証明を与える予定である。
2003 年 10 月 31 日 ( 金 )
講演者: 黒川 信重 (東京工業大学)
タイトル: Absolute Tensor Products(絶対テンソル積)
アブストラクト: 絶対テンソル積はゼータ関数の零点の和を零点や極に持つ新しいゼータ関数を目標に20年程前に構成した。一般に、ゼータ関数が何個かあれば、それらの絶対テンソル積が多重ゼータ関数として定義される。(これは「多重ゼータ値」とは関係ない。)さらに、多重オイラー因子や多重オイラー積に当たるものも存在する。絶対テンソル積は一元体上のテンソル積と期待される。今回は、とくに、有限体何個かの絶対テンソル積の場合に具体的な形や多重三角関数との関係等を説明したい。
2003 年 10 月 24 日 ( 金 )
講演者: 相羽 明 (茨城大学)
タイトル: Artin-Schreier-Witt拡大の種の体について
アブストラクト: 有限体上有理関数体のArtin-Schreier-Witt拡大の種の体を求め、そこで完全分解する素イデアルを与える。
2003 年 10 月 17 日 ( 金 )
講演者: 尾崎 学 (島根大学)
タイトル: 非アーベル岩澤類数公式
アブストラクト: 岩澤類数公式は、古典的岩澤理論におけるひとつの大きな成果で、Z_p-拡大K/kのn-th layer k_n上の最大不分岐アーベルp-拡大のガロワ群の位数の挙動を、K上の最大不分岐アーベルp-拡大のガロワ群の不変量(岩澤不変量)を用いて表わすものであった。代数体の最大不分岐p-拡大をZ_p-拡大を通じて捉えようとする試みである非アーベル岩澤理論においても、この公式の類似、即ち、k_n上の最大不分岐p-拡大のガロワ群G_nの降中心列商
X_n^{(i)}=C_i(G_n)/C_{i+1}(G_n) (C_1(G_n)=G_n, C_{i+1}(G_n)=[G,C_i(G_n)])
の位数をK上の最大不分岐p-拡大のガロワ群の不変量(高次岩澤不変量)で表わす公式が成立するものと期待される。この研究を始めて以来数年間の懸案であったこの問題がK/kのμ-不変量が0の場合には満足な形で解決されたので、これについて解説する。
2003 年 10 月 3 日 ( 金 )
講演者: 陸名 雄一 (東京都立大学・学振)
タイトル: On the generic dimension of SL_2 (F_3) over Q
アブストラクト: 「SL_2(F_3) (位数24) に対する有理数体 Q 上の生成的多項式は存在するか?」というガロア逆問題における懸案について, 最近肯定的に解決することができましたので報告します.
(主定理)
4 変数有理函数体 Q(t_1,...,t_4) 上ガロア群 SL_2(F_3) を持つ多項式 f(t_1,...,t_4;X) \in Q(t_1,...,t_4)[X] で, 次の条件を満たすものが存在する. 条件: Q の上にある任意の SL_2(F_3)-ガロア拡大 L/K (/Q) は全て f の「特殊化」f(a_1,...,a_4;X) \in K[X] (a_i \in K) によって実現される.
表題の generic dimension とは生成的多項式の構成に必要なパラメーターの最小個数を指します. この結果は SL_2(F_3) の Q 上の generic dimension が 4 以下であることを示しています.
2003 年 7 月 25 日 ( 金 ) 【 大学院講演会 】
講演者: Josep Gonzalez (Univ.Politecnica de Catalunya, Barcelona)
タイトル: Abelian Surfaces of GL(2)-type as Jacobian of Curves
2003 年 7 月 11 日 ( 金 )
講演者: 寺井 伸浩(足利工業大学)
タイトル: On parametrized Pillai's equations
アブストラクト: a, b, cを固定された正の整数とする。このとき、不定方程式 a^x-b^y=c (*) は、いくつかの例外を除けば、高々ひとつの正の整数解x, yを持つという、Pillai予想(あるいはBennett予想)がある。最近、Bennettはcが小さいとき(c<100)やa-b=\pm 1のときにPillai予想が成り立つことを示した。a, b, cに具体的数値を与えたとき、(*)を解くのはBaker理論より容易である。ここでは、a, b, c がparameter m で表されているとき(例えばa=3m^2-1, b=m(m^2-3), c=m^2+1)、Pillai予想が成り立つことをBaker理論を用いて確かめる。
2003 年 7 月 4 日 ( 金 )
講演者: 伊藤 剛司(早稲田大学理工学部)
タイトル: 一般Greenberg予想についての概説
アブストラクト: (今回も先週の講演に引き続き、主に大学院生などの若い方を対象としたサーベイトークを行います)
虚2次体上の全ての$Z_p$拡大の合併体を$K$とします($K/k$は$(Z_p)^2$拡大となります)。$L(K)$を$K$上最大不分岐pro-$p$アーベル拡大体とすると、ガロア群$X=Gal(L(K)/K)$には2変数の冪級数環$\Lambda=Z_p [[S,T]]$が作用しており、有限生成torsion$\Lambda$加群となります。(虚2次体の場合の)「一般Greenberg予想」とは、この$X$がpseudo-null$\Lambda$加群となるであろう、という予想です。今回は、この予想についての概説を行う予定です。
2003 年 6 月 27 日 ( 金 )
講演者: 山本現(早稲田大学理工学部)
タイトル: Greenberg予想についての概説(サーベイトーク)
アブストラクト: 総実代数体の円分$Z_p$-拡大における岩澤λ,μ不変量が0になるという予想はGreenberg予想と呼ばれ、多くの人々によって研究されています。特に実アーベル体の場合には、市村−隅田の判定法に代表されるように、円単数や岩澤主予想を用いたGreenberg予想の判定法ないし十分条件がいくつか知られています。今回は、それらの方法の簡単な説明と実例についていくつかお話したいと思います。
2003 年 6 月 20 日 ( 金 )
講演者: 大浦 学(札幌医科大学)
タイトル: 符号の重み多項式に関する話題
アブストラクト: 符号の重み多項式達が生成する次数付き環に関する話をします。これらの環は有限群の不変式環と密接な関係があり、一致する場合もあります。次数付き環の具体例をあげながら議論していきたいと思います。
2003 年 6 月 13 日 ( 金 )
講演者: 江田 勝哉 (早稲田大学理工学部)
タイトル: 2次元コンパクトアーベル群の有限カバーへの数論の応用
2003 年 6 月 6 日 ( 金 )
講演者: 星 明考(早稲田大学大学院理工学研究科)
タイトル: Noether's Problem for D_5, F_{20} and D_6 (早稲田大学・橋本喜一朗先生との共同研究)
アブストラクト: Noetherの問題は「有理関数体 K:=Q(x_1,・・・,x_n) に群 G⊂S_n が変数の置換として作用するとき,その不変体 K^G は再び Q 上の有理関数体となるか?」という問題で,1916年にEmmy Noetherによって提唱された.同問題が肯定的であれば,Q を含む体上の 全てのG-拡大を統制する生成的多項式の存在が保証されるため,現在でもさかんに研究が行われているが,肯定的に解かれているのは ( G=S_n の自明な場合を除いて) ほとんど位数の小さな群に対してのみである.
5次対称群 S_5 の可移部分群 ( C_5,D_5,F_{20},A_5,S_5 ) への同問題は,C_5に対しては1955年にK. Masuda 氏によって,A_5 (5次交代群) に対しては1987年の前田高士氏の画期的な成果によって,生成元を explicit に与えることで肯定的に解かれている.最近の研究では,橋本喜一朗先生 (早稲田大)と角皆宏氏(上智大)によって,P^1 上の5点配置空間への G-作用の考察から5つの可移部分群に対して一斉に不変体 K^G の有理性が示されている.
本講演では D_5 (位数10の二面体群), F_{20} (位数20のFrobenius群) の同問題に対し,実際に explicit な生成元を与える.基本的なアイデアは,昨年3/18に早稲田大学整数論研究集会での講演で C_5 の同問題へ与えた別証をさらに幾何学的に降下させるというものである (この別証は,円分体の巡回部分体を生成するガウス周期の関数体モデルを構成するという手法で得られていました) .さらに,この方法は6次に対しても拡張でき,C_6,D_6 に対する同問題を explicit な生成元を与え,肯定的に解く.
2003 年 5 月 30 日 ( 金 )
講演者: 福田 隆 (日本大学生産工学部) (東京都立大学・青木美穂氏との共同研究)
タイトル: アーベル体のイデアル類群について
アブストラクト: 岩澤主予想が Mazur-Wiles によって解決されて以来、岩澤理論を、つまり無限次拡大の性質を利用して、有限次代数体の性質を調べる研究が進んでいます。本研究もこの流れに沿ったもので、有限次アーベル体のイデアル類群をガウス和と円単数を用いて計算する(多分新しい)アルゴリズムを紹介します。都立大の整数論セミナーで青木さんが理論的な部分を話す予定なので、ここでは具体的な計算方法に重点をおいて解説するつもりです。
2003 年 5 月 23 日 ( 金 ) 【大学院講演会】
講演者: Marco A. Garuti( Italy, Padua Univ. )
タイトル: Lifting problems for Galois covers of curves.
アブストラクト: Let $f: Y \to X$ be a finite cover of algebraic curves with Galois group $G$. If $\Cal X$ is a deformation of $X$, we say that the cover can be lifted if there is a deformation $\Cal Y$ of $Y$ and a $G$-cover $\Cal Y\to \Cal X$ that reduces to $f$ on the special fibre.
This problem admits a solution when $G$ acts freely and more generally when the order of the stabilizer of every point is prime to the characteristic. In the talk we will discuss some results and some conjectures concerning the wild case, in which the order of the stabilizers are divisible by the caharcteristic.
2003 年 5 月 16 日 ( 金 )
講演者: 岸 康弘(東京都立大学)
タイトル: The Spiegelungssatz for $p=5$ from a constructive approach
アブストラクト: 導手がそれぞれ m, 5m となる 2 つの 2 次体 k, k' に対し, それらと素数 5 に関して鏡映関係にある体は一致する. それを M と書くことにすると, M は 4 次巡回体となる. 今回, M のイデアル類群の 5-rank と k, k' のイデアル類群の 5-rank との関係について, 明示的な等式を与えた. 類体論より, M のイデアル類群の 5-rank を数えるには, M 上の 5 次不分岐巡回拡大をすべて数えればよい. さらに群論的考察により, その中で有理数体上正規のもののみを数えればよいことがわかる. このとき, ガロア群は必ず 20 次のフロベニウス群に同型となる. 一方, M を含むような有理数体上 20 次のフロベニウス拡大を与える多項式は, k や k' の元から構成されることが, 都立大の今岡雅文氏と講演者との共同研究によって得られている. そこで, どの様な元から不分岐拡大が得られるかを分析することにより, 今回の等式が得られた. 講演では, 証明の概要といくつかの数値例を紹介する予定である.
2003 年 5 月 9 日 ( 金 )
講演者: 中里 肇(東京工業高等専門学校)
タイトル: non-CM 楕円曲線のMordel-Weil群のtorsion部分について
アブストラクト: 代数体 F上の non-CM 楕円曲線 Eと素数 pに対して Lを Fに、Eの総ての pべき分点を添加した体とする。Mordel-Weil群 E(L)の非p-torsion部分が、有限群となることを話します。また、この有限群の位数に現れる可能性がある素数は、Eに対して定まるある有限個の素数であることも分かります。
2003 年 5 月 2 日 ( 金 )
講演者: 奥田 順一 (早稲田大学)
タイトル: 多重L値と双対性
アブストラクト: 多重ゼータ値の関係式は、全て、Drinfel'd associator の特徴付けから導かれることが予想されています。例えば、双対性は Drinfel'd associator の逆元を記述している、と見られます。また、双対性は大野関係式と導分関係式を繋ぐ、という点でも重要な関係式でした。多重L値の場合に、線型微分方程式の解の間の接続行列としてDrinfel'd associator の対応物を構成し、それを用いて多重L値の双対性等の多重対数関数の特殊値の間の関係式を導きます。
2003 年 4 月 25 日 ( 金 )
講演者: 藤井 俊 (早大理工)(尾崎学氏、大木義博氏との共同研究)
タイトル: 与えられた構造を持つZ_p拡大上の最大不分岐アーベル拡大(または最大不分岐拡大)について
アブストラクト: pを素数, K/kを代数体のZ_p拡大とする. Z_p拡大K/kにおいて, 完備群環Z_p[[Gal(K/k)]]とべき級数環Λ=Z_p[[T]]の同型を一つ固定しておく. X_kをK/kの岩澤加群とすると, 岩澤先生によりX_kにはΛが作用しており, X_kは有限生成トーションΛ加群であることが示されている.
島根大学尾崎氏よりX_kについて次のような問題が出されている. 「与えられた構造を持つX_kは存在するか?」あるいはこれを弱めた主張である「与えられたλ, μ-不変量を持つ代数体は存在するか?」
この2つの問題に対して大木氏は2001年度島根大学修士論文で多少の仮定のもとで与えられたλ不変量を持つ代数体が存在することを示した. 今回はこの大木氏の手法を用いることによってp=3の場合に与えられた有限rankのfree pro-3群がある代数体の円分Z_3拡大上の最大不分岐pro-3拡大のガロア群として現れることが分かったので大木氏の結果とその応用としてこれらを話す予定です.
2003 年 4 月 18 日 ( 金 )
講演者: 橋本喜一朗 (早大理工)
タイトル: 5 次可移置換群に対する「ネーターの問題」の初等的証明
アブストラクト: G を n 文字 x_1,..,x_n の上の可移置換群とし, これを有理関数体 L:=Q(x_1,..,x_n) の自己同型の群とみなすとき, その不変体 K=L^G は再び(Q 上の)有理関数体となるか? という問題を「ネーターの問題」という. 古典的であるが G=S_n の自明な場合を除き, 一般には未解決の難問である. 例えば G=A_5 (5 次 交代群) についての前田高士氏(1987 年)による肯定的解決は画期的な成果であったが, その後の進展は聞かない. 今回, S_5 の全ての可移部分群に対し「ネーターの問題」を一斉に, かつ高級な道具を用いないで証明する, という試みに成功したので報告します.
証明の手法は, 昨年 10/18(金)の早稲田数論セミナーおよび 12/6(金)の数理研研究集会で角皆 宏氏(上智大理工)が講演した, P^1 上の 5 点配置空間への G の作用に基づく生成的多項式族の構成, の延長線上にあります. という訳で, この仕事は 角皆氏との joint work です.
講演では, 8 次巡回群 C_8 の場合 \underline{Q 上の}「ネーターの問題」は否定的な解をもつこと, などにも触れる予定. なお, C_5 については同問題は「シュヴァレーの問題」と題して K.Masuda (1955 年)により解かれているが, 昨年, 早稲田大学の星 明考 氏により, 全く異なる直接証明が与えられたことを付記しておきます.