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大学院生の募集


 学部・大学院で文化人類学を学んだ学生はもちろん、医学系・看護学系・心理学系・福祉系の学生で、これまでに医療人類学を学んだことのない方も大歓迎です。
 下記のような研究テーマに取り組みたい方を広く募集しています。

★東日本大震災および原発事故による被災者・被害者の心理的・社会的・文化的な苦悩、そして回復・復興に向けた医療・福祉的支援について関心をもつ大学院生を募集しています。関心のある方はメールにてお問い合わせください。

⇒リンク先■早稲田大学大学院・人間科学研究科(修士課程・博士課程)


<大学院生の研究テーマ>
◆東日本大震災・原発事故被災者の苦悩と支援のあり方
◆がんの終末期医療における鍼灸の意味
◆在宅医療に関わる薬局薬剤師の苦悩とその対処を探る
◆ナラティヴ・ベイスト・メディスン(物語りに基づく医療)
◆生活習慣病のジオポリティクス―医療社会学・人類学の観点から
◆電磁波過敏症に対する医療人類学的研究
◆電磁波の生体影響に関する医療人類学的研究
◆補完代替医療を実践する医師の世界観
◆健康至上主義社会への批判的考察
   〜看護師・保健師の抱えるジレンマから〜
◆がんセルフヘルプ・グループのつながりと場に関する質的研究
◆線維筋痛症の病いの語り
◆中高年配偶者死別体験者の語りから見る現代の死をめぐる経験
◆沖縄ユタの民族医療に見られるコミュニケーション
◆健康をめぐる語りを聴くこと ―健康観の再考―
◆うつによる休職者の職場復帰を促進する心理社会的要因に関する質的研究

<研究のキーワード>
災害支援、社会的苦悩(Social Suffering)、NBM(Narrative Based Medicine)、病いの語り、病いの意味論、健康観、身体観、多元的ヘルスケアシステム、民俗セクター医療、民間セクター医療、宗教的医療、シャーマニズム、補完代替医療、チベット医学、スピリチュアリティ、 医療化、スティグマ、近代医学の問題点、生活習慣病、在宅ケア、認知症、介護


Darjeeking INDIA
Photo by Takuya Tsujiuchi 2007

【修士論文研究】 [朱色の論文に要旨pdfファイルあり]

12)酒井雅史(2014):東洋医学の世界観を実践する病者と治療者を探る(Research of Patinets and Healers Using East Asian Medicine)

11)粟野早貴(2013):福島第一原子力発電所事故をめぐる実態と支援(Adequate Support after Fukushima Daiichi Nuclear Acxcident)

10)南雲四季子(2013):救済が生み出す苦悩―日本におけるケガレ観念の変遷から紐解くハンセン病者(Leprosy: The Paradox of Suffering after Salvation - From the View Point of Historical Change of Anthropological Dirt in Japan)

9)伊藤康文(2013):現代日本社会における発達障害をめぐる言説(Discourse of Developmental Disorder in Contemporary Japanese Society)

8)永友春華(2012):原発避難者の抱える苦悩(Suffering of Nuclear Accidend Evacuee)

7)伊藤由里(2011):中高年配偶者死別体験者の語りから見る現代の死をめぐる経験(The Experience of Death in our Time through the Narratives by the Middle-aged People whose Spouse Died)

6)中上綾子(2009): 慢性疼痛をめぐるナラティブ;線維筋痛症の事例を通して(The Narratives within Chronic Pain; In the Case of Fibromyalgia)

5)古関光浩(2009): がんセルフヘルプ・グループのつながりと場;物語と対話に基づく支え合いの文化(The Interface between A Cancer Self-Help Group and Space; A Culture of Narrative Community)

4)前田未加子(2009): 電磁場の生体影響;医療人類学的研究の試み(The Influence of the Electromagnetic Fields on Human Body; The Trial of Medical Anthropological Study)

3)石川舞(2009): PTSDをめぐる言説と、その苦しみと共に生きる人々;インターネット上に綴られる苦悩の物語(Discourse Analysis of People Living with PTSD; Narratives of Suffering Expressed on Internet)

2)谷口礼(2009): 補完代替医療を実践する医師の世界観に関する質的研究(Qualitative Research in View of Medical Doctors using Complementary and Alternative Medicine)

1)島田亜季(2008): 健康至上主義社会への批判的考察;看護師・保健師の抱えるジレンマから(Critical View on Healthizm Society)

0) Yuko EMA(菊池靖研究室): Psychosocial Rehabilitation in Ayacucho, Peru - Recommendation from Cultural-Anthropological Aspects -

0)小川嘉恵(野村忍研究室): 健康をめぐる語りを聴くこと;健康観の再考(Narratives of People's Health-Reconsideration of a View on Health)

0)石澤桂子(野村忍研究室): うつによる休職者の職場復帰を促進する心理社会的要因に関する質的研究(Qualitative Research on the Psychosocial Factors Promoting Return to Work of Depressive Employees)


【研究室メンバーによる学会発表】[朱色の発表をクリックするとポスターpdfが見れます]

●中上綾子,辻内琢也,鈴木勝己,伊藤康文,村上正人:
「つながり」というケア―線維筋痛症をめぐる対話の分析から―
第16回日本心療内科学会総会・学術集会(東京):2011.11.26

【背景と目的】

線維筋痛症は従来の医学的介入だけでは治療効果が得にくい難治性疾患であり、治療効果という尺度だけでははかれないケアこそが重要となる。ケアは病いをめぐって構築される相互作用的な人間関係であり、日常の文脈における「つながり」の創出である。

線維筋痛症に内在する多様な意味づけを理解するためには、病者の痛みをめぐる個々の物語を読み解く必要がある。痛みは単なる症状ではなく、社会関係を調整するための訴えだからである。本研究では病者の痛みをめぐる物語から、彼らが実践するケアの様相を探求していく。

【対象と方法】

線維筋痛症治療中の30~6047名を対象に、半構造化面接による聞き取り調査を行った。面接時間は30~120分である。面接内容はメモをとり、そのデータに基づいて分析を行った。

【結果】

<事例>40代・女性

幼いころから度々、身体の痛みを訴えていた。学生時代を経て19歳の時に家族が経営する食品関連会社・A社に就職した。その頃、外出先で腰を痛めて近くの病院にかかる。医師の診断の結果、特に疼痛の原因となる異常は発見されなかったが、その後も数日間は激しい痛みが続いた。

42歳の時、踵と足首の痛みのため、地元の大学病院で精密検査を受けた。医師らに線維筋痛症であることが知れると、敬遠されたり心ない言葉をかけられた。その時に受けた屈辱は、病気そのものの痛みに加え、とても苦痛であったと振り返る。

【結論】

病者の「痛みの語り」は、学校・職場、家庭内や病院など、あらゆる生活場面とともに語られていることが明らかになった。これは、痛みが家族や社会との複雑な関係性を導く物語の主題となっていることを示す。病者の日常生活や社会関係にかかわるケアは、「痛み」というメッセージの発信と、それに対する「応答」をめぐって構築される人間関係に立ち現れることが示唆された。


●伊藤康文,中上綾子,鈴木勝己,辻内琢也:
電磁波過敏症からの「回復」の語り.
第16回日本心療内科学会総会・学術集会(東京):2011.11.26

【目的】

電磁波過敏症は、1980年代にWilliam J ReaによってElectrical Hypersensitivityと命名された疾病がもとになり、電磁波に対して異常に強い反応を起こす状態だとされている。頭痛・疲労・睡眠障害・皮膚の異常感など症状は様々で、化学物質過敏症と併発するケースも多いが、現在においても明確な診断基準はない。本研究では、電磁波過敏症の病者の語りから、彼らの病苦を明らかにし回復過程を記述することを目的とする。

【対象と方法】

電磁波過敏症と診断された病者を対象に、非構造化面接によるインタビュー調査を行った。面接時間は160分であった。

【結果】

<事例>30代・男性・イラストレーター

2005年に化学物質過敏症、2006年には電磁波過敏症と診断され、自宅のブレーカーを切る、テレビ・パソコンなどの電化製品を全て使わない生活を強いられていた。その後診断医師に紹介され、寝室の床をアースしたことをきっかけに、回復に向けた自己治療が開始された。自分の中で治療指針を持ちながら1年間の闘病生活を続ける中で、症状の緩和が感じられた。「ひょっとすると敏感さはだいぶ治まっているから、慣れさせれば恐怖感に打ち勝てるのでは」と生活の制限を解いていった。

【考察】

病いを人生の流れの中の一つの壁と捉え、闘病生活の中での自分を支えてくれた人々との出会いによって、絶望を希望に変えていき回復に至れた、と病者自身は考察している。ここに自らの力によって健康を生成してゆくsalutogenesisのプロセスが確認された。



●前田未加子,辻内琢也,伊藤康文,石川舞,谷口礼,中上綾子,鈴木勝己:
電磁場ストレスの心身への影響.
第117回日本心身医学会関東地方会(埼玉):2010.10.23

【目的】

 化学物質過敏症に比し、その類縁疾患とされる電磁波過敏症の病態解明は未だに進んでいない。本研究では、電磁波の中でも家庭用交流電流から発生する極低周波電磁波、すなわち電場が生体に与える影響を心拍変動の変化を元に探る。

 

【対象と方法】

20代の健常男性4人・女性3人の被験者に、電気毛布を用いて睡眠中に持続的に高電場に曝される状況を作り出し、睡眠中高電場に曝露した24時間と、曝露していない24時間の心拍変動を測定し比較した。(1)電場曝露による自律神経機能への影響は、自覚はないが誰に対してもあるのではないか、(2)電場曝露による自律神経機能への影響を受けやすい人がいるのではないか、という2つの仮説を設定し検討した。

 

【結果】

被験者7名の24時間の心拍変動の平均と、睡眠中の心拍変動の平均を比較した結果、電場の影響を受けている睡眠中のLF/HFが高い傾向(p<0.1)が示された。このうち2人の被験者では、高電場曝露により睡眠中の交感神経活動は顕著に亢進(p<0.005)している可能性が示され、一方別の2人の結果からは睡眠中の交感神経機能が軽度低下(p<0.01)している可能性が示された。

 

【考察】

本研究から、高電場曝露が自律神経機能に何らかの影響を与えている可能性が示唆されたと考えられ、仮説(2)の可能性が示されたとも考えられる。しかし、この結果が電場曝露のみによる影響であるか明確ではなく、今後被験者を増やして追実験していく必要がある。



●伊藤康文,前田未加子,中上綾子,石川舞,伊藤由里,鈴木勝己,辻内優子,辻内琢也:
電磁波過敏症からの回復の語り.
第117回日本心身医学会関東地方会(埼玉):2010.10.23

【目的】

電磁波過敏症は、1980年代にWilliam J ReaによってElectrical Hypersensitivityと命名された疾病がもとになり、電磁波に対して異常に強い反応を起こす状態だとされている。頭痛・疲労・睡眠障害・皮膚の異常感など症状は様々で、化学物質過敏症と併発するケースも多いが、現在においても明確な診断基準はない。本研究では、電磁波過敏症の病者の語りから、彼らの病苦を明らかにし回復過程を記述することを目的とする。

【対象と方法】

電磁波過敏症と診断された病者を対象に、非構造化面接によるインタビュー調査を行った。面接時間は160分であった。

【結果】

 <事例>30代・男性・イラストレーター

2005年に化学物質過敏症、2006年には電磁波過敏症と診断され、自宅のブレーカーを切る、テレビ・パソコンなどの電化製品を全て使わない生活を強いられていた。その後診断医師に紹介され、寝室の床をアースしたことをきっかけに、回復に向けた自己治療が開始された。自分の中で治療指針を持ちながら1年間の闘病生活を続ける中で、症状の緩和が感じられた。「ひょっとすると敏感さはだいぶ治まっているから、慣れさせれば恐怖感に打ち勝てるのでは」と生活の制限を解いていった。

【考察】

病いを人生の流れの中の一つの壁と捉え、闘病生活の中での自分を支えてくれた人々との出会いによって、絶望を希望に変えていき回復に至れた、と病者自身は考察している。ここに自らの力によって健康を生成してゆくsalutogenesisのプロセスが確認された。



●伊藤由里,中上綾子,前田未加子,古関光浩,鈴木勝己,辻内琢也:
中高年配偶者死別体験者の語りから見る現代の死をめぐる経験.
第117回日本心身医学会関東地方会(埼玉):2010.10.23

【はじめに】

死についての受け止め方は人により、時代により、文化により大きな違いが存在している。現代においては、非人間的な医療的言説への抵抗という意味も含め、個人的で特殊な病いの体験を重視しようという流れが徐々に現れ始めている。

本研究は告知の場面を通して、現代において人々が身近な人の死および自分の死の問題についてどのように関わっているのかを探る。

 

【対象と方法】

50代前後という比較的若い時期に配偶者と死別した3名を対象に、半構造化面接によるインタビューをおこなった。面接時間は60分〜90分であった。本発表は1例について報告する。

 

【結果】

<事例>60代・女性

Fさんは現在60歳の女性、13年前、夫を肝臓がんで亡くした。Fさんは、医師からの検査の結果を本人には伏せ、自分一人で告知を受け止めた。手術後もがんであることを1年あまり本人には伏せたままで過ごすが、死の数ヶ月前に、最初の検査で余命1年と告げられていたこと、そしてその時期がせまっていることを自ら夫に告げた。告知をせず過ごした1年の心の動きの変化を語った。 

【考察】

死に行く配偶者とのそれまでの関係の在り方は告知をする・しないという選択に大きく関わってくる。隠し通して過ごした約一年間の心の葛藤、そして自分自身で告知した後の二人の関係性の変化など、死に直面した時、過去の価値観を打ち破り、大幅な修正が行われていく姿が確認できた。

 



●石川舞,前田未加子,谷口礼,中上綾子,古関光浩,伊藤由里,鈴木勝己,辻内琢也:
PTSDをめぐる言説と、その苦しみと共に生きる人々―インターネット上に綴られる苦悩の物語―
第117回日本心身医学会関東地方会(埼玉):2010.10.23

【目的】

本研究は、文献研究により学問的立場からPTSDを概観した。その上で、実際にPTSDで苦しむ人々のインターネット上の語りに注目し、PTSDを病者自身の視点から捉えるとともに、PTSD病者がネット上で苦悩を語る意義を探ることを試みた。

【対象と方法】

PTSD病者2名によるネット上の病いの語りを、フランク(A,Frank1995)が提示する「病いの類型」を枠組みとして分析、解釈を行った。

【結果】

混沌の語りは、物語としての一貫性や統一性を欠くため、対人場面では語られにくいことが予想される一方で、ネット上の語りでは以下の点が顕著に表れた。つまり、混沌の語りや、医療者に対する率直な思いが堂々と語られる。言葉の概念を超えて存在する混沌とした世界でも、抽象的、比喩的な表現により伝達可能な語りに構成され得る。どのような物語であっても、それを受容してくれる聴き手が常に想定され、混沌の語りでさえも自由に吐き出せる場が確保される。さらにPTSD病者は苦悩を語ると同時に、自らが自身の変化における証人となることが示された。

【考察】

PTSD病者は、苦悩をネット上で語りながら、その物語を自らの健康のための、ある種のヘルスリソースとしている可能性がある。またネット上では、脱臨床の語りとして非常に多くの語りが存在しており、病者自身の視点から発せられるこれらの語りを、読み解いていく意義が示唆された。



●古関光浩,中上綾子,前田未加子,鈴木勝己,辻内琢也:
がんセルフヘルプ・グループのつながりと場に関する質的研究―物語と対話に基づく支え合いの文化―.
第51回日本心身医学会総会(仙台):2010.06.27

【目的】

 がんは日本国民の死因の約3分の1を占め、現在も増加傾向にある。この社会背景に伴って、がん患者の心理社会的側面を扱った研究も増えているが、多くの先行研究は病院外における健康希求行動を理解する視点に欠く。これは治療に限定した機能を担う病院、そこからはみ出すものを扱うセルフヘルプ・グループという機能分担が想定されているためである。一方で、患者側の認識においては、セルフヘルプ・グループという場が、病院医療から切り離されたものではなく、連続したものであり、その連続性があるゆえ、つながりの相貌を見せている(浮ヶ谷,2007)。そこで本研究では、半年に一度、養生宿泊施設に集う、院外がんセルフヘルプ・グループに注目した。本グループメンバーは、全国各地より集まり、13年間活動してきた。この活動は各メンバーにどのような影響を与えているのか。本研究は、彼らの物語と対話に基づく支えあいの文化の厚い記述と解釈を目的とする。


【方法】

200811月から200911月の間、院外がんセルフヘルプ・グループ活動の参与観察と、メンバー11名に半構造化面接による個別インタビューを行った。参与観察で得られたデータと、インタビューを逐語録化し、個人のライフヒストリーを背景とした「物語narrative」を基に、質的分析を行った。

【結果と結論】

院外がんセルフヘルプ・グループにおけるつながりは、がんと共に生きる人だけでなく、再発の恐れがほとんど無い人、その家族、自然(山、河、太陽)や超越者(亡くなった人、神仏)を含む。本活動では、がんと共に生きる人各々を“病いの専門家”とみなし、個人が経験している「病いの物語」に傾聴し、尊重する。このプロセスは、誰も理解してくれない痛みや、医療専門家に言えない不安など、自己を支配する「ドミナント・ストーリー」を「オルタナティブ・ストーリー」として新たに意味づける可能性がある。



●佐野文哉,石橋恵美,中上綾子,古関光浩,前田未加子,鈴木勝己,辻内琢也:
※三育学院大学看護学部看護学科
「アダルト・チルドレン」からの回復の語り.
第51回日本心身医学会総会(仙台):2010.06.27

【目的】

現在、わが国では少子高齢化が進むとともに、メディアからは児童虐待という言葉を頻繁に耳にするようになった。児童虐待の背景に存在するとされる「アダルト・チルドレン」は、正式には「アダルト・チルドレン・オブ・アルコホリック(Adult children of Alcoholics)」と呼び、「アルコール依存症の親の下で子供時代を送った大人」を意味する。同時に、薬物依存やギャンブル依存など、その他の嗜癖の中でも機能不全な家庭環境が見られることが明確になり、この各種機能不全な家族に育てられた大人たちを総称してこう呼ぶようになった。本研究では、「アダルト・チルドレン」と自覚を持った人物がブログにおいて語った体験談のナラティブ分析を通して、その回復のあり方についての一つの考えを提示することを目的とする。


【対象と方法】

「アダルト・チルドレン」と自覚するシルキーさん(仮名;30代女性)のブログをナラティブ理論に基づいて分析を行った。


【結果と結論】

シルキーさんの語りから、「アダルト・チルドレン」と自覚することは、「ドミナント・ストーリー(支配的な物語)」から「オルタナティブ・ストーリー(代替の物語)」に変化するきっかけにはなるものの、本当の回復とはいえず、それもまた世代連鎖や「親が悪い」という「問題の染み込んだストーリー」として「ドミナント・ストーリー」となる可能性があることが示唆された。しかし、シルキーさんは、ブログを書くことやカウンセリングを受けることを通して、改めて娘の存在の大切さに気付き、日常の人間関係においても自己主張することができるようになった。過去の出来事を新しく書き換えたことから、「父親のお陰」「母親に親孝行しよう」といった新たな物語に発展し、回復に向かったと読みとることができた。そこには、一般的な「アダルト・チルドレン」の心理臨床を超えた、ナラティブ理論の大きな可能性が示されている。



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●金智慧※,中上綾子,前田未加子,佐野文哉,古関光浩,鈴木勝己,辻内琢也:
※東京大学大学院総合教育学研究科
カウンセラーにとっての共感的理解の多義性―臨床心理士のナラティヴを読み解く.
第51回日本心身医学会総会(仙台):2010.06.27

【目的】

カウンセラーの基本的態度として共感的理解の概念が重視されている。共感的理解とは、クライアント中心療法を発展させたカール・ロジャーズ(Carl Logers)により初めて用いられた概念であり、その目的はクライアントの内的世界を理解することにある。一方、その過程は、ある特定のマニュアルに従うのではなく、カウンセラーがクライアントの内的世界を理解するために用いる、いかなる方法を含む広義の概念である。それゆえに、各々のカウンセラーにとっての共感的理解の概念は、実際の臨床現場における様々な共感体験によりそれぞれ異なる意味づけが成されているように考えられる。そこで本研究では、現役カウンセラーらの臨床現場における共感体験の語りやそれを促すための工夫についてのナラティヴを基に、共感的理解の多義性を明らかにすることを目的とする。


【方法】

20097月から200911月の間、複数の現役カウンセラーを対象に半構造化面接によるインタビューを行った。インタビューは、対象者の承諾のもと逐語録化され、そこから得られた語りを基に、質的分析を行った。

【結果】

実際の臨床現場における共感的理解の概念は、カウンセラーのパーソナリティや臨床職の特徴、援助者側の要因とカウンセラーが今まで経験してきたクライアントとの共感体験によって様々であった。共感的理解に対するカウンセラー達の多様な意味づけは、カウンセリングの意義についての考えや、援助者としてのあり方に対する、各々のカウンセラーの価値観・人生観と深く影響し合っていた。


【結論】

本研究より、理論上では得られない共感的理解の様々な意義を、実体験という視点に照らして検討することによってより深い理解を導く可能性が認められた。

 



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●谷口礼,◎中上綾子,前田未加子,古関光浩,鈴木勝己,辻内琢也:
補完代替医療を実践する医師の世界観に関する質的研究.
第51回日本心身医学会総会(仙台):2010.06.27

【目的】

医療が多元的に存在する社会において、それぞれの医療は独自の世界観を有しており、医学教育を受けることによって医療者自身の世界観を強固なものにしていくと考えられている。本研究では、相補・代替医療(以下CAM)を実践する医師が、どのようにCAMを捉えているかを考察し、医師の医療における世界観を明らかにする。


【方法】

CAMを実践する6名の医師に自由会話方式の直接インタビューを行った。調査内容は対象者の許可を取って録音し、調査ノートを作成した。調査時間は平均1時間半で、調査内容は逐語文字化し、後にシークエンス分析を行った。


【結果】

医師自身が感じた近代西洋医学の理論・治療法の限界、医師自身の内的疑問を解消するためにCAMを実践するようになったことが明らかになった。多くの説明モデルを持つことで、患者の持つ病気に対する信念や意識を理解し、患者の信念に適した治療法を社会的制約の範囲内で選出していることが明らかになった。複数の医療を同時に行う調査対象者全員の傾向として、いかなる治療法も患者の病いの現実に対応する「ツール」であり、患者を知る「方法論」であるという価値観があることが注目された。


【考察】

これらの医師は、文化、社会、自然環境をも含んだ医療の世界観を有している。また、「人と人の関係性」、「自然と人の関係性」、「生活と人の関係性」の回復を行う役割を担っており、臨床の中で葛藤や限界を覚えながらCAMを実践していく過程で現れたものであると考えられた。この世界観が医師と患者の関係性を変化させ、医師を医療の施し手から病気や患者自身への気づき、自然への感謝の念、宇宙的な価値観を伝える伝導者へと変化させた。そのような医師の姿勢は「いのち」の本質への追及であると考えられた。「いのち」とは何か、人間とは何かを追求する姿勢とその答えを求めるために、複数の医療を実践してきたのではないかと考察できる。

 



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鈴木勝己,辻内琢也,中上綾子:
タイ・エイズホスピス寺院にける多文化包括的な終末期ケアモデルに関する医療人類学的考察,第15回日本臨床死生学会(東京):2009.12.05


●中上綾子,辻内琢也,佐藤壮広,谷口礼,島田亜季,前田未加子,鈴木勝己:
事例研究―アルコール依存を抱える家族との対話―沖縄ユタによる治療場面の検討,第1回日本心身医学会5学会合同集会(東京):2008.06.06

●谷口礼,辻内琢也,中上綾子,島田亜季,前田未加子,鈴木勝己:
相補・代替医療の世界観とその近代化に関する質的研究,第1回日本心身医学会5学会合同集会(東京):2008.06.06

●島田亜季,辻内琢也,中上綾子,谷口礼,前田未加子,鈴木勝己:
ヘルスプロモーション活動における看護師・保健師の葛藤〜健康至上主義への批判的考察,第1回日本心身医学会5学会合同集会(東京)2008.06.06

小川貴司,鈴木勝己,辻内琢也:
NMBの視点から考える急性腰痛の症例柔整領域にけるNBMNarrative Based Medicine)・医療人類学的視点30回明柔会学術記念大会:2007.08.26

小川貴司,鈴木勝己,辻内琢也:
胸腰部脊柱管狭窄症術後患者へのナラティブアプローチ:その医療人類学的考察,
47回日本心身医学会総会(東京):2006.05.30


小川嘉恵,辻内琢也,石澤桂子,野村忍:

人々の健康をめぐる語りを聴くこと
健康観の再考47回日本心身医学会総会(東京):2006.05.30

石澤桂子,辻内琢也,加藤陽子,小川嘉恵,野村忍:
うつによる休職者の職場復帰を促進する心理社会的要因に関する質的研究,47回日本心身医学会総会(東京):2006.05.31