1994年度
◎4月8日(金)山形 周二(東京電機大学)
「局所体の拡大に付随する整数表現」(S.Sen, F.Destrempresの結果)
代数閉体を剰余体にもつ混標数局所体$K$のガロア表現に関する
Shakar Senの結果およびそれを精密にしたFrancois Destrempes
の結果を報告した。$K$の$Z_p$拡大の$p^m$次中間体を$K_m$と
する。Senは$p$べき次ガロア拡大$E/K$は十分大きなnに対して
$E \otimes_K K_n$ の極大整環で一意的に定まることを証明して
いる。

◎4月15日(金)角皆 宏(早稲田大学)
「Galois表現に関連するfree Lie calculus」
代数体の1点抜き楕円曲線 C に付随する外Galois表現は
l 進表現の核へ制限しても非自明であることが判っている。
この知られた非自明な元から出発して次々と交換子括弧を
施すことにより新たな非自明元が得られること、従って
外Galois表現の像が充分大きいことを示した。又そのために、
次数付き自由Lie環のderivation環の次数付けについて論じた。

◎4月22日(金)長谷川 雄之(早稲田大学)
「超楕円曲線X_0^{*}の分類(N:任意)」
Kluitによって、X_0(N)をAtkin-Lehner involutionの作用で割って得られる
X_0^{*}(N)で超楕円曲線であるものは有限個であることが示されている。
特にNが平方因子を持たない場合には、種数が3以上の超楕円曲線X_0^{*}(N)は
存在しないことを予想した(Kluit予想)。今回の話しでは、この予想が正しい
ことを示し、更に、平方因子を持つ場合は種数3以上の超楕円曲線X_0^{*}(N)は
高々33個であることが話された。また、特に、N=315は種数3の超楕円曲線で
あることも注意された。

◎5月6日(金)尾崎 学(早稲田大学)
「実abel体のideal類群と単数群/円単数群の間の関係とGreenberg予想について」
奇素数pとある実アーベル体kに対して、そのZ_p拡大体をK、その第n段目のば、
部分体をk_nで表す。以前のセミナーで、K/kの岩澤\lamnda-不変量が0ならば、
k_nのイデアル類群のp-part A_nとk_nの単数群E_nの円単数群C_nによる商群B_n
(=E_n/C_n)がGalois加群として同型になることを紹介したが、今回は、この同型が
成り立つためのもっとゆるい十分条件について話した。それを用いると、
p=3が惰性する実二次体\Q(\sqrt{m})で12k-1,l>2)の
解のupper boundsに関する話をした。解の有限性はTijdemanに
より示されてるが、今回の話しでは、最近のBaker理論の結果を
用いて、その解のupper boundsをexplicitに与えた。

◎7月1日(金)相羽 明(茨城大学)
「局所体の整数環の相対Galois加群構造について」
形式群によって定まる局所体上の有限次拡大体の整数環の
相対ガロア加群としての構造について、Hopf orderを用い
てなされたM.J.Taylor(Crelle 1987)の仕事の紹介と今後
の展望について話した。

◎7月8日(金)橋本 喜一朗(早稲田大学)
「有理点の評価によるGalois群の特徴付け」
有限次ガロア拡大L/Kのガロア群は、LからLへのK-線形写像fで
det(f)=non-zero、f(1)=1を満足するが、この条件にある乗法的
条件を付加してガロア群を特徴付けよという問題がある。これ
について、(L;K)=2の時に、l>2に対してLのl乗元はLのl乗元に
移る(Kが有限の時にはl|(#L-1)とする)という条件を付けると、
Kが代数体、及び、有限体の時には、問題を射影空間内の曲線の
話しに帰着することで、基本的には解決するという話しをした。
また、Kが有限体の時には、Carlits、MacConnel、Lenstraに
よって、これとは別の方法により解決されていることも述べた。

●9月9日(金)【談話会】
講演者:藤原 一宏 (東京大学数理科学)
題名:「On Geometric Langlands Conjecture」
Langlands ConjectureとGeometric Langlands Conjecture
について解説し、Drinfeldの論文「elliptic module I,II」
を通して、その解決の一つの方針について述べた。また、
一般には、これらの問題解決にはcongruence relationだけ
では不十分であることも注意された。


◎9月16日(金)中里 肇(東京工業高等専門学校)
「Modular楕円曲線のHeegener点について II」
EをQ上のCMを持つ楕円曲線、KをEに対するある条件を満たす
虚二次体(無数にとれる)、Hをその絶対類体とする。この時、
Modular曲線上のHeegener点(H-有理点)から得られるEのH-有
理点は位数無限であること、さらに、この有理点のトレイス
をとることによって得られるK-有理点は、Q-有理点にならな
ければ位数無限であることを話した。最後に、前回の講演で
は、CMを持たないModular楕円曲線について同様な結果が成立
する話したことを注意しておく。

◎10月7日(金)福田 隆(日本大学)
「円単数とGreenberg予想について」
p=3が分解する実二次体k=Q(sqrt{m})について、新たにGreenberg予
想が確かめられるものがあったことが報告された。方法は、円分的
Zp拡大の第2部分体のHasse円単数を計算し、講演者と田谷との共同
研究において定義された定数を求めることによって成された。これ
によって、p=3が分解していてGreenberg予想が確かめられていない
実二次体は、m<10,000の範囲で19個となった。

◎10月14日(金)小松 啓一(東京農工大)
「Greenberg予想、Vandiver予想とNormal p-basis」
前半は、円分体におけるGreenberg予想、Vandiver予想とNormal p-basis
の関係について述べ、これに関する一般的な問題を提起した。後半は、
このことを踏まえて、p=3の場合に虚二次体のanti円分的Zp拡大がNormal
p-basisを持たないための十分条件(実は必要十分)を与えた。これは、
p=3が不分解な実二次体についてのGreenberg予想の十分条件にもなってい
ることも話した。


◎10月28日(金)百瀬 文之(中央大学)
「Rational points on the modular curve X_split(37)」
Eをmodular楕円曲線、pを素数とする時、Q上の絶対ガロア群からEのp-torsion
の自己準同型群AutE[p](〜GL2(F_p))への像によって、Borel型、split Cartan
型、non-split Cartan型、special caseに分類できる。多くの場合、一般論に
よりこれらに対応するmodular curveの有理点の情報は得られるが、split
Cartan型でp=13,37の場合にはこれらの理論が適用できない。この講演では、
特にsplit Cartan型のp=37の場合について、具体的な考察をすることによって、
このcurveの有理点はすべてCM点であることが話された。

◎11月11日(金)小屋 良祐(横浜市立大)
「Class Field Theory of higher semi-global fields」
F=k_0を体とし、k_iをk_{i-1}を剰余体に持つ完備離散付値体とする。この時、
与えられた自然数に対して、K=k_Nの類対論つまりHom_cont(Gal(K^ab/K),Q/Z)
とそのBrauer群Br(K)を調べよという問題がある。これについて、Fが代数体の
時に、MilnorK-群K_Nに対して第一種混合イデール類群C_N、及び、第二種混合
イデール類群C'_N(共にネイミングは講演者による、イデール類群の類似物)
を用いることにより、問題の対象となっている類体論とBrauer群が奇麗に表現
されることが話された。これによって、Br(K)がKのlocalizationのBrauer群の
直積に埋め込まれることも注意した。

●11月18日(金)【談話会】
講師:栗原 将人 (東京都立大学)
題目:「Ideal類群、Selmer群、zeta関数」
有理整数環のQuillen K-群の構造に関する予想を紹介し、そのp-partとp円分体
のイデアル類群のp-partとの関係、これらのK-群と関係を持つSelmer群とRiemann
zeta関数及びその微分の負整数値での値の関係について話した。また、最後に、
p円分体のイデアル類群のp-partに関する岩澤加群の各プラス部分のtorsion-part
のPontryagin dualが岩澤加群として単生であることも報告された。更に、おまけ
として、Wilesの仕事のoutlineについても説明がなされた。

●11月25日(金)【談話会】
講師:木田 雅成 (山形大学)
題目:「Mordell-Weil群の体拡大における変動について」
Aを代数体F上定義されたアーベル多様体、K/Fをn次ガロア拡大とする。この時、
F-有理点のなす群がAのK-有理点のなす群A(K)と同型になるF上(n*dim(A))次の
アーベル多様体R{K/F}(A)が存在する。これについて、ガロア群Gがアーベル群
の時には、ある条件の下で、xをGの指標とする時、Aのx-twist A_x達の直積が
R{K/F}(A)とF上isogenyとなり、更にこのisogenyの次元がnの約数であること
が報告された。これは、佐藤篤氏の結果(A(K)はA_x(F)達の直積に同型で、A/K
のL-関数L(A,K;s)はA_x/FのL-関数L(A_x,k;s)達の積に、有限個のEuler因子の
違いを除いて一致する)の別証であり、Faltingsの結果よりそれらと同値である
ことが注意された。

◎12月2日(金)八木 彰子(山形大学)
「HeckeのL-関数のmean valueについて」
まず初めに、1990年にActa Arith.に発表されたBalesubramaianとRamahcandra
のQ上の Hecke L-関数の2乗平均の評価についての仕事の紹介をし、この結果
の拡張として、代数体の Hecke L-関数の2乗平均の評価を与える話しをした。
基本的な証明方法は、BalesubramaianとRamahcandraの方法に従う。ここで与え
られた結果をQに適用すると、元の結果より良い評価式が導かれるので、まだ
若干の計算ミスがあるかも知れないということも注意された。

◎1月13日(金)山形 周二(東京電機大学)
「局所体のガロア群のp進整数表現」
SenはInv.Math.(1980)において得られた局所体上のGalois表現についての結果を、
Inv.Math.(1993)においてその整数環上の表現に対して試み、部分的な類似結果を
得た。この講演では、このSenの仕事(問題)を紹介し、いくつかの例を実際に
あげ、これらを通して更にSenの問題を考察する話しがされた。また、一つの応用
として、2つの拡大体が一致する為の必要条件も与えられた。

◎1月27日(金)尾崎 学(早稲田大学)
「実abel体の円単数群とideal類群について II(pが分解する場合)」
拡大次数が奇素数pと素な実アーベル体の円分的Zp拡大の円単数群とイデアル
類群の関係について話した。前回の話しでは、奇素数pが不分解の時に、
Greenberg予想成立の下で、イデアル類群のp-part A_n と全単数群の円単数群
による商群のp-part B_n が(十分高い部分体ではGalois moduleとして)同型で
あることが話されたが、今回の話しでは、分解の条件を外しても、Greenberg予
想成立の下では、p-イデアル類群のp-part A'_n が B_n に(十分高い部分体で
はGalois moduleとして)埋め込まれていることが話された。ここで、p上の素
イデアルが一つの時には、A_n=A'_nとなるので、A_nとB_nの位数の一致より同型
が出てくることになる。

◎2月3日(金)相羽 明(茨城大学)
「Carlitz加群とGalois加群構造」
整数環のGalois加群としての構造に関する仕事としては、ch=0の場合として、
円分体の整数環についてのHilbert-Speiser(tamely ram)やLeopoldt(wildly
ramも含む)の仕事、及び、ch=p>0の場合のHilbert-Speiserの類似として、
有限体上の代数関数体の整数環についてのChapman(tamely ram)の仕事がある。
この講演では、このChapmanの仕事の拡張となるLeopoldtの仕事のch=p>0
versionの試みについて話した。特に一次の多項式の冪からCarlitz加群に
より作られる有限次拡大について、Galois加群としての生成元(当然下の体
の整数環上でないよ)の候補を与えた。しかしながら、具体的な生成元はま
だ見つかっていない。また、2次以上の既約多項式の冪で生成される拡大に
ついても一次の結果を下に候補を与えられることも注意された。

◎2月10日(金)田谷 久雄(早稲田大学)
「実二次体のGreenberg予想についての注意とpが分岐する時の計算例」
尾崎氏(早稲田大学)との共同研究である実アーベル体のGreenberg予想の話し
を、特に実二次体に限定して紹介した。方法は、隅田氏(東大数理)のアイデア
に従って、岩澤主予想を用い、岩澤多項式が既約になる場合を扱った。これによ
りGreenberg予想があるGalois群の位数の評価に書き換えられ、更に、Coatesの
補題を使うことによって、これをp進単数基準のp進付値の評価に置き換えた。
ここで、分解している場合には、福田氏と小松氏の定めた定数n_2が、実二次体
のp進単数基準のp進付値になっていることを注意しておく。更に、これを用い
て、p=3が惰性する場合と分岐する場合にGreenberg予想が成立する実例を紹介し
た。また、p=3が惰性する場合については、ここで与えた実例よりはるかに多く
の実例が、福田ー小松両氏、市村ー隅田両氏によって与えられていることも注意
された。